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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
風の殺し屋編
19/22

第八話 路地裏の仲間と

 レオンはただ淡々と、部屋にいる使用人を殺していった。

 血の匂いも、悲鳴も、レオンにとってはただの背景だった。

 あっという間に部屋にいた使用人たちは、全員、息を失った。

 レオンはアーノルド伯爵夫人の首を飛ばした。

 すぐに、アーノルド伯爵の首も飛ばした。

 残すはアーノルド伯爵令息のみ。

 レオンは部屋の端で震えている子供に、目を向けた。

(……よし、これで終わりか)

 レオンは手を前に出して、さっきまでと同じように風を発生させようと、手に魔力を集中させた。

 だが、風は吹かない。

 手が震えているだけだ。

(……え?)

 急にレオンの脳裏にとある記憶がよぎった。

ーー似ているんだ。

◇◆◇

 レオンは気づいた時には、路地裏で暮らしていた。

 親も知らない。

 自分の年齢も知らない。

 なぜ自分がここにいるのかすら、あまり覚えていない。

 だから、レオンは自分は親に捨てられたと思っている。

 路地裏には仲間がいた。

 レオンよりは恐らく年上の優しいエリオットと、レオンよりは恐らく年下の気弱なカーラだ。

 レオンはエリオットを実の兄のように、慕っていた。

 名前も分からなかったレオンに名前をつけてくれたのも、露店の食べ物をこっそり盗む方法も教えてくれたのも、エリオットだ。

 レオンはカーラを実の妹のように可愛がっていた。

 レオンは、おしゃれをしたがっているカーラの髪を結ってあげたり、自分の分の食べ物を分けてあげたりした。

 三人は本当に兄弟みたいだった。

 三人とも、兄弟以外は必要なかった。

 温かいご飯も、雨風を凌げる家も、綺麗な服も、そんなものなくたって三人ならなんとかなっていた。

 エリオットはよく、笑顔で夢を語っていた。

「俺はいつか、たーっくさん仕事をして、たーっくさんお金をもらって、レオンとカーラが贅沢な生活をできるようにするんだ!」

 そんな話を聞いて、カーラは楽しそうに喜んだ。

「じゃあ何でもできるようになるの?」

「ああ!もちろんさ!」

 そんな二人を見て、レオンも嬉しくなった。

「エリオット、カーラ。いつまでも一緒に生きよう」

「「うん!!」」

 苦しいこともたくさんあったけれど、本当に楽しい日々だった。

 三人でいれば、なんだってできる。

 そう信じていた。


 今日は雨が降っていた。

 大降りの雨で、風も激しく吹き荒れていた。

 三人は体温が下がらないように、身を寄せ合って、黴の生えたパンを食べていた。

「寒いね。兄ちゃん」

「大丈夫だ。ほら、もっとくっついて。そうしたら寒くないだろ?レオンもそう思うだろ?」

「うん。寒くないよ」

「あったかくなってきた!」

「それは良かった」

 雨が止んだら、いつも通りの生活に戻れると思っていた。

 だが、それは叶わない。

 三人の目の前に、大柄な男が現れた。

 三人はその顔を知っている。

 近くの露店で、肉の串焼きを売っている人で、いつもそこで美味しい串焼きを盗っていた。

 エリオットとレオンは、怒られるかもと思って身構えた。

 だが、男は怒鳴り声はあげずに、三人を見ている。

 もしかしたら、助けてくれるのかもしれない、なんて一瞬夢を見た。

 男は背中に隠していたナイフを振り上げ、カーラを目掛けて振り下ろした。

 カーラは倒れ込んで、動かない。頭から大量の血が流れている。

 エリオットもレオンも、この状況を瞬時に理解できなかった。

 その間に、男はもう一度ナイフを振り上げ、今度はエリオットを目掛けて振り下ろした。

 エリオットもカーラと同じように、動かなくなった。

 血がどんどん広がっていく。

 その時、レオンは何も考えていなかった。

 怒りと一緒に、自分の周りに風が逆巻いて、その風が男をズタズタに切り裂いていた。

 レオンは魔法なんて使ったことがなかった。存在は知っているが、見たことなんてなかった。

 そんな子供が魔法なんて使えるはずがなかった。

 だが、レオンは違ったみたいだ。

 彼は、風の大精霊ゼフィールの器だ。

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