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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
風の殺し屋編
13/22

第二話 夜想曲

 今、レオンはとある森の奥深くにある、古びれた建物の地下にいた。

 その森は、狼が多く生息しており、人が近づくことはほとんどない。

「任務は完了したか?レオン」

 口を開いたのは、ソファにしっかりと構えている、アウレリアンだ。

「ちゃんとやりました」

 レオンが冷たく、吐き捨てるように言った。

 レオンは『ノクターン』という裏の組織に所属しており、殺しを生業としている。

 アウレリアンはノクターンのリーダーだ。

 ノクターンは総員6名のとても小さな組織だが、一人ひとりが戦闘に長けていて、瓦解させるのは極めて困難だ。

 それに加え、この時代、殺し屋はあまり存在しておらず、ノクターンの存在を知る者はごく僅かだ。

「相変わらず仕事がはやいな」

 壁にもたれかかって、腕を組んでいたエレボスが口を挟む。

 エレボスは目眩ましや幻覚に長けた、闇魔法を得意としており、レオンと同じように実行を任されることが多い。

「簡単な仕事だったからな」

 レオンはアウレリアンが座っているソファの向かいにある、もう一つのソファに目を向けた。

 そこには、一人の少女が眠たそうな顔をしながら、横たわっている。

 偵察や追跡を得意としている、クロウだ。

 幼い見た目をしているが、見た目に反して、クロウはノクターン随一の索敵能力を持つ。

「ソファで寝るな、クロウ。寝るなら自分の部屋へ行け。疲れたから座りたいんだが」

 レオンは呆れながら言う。

 だが、無口なクロウから返事は返ってこない。

 この建物には、一人ひとり部屋がある。

 部屋にはそれぞれ机や椅子、棚などの家具が揃っている。

 もちろん、寝台も備わっている。

 今レオンがいるこの部屋は、会議や情報共有等を行うときに、よく使われるいわば居間だ。

「おい、クロウ。聞いているか?寝るなら部屋で寝てこい。せめて、座ってくれ」

「……」

 アウレリアンに報告をしたいが、クロウが移動する気配を見せない。

 立ったまま報告するのも良いが、疲れているのでできれば座って報告したい。

 レオンが本格的に困り始めていたとき、アウレリアンが口を開いた。

「クロウ。おいで」

 クロウが起き上がり、アウレリアンの方へ小さな歩幅で歩いていく。

 アウレリアンはクロウを抱き上げ、自身の膝の上に乗せた。

 クロウはレオンを睨んだ。

 基本的に人の話を聞かないクロウだが、ノクターンのリーダーであるアウレリアンの話だけは、しっかりと受け入れる。

 レオンはありがたく、ソファに座った。

 それと同時に、エレボスがレオンの隣に座る。

「いやぁ〜、俺も困ってたんだよ」

「部屋に戻れば良いだろ」

「一人で部屋にいても暇だろ」

 その時、この生産性のない話を終わらせるように、アウレリアンが口を挟む。

「はやく報告してくれ」

「はい。標的はしっかりと殺しました。目撃者はいないです」

 レオンは淡々と報告する。

 その時、入り口の方から穏やかな声が響いた。

「ただいま戻りましたぁ〜」

 サイラスの声だ。

 サイラスはノクターンで、全員の日程調節を行ったり、新しい人員の教育を行ったりする。

 レオンも昔はサイラスにしごかれたものだ。

「あれ?ヌルは?」

「いつも通りだぜ」

 ヌルの問いに反応したのは、エレボスだった。

 ヌルは主に証拠の隠滅などを行っていて、基本的には部屋に引きこもっている。

「たまには部屋から出てきてほしいんだけどね」

 サイラスは独り言のように呟いて、自室へ向かっていく。

「俺も寝よ〜」

 エレボスが立ち上がり、自室に戻る。

 アウレリアンは膝の上に乗せたクロウの頭を撫でながら、静かに話し出す。

「ヌルはクロウと仲良くなれるんじゃないかと思っていたんだがな」

「……アウレリアン様の頼みでも、ちょっとやだ、かも」

 クロウが拙い言葉を返す。

 アウレリアンはため息をついて、呆れている。

 レオンはすでに話を聞くことをやめて、本を読んでいる。

 

 これが、ノクターンでの平穏な時の日常だ。

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