第八話 今度こそ騎士団へ
王城での日々は、あっという間だった。
マルクが検査を受けている間、コリンはエリーナから質問を受け、国王と話をし、国の重鎮が集まった会議にも出席したり。
思い返せば、色々なことがあった。
マルクの検査結果は、予想通りだった。
マルクは火の大精霊カルディアの器である。
幸い、大精霊の器に現れやすい代償はなく、マルクは心身ともに健康体だ。
マルクが大精霊の器だなどとは考えたこともなかったコリンだが、その話を聞いた時、冷静に話を受け入れていた。
さすが、コリンだ。
今、マルクとコリンは王城の応接室に、来ている。
そこには、エリーナもガストンも国王もいる。
エリーナにビクビクしていた、マルクも最近は慣れてきたようで、冷静に話を聞くことができている。
国王がマルクを見つめながら、静かに口を開く。
「マルク・フェルドを騎士団の第一部隊へ配属する」
「拝命しました!」
マルクがサッと立ち上がり、敬礼をした。
「うむ」
国王が頷いたあとに、マルクはサッと座る。
「だが、何か起こってはいけない。ガストン、よろしく頼むぞ」
「はい」
ガストンが丁寧に礼をする。
マルクは大精霊の器であるという事実を騎士団員全員に公表したうえで、無事に第一部隊に配属されることになった。
ただし、事故があってはいけないので、なるべくガストンとコリンをそばに付けることとなった。
国王が寂しげな顔で、深いため息をついた。
「大精霊の器はお前以外にも、三人いる。水の大精霊ネレイスの器はレヴェリア・エリア・エーヴェルヴァインという令嬢だった」
国王の口調が重々しいことに気がついて、全員が国王に真剣な眼差しを向けている。
「だが、レヴェリア嬢はとある組織に拉致され、実験体にされたあげく、悪魔に殺された。それによって水の大精霊ネレイスは消滅した。」
部屋の空気が、重く沈んだ。
「風の大精霊の器は、どこにいるのか、確認ができていない。土の大精霊の器は、どこにいるかは判明しているが、合わせてもらうことはできなかった」
「あの方の周りにいる人間は、刺激するべきではないでしょう」
エリーナが神妙な顔で、口を挟む。
「分かっておる。大精霊の器は良くも悪くも、非常に強力な力を持っている。故に、狙われることも多い。なので、大精霊の器は国が保護するつもりだったのだ。だが、レヴェリア嬢は間に合わなかった。お前も、悪魔や人間には気をつけろ」
「は、はい!」
返事はしたものの、マルクの声にはいつもの勢いがなかった。
マルクが珍しく意気消沈している。
そのことに気づいたコリンが、マルクを不安げに見つめている。
翌日、ようやくマルクとコリンも訓練を開始することができた。
皆の反応は、様々だ。
特に気にしていない者もいるが、遠巻きに噂する者がほとんどだ。
大精霊の器というものが気になるという噂もあれば、マルクが贔屓されているなどマルクを蔑む噂もある。
そんな中、マルクは落ち込んでいるかと思いきや、コリンとアイラと共に元気に素振りをしていた。
「腹減ったー」
マルクが能天気に喋っている。
「訓練中に無駄口をたたくなよ。マルク」
コリンが真面目に言い返している。
「ていうか、マルクは魔法の方が向いてるんでしょ?素振りより魔法の訓練の方を多くしたほうが良いんじゃないの?」
アイラが当然な疑問を投げかける。
「そうだよね。うん」
マルクもコリンも同じことを思っていたらしい。
騎士団員として、訓練を怠っているわけでも、気が緩んでいるわけではない。
だが、どこか気が抜けているかもしれない。
そんな三人を、遠くから鋭い視線で睨んでいる者が一人いた。
マルクたちはそれに一切気がついていない。




