最終話 ありがとうとさようならと
レオンの前には、つい先程まで仲間のはずだった、アウレリアンとサイラスとエレボスが立っている。
レオンは今から、この三人を殺さなければいけない。
まず、エレボスが真正面から向かってきた。
「逃げ切れると思うなよ」
エレボスが今までに、見たこともないほど冷たい顔をしながら、闇魔法でレオンの周りを覆う。
「逃げはしないさ。お前らを殺せば逃げる必要はないからな」
レオンは微笑み、挑発するように言いながら、風魔法でエレボスの魔法を薙ぎ払う。
「……なっ……!」
エレボスは驚愕に襲われている。
恐らく高度な魔法を放ったのに、一瞬で消された事に、驚きを隠しきれないのだろう。
エレボスの隙を補うように、剣を握ったサイラスが斬り掛かってきた。
レオンはサイラスの攻撃を避け、サイラスに向けて風を放った。だが、その風もサイラスの剣技に掻き消される。
その時、後ろからエレボスが攻撃を仕掛けてくる。
レオンはエレボスの手首を掴んで、エレボスの腹に蹴りを入れた。
「ぐへっ……!」
レオンはバランスを崩したエレボスに、風の刃を突き刺す。
風の刃が腹を貫いた瞬間、エレボスの目から光が消えた。
エレボスは倒れて、動かない。
残るは二人。
サイラスが再び、剣で斬り掛かってきた。
レオンはサイラスに教育された。
だからこそ、レオンはサイラスの戦いを分かっている。
レオンは風に乗り、脱兎の如き速さでサイラスの背後に回った。
「……しまっ……」
サイラスは速やかに、振り向いたが、遅かった。
レオンは無数の小さな風の刃を発生させ、サイラスの喉を掻き切った。
残るは一人。
レオンにとって、今殺した四人は大した脅威ではない。
残っているアウレリアンが、一番厄介だ。
レオンがどうやってアウレリアンを殺すかを考えていると、アウレリアンが少し悲しげに微笑んだ。
「最後までお前のことは分からなかったな」
レオンはアウレリアンが何を言っているかが、分からなかった。
それでも、レオンはこれだけは言いたかった。
レオンは真っ直ぐに、冷たくアウレリアンに向き合った。
「俺に道を与えてくれてありがとうございました。そして、さようなら。アウレリアン様」
穏やかな風が、血の匂いを運んでいる。
明けない夜が、明けた。
これから数日経った頃だろうか。
街には、アーノルド伯爵邸襲撃という見出しの新聞記事が出回っている。
アーノルド伯爵を含め、邸の人間が全員殺されたそうだ。
不思議なことに、邸の人間だけではなく、殺し屋の死体も上がったそうだ。
殺し屋が死んでいるため、アーノルド伯爵邸で何があったのか誰も知らない。
残っているのは、激しい戦闘の跡だけだそうだ。
そんな話をしている人間を横目に見ながら、路地裏に入っていく一人の男がいた。
その男は、今は何もない地面を見つめて、立ち尽くしていた。
気づけば、頬を温かいものが伝っていた。
すべて失ってしまった。
どうすれば良かったのだろうか。
そんな後悔と悲しみだけが、遅れてやってきた嵐のように、胸の奥で渦巻いている。
いつも大精霊の器が辿った道を読んでいただきありがとうございます!風の殺し屋編が本日で最終話となりました。サクサク進めてサッと終わらせようと思っていましたが、気づいたら十三話も書いてましたね。あらびっくり。次からは火の騎士編が始まります。設定確認やファイル整理等をするので火の騎士編は1月26日月曜日から始めます。これからもよろしくお願いします!




