第六話 騎士として
入寮してから、三日ほど経った。
今日は待ちに待った、入団式の日だ。
そのために、コリンはいつもより早く起きて、身支度を整え、朝食を食べ、新品の制服に腕を通し、荷物を確認した。
(……これで大丈夫)
入団式まで時間はたっぷりあるので、コリンはコーヒーを淹れて一息つくことにした。
さらに、真面目なコリンはコーヒーを飲みながら、今日一日の予定をしっかり確認する。
そんな優雅なひとときを過ごしていたら、後ろでドスンという大きな音が聞こえた。
「ぎゃっっ!!」
しかも、悲鳴付きだ。
コリンは恐る恐る振り返り、悲鳴の持ち主を見る。
すると、マルクが床に突っ込んでいた。
寝相が悪すぎて、二段ベッドから落ちたのだろう。
コリンは床に傷がついていないかの心配が勝ってしまっているが、入団式のことを考えれば、起きるのには良い時間だ。コリンの、マルクを起こすという仕事がなくなった。
この騎士団では、ミスはチームで連帯責任となってしまうので、コリンは大変苦労するだろう。
「おはよう。マルク」
「おはようの前に大丈夫だろ」
マルクが拗ねながら起き上がる。
だが、コリンを見て、表情を明るくする。
「おお!制服かっこいいな!」
「そんなことより、はやく用意しな。入団式遅れるよ」
「褒めてやってるのに、そっけないな」
マルクは再び拗ねながら、身支度を始める。
コリンはそんなマルクを気にもかけず、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。
マルクとコリンは王城の広間にやって来た。
すでに、何人かは来ているようだ。
その中には、アイラもいた。
「あ!おはよう!」
アイラもこちらに気づき、小走りで駆け寄ってくる。
「おはよう。アイラさん」
「おお、おはよう!アイラ」
「入団式楽しみだね!どの部隊になるのかな」
「そうだね。僕は、はやく施設見てみたいかな」
「俺は食堂のメニューを見てみたいぜ!」
そんな他愛もない会話をしていたら、広間の前方に、少し豪華な制服を着た騎士が数名現れた。
それと同時に、広間に集まっていた騎士たちが静かになり、綺麗に並び始める。
マルクたちもそれに習って、居住まいを正す。
そして、司会担当の騎士が前に出てきて、点呼が行われた。
「ただいまより、入団式を行います。まずは、騎士団長からの挨拶です。」
特に豪華な制服を身にまとった女性騎士が前に出て、声を張り上げた。
「諸君、入団おめでとう。私が騎士団長のエレーナ・クリス・クロムウェルだ。剣を掲げよ。今日この時より、その剣は私欲のために振るわれるものではない。弱きを助け、正義を貫き、この国の未来を照らす光となれ!」
その言葉に、拍手喝采が巻き起こる。
司会の騎士が、拍手が鳴り止むのを待ち、静かに口を開いた。
「次に部隊分けを行います。一人ずつ、この水晶に触れていってください」
広間の前方に、きれいな水晶が用意された。
この騎士団には、四つの部隊がある。
まず第一部隊は、不動の盾として最前線で防衛や戦線維持を任されることが多く、純粋に戦闘力が高い者が多い。
第二部隊は、戦場の眼として情報収集や奇襲に特化していて、技術力は高いが捻くれ者が多い。
第三部隊は、殲滅の矛として広範囲の攻撃や味方の強化を得意としており、魔法を得意とする者が多い。
第四部隊は、慈悲の守護者として騎士や戦禍に巻き込まれた人々の回復を行なっており、知性的でプライドが高い者が多い。また第四部隊は、高度な防御術と格闘術を心得ており、回復部隊でありなが高い戦闘力を誇る。
「どの部隊になるんだろうね」
アイラが心底楽しそうにしている。
マルクたちの番が回ってきた。
マルク、コリン、アイラの順番で水晶に触れていく。
水晶には、ほとんど変化はない。
水晶に繋がった端末には、何らかの情報が映し出されているらしく、騎士が紙にメモを取っている。
部隊が発表されるのは、明日だ。
さっきからマルクはずっと、挙動不審だ。
今夜は、マルクは緊張して寝られない。
それによって、同室のコリンも寝ることができないかもしれない。




