第五話 近づく足音
今日は全員が居間に集まっている。
「では、作戦会議を始める」
アウレリアンが重く低い声で話し始める。
「サイラス。まず偵察で手に入れた、アーノルド伯爵邸についての情報を話せ」
レオンは身構える。恐らく、情報量は多い。すべてを把握するのは骨が折れるだろう。
だが、情報漏れがあってはいけない。
サイラスが机の中央にアーノルド伯爵邸の図面を広げながら、滑らかに話し始める。
「はい。まずはアーノルド伯爵邸の使用人についてです。使用人の数は合計三〇人で、執事が一人、副執事が一人、料理人が三人、下働きが八人、庭師が四人、警備が八人、侍女が五人です」
「思ってたよりは少ねぇな」
エレボスが口を挟む。
話を遮るエレボスに苛ついたヌルが、エレボスの顔面を引っ叩く。ぱん、と乾いた音が部屋に響く。
「いちいちうるさいな」
「叩くはねぇだろ!」
「叩かなきゃ黙らんだろ」
見かねたサイラスが、二人をなだめるように説明を再開する。
「はいはい、続き言うよ。ほかにはアーノルド伯爵、夫人、令息の三人がいるわ。つまり屋敷にいるのは全員で三三人ね」
サイラスが図面に指をさす。
「建物は地上二階、地下一階建てよ。地下は主に使用人の部屋や物置があるわ。一階には厨房と食堂、サロン、大広間とか客人を迎え入れたりするための部屋が多いわね。二階は伯爵たちの寝室や書斎があるわ」
クロウがおどおどしながら、小さく手を挙げる。
「……一応、使われている様子はないけど、屋根裏部屋も、ある」
「ああ、そうだったわね」
サイラスは失念していたみたいだ。忘れていたことを誤魔化すように次の話を始める。
「次は警備配置ね。普段は正面玄関に二人、門のところに二人、裏の入り口に一人、巡回が三人って感じよ。実行日は招集のため、正面玄関に一人、門に一人のみになる。あとは全員、大広間に招集されるわ。他の使用人もね。ちなみにその招集は夜の六時よ。ここからはアウレリアンにバトンタッチね」
全員の視線がアウレリアンに集中する。
「作戦内容を発表する。簡単に言うと、屋敷を閉鎖して逃げられなくなったところを始末する。役割についてだが、俺が全体の判断など臨機応変に動く。サイラスが時間の管理と合図役、クロウは常に全体の様子を見て警備配置の変更などの想定外の事態があれば全員に知らせる。ヌルは死体処理や人身売買の証拠回収、エレボスは屋敷内の人間たちを撹乱させる。そして、レオンが実行役だ。逃走を試みた者の足止めと撹乱はエレボスが担当する。全員、それで良いな?」
全員が大きく頷く。
「ええ」
「了解っす!」
「ああ」
「……はい」
「承知した」
ノクターンはこの国でトップと言っても過言ではないほど、とても強力な殺し屋だ。
今回の大量の人間を掃討するような案件もたくさん請け負ってきた。今までで失敗したことなんて一度もない。
今回も失敗することはないだろう。
多少の緊張はあるが、全員が成功を確信していた。
それが今回の案件を左右したのかもしれない。
結末は全て、その日になればわかることだ。




