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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
風の殺し屋編
23/26

第十二話 袂を分かちて

 アウレリアンがクロウに視線を向けた。

 クロウもアウレリアンを見つめながら、軽く頷いた瞬間、クロウは恐ろしい速さで動いた。クロウは瞬きのような速さで動いた。

 気づいた時には、レオンの背後に回り、アーノルド伯爵令息の首を斬り落としていた。

 そして何事もなかったかのように、アウレリアンの横へ戻る。

 レオンは自分が殺せなかった子供が殺されたことに対しては、何も思わなかった。

 だが、クロウに対しては、驚愕を覚えた。

 半年ほど前、共に仕事をした時よりも格段と動きが速くなっている。

 他のメンバーの技量も、上がっているかもしれない。

 これから、そいつらを全員殺さなければいけない。

 だが、恐怖は湧いてこない。

 ただ単に、計算をしている。

 どのように戦えば勝てるのかを。

 アウレリアンはいつも通り、低く重く、抑揚のない口調で、言い放った。

「お前の大精霊の魔力は便利だった。失望したぞ、レオン」

 その瞬間、全員が動いた。

 サイラスが腰から下げていた剣を引き抜き、剣身に魔力を帯びさせ、レオンに斬り掛かった。

 レオンはそれを回避し、風を発生させ、サイラスを下がらせる。

 だが、すぐさま再び斬り掛かってくる。

 やはり、さすがサイラスだ。

 レオンを教育したのは、サイラスだ。

 レオンがどう動くかを、理解している。

「残念ね、レオン。もっと仲良くなれると思っていたのだけど」

「そうですか」

 サイラスに反撃するのは、骨が折れるだろう。

 レオンはサイラスを風で遠ざけ、回避に専念する。

 その時、後ろからクロウが短剣で斬り掛かってきた。

「…………」

 クロウはやはり、動きが速い。

 だが、クロウが相手にしているのは風の大精霊ゼフィールの器だ。

 レオンの速さには、クロウでは勝てない。

 レオンはクロウの背後に周り、風を槍の形にして、クロウの背中に突き刺す。

 まずは、一人。

 クロウの背中から、血が噴き出す。

「クロウちゃん!!」

 サイラスが倒れるクロウを受け止めるように、動く。

 その隙を、レオンは見逃さない。

 レオンはサイラスの首を目掛けて、風の刃を放った。

 だが、その風がサイラスに届く前に、闇に掻き消される。

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ」

「忘れてない」

 レオンの風の刃と、エレボスの闇の刃が打ち合う。

 魔法同士では少し、戦いづらい。

 レオンはエレボスの始末を後回しにすることにした。

 レオンは一旦後ろに下がり、体勢を整えようとした。

 だが、そこに鋭い魔力の塊が飛んでくる。

「……殺す」

 ヌルが冷たく吐き捨てるように言う。

「おっかないな」

 そんなことを呟くように言っていたら、視界が揺れた。

「ねえ、辛い?」

 たしかに戦いづらくなったが、それだけだ。

 レオンは部屋中に、弱い風を発生させた。その風を読めば、誰がどこにいるか、簡単にわかる。

 レオンの右後ろの風が、微かに揺れた。

 そこに向かって、レオンは風の刃を放った。

 その瞬間、ヌルの肩に刃が食い込んで、ヌルは地に膝をついた。

 二人目。

 だが、クロウもヌルも本来は、戦闘が専門ではない。

 多少手強いが、勝てないわけではない。

 残っている三人の方が、ずっと手強い。

 レオンは身構えた。

 サイラスとエレボス、そしてアウレリアン。

 三人は、かつて居場所だった。

 三人は、今は敵だ。


 恐怖はない。

 怒りもない。

 レオンは理解していた。

 ここで勝たなければ、自分は終わる。

 

 だからーー勝つ。

 それが、夜から離れるための、唯一の方法だった。

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