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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
風の殺し屋編
12/21

第一話 風が流れて

 この世には4体の大精霊が存在するとされている。水の大精霊、風の大精霊、火の大精霊、土の大精霊。彼らは神に近しい存在で、それぞれ人間を一人選び、自身の器とする。

 器と言っても人間の身体を乗っ取ったりするわけではなく、有事の際に、世界へ顕現するための媒体にするだけだ。また、大精霊は器に自身の魔力を与える。

 その魔力が器にどのような影響を及ぼすかは、器自身によるものかもしれない。

 これは風の大精霊の器、レオンが殺し屋として奪い続ける話。彼はただの路地裏の孤児であった。

―――――――――――――――――――――――――――

 今夜は静かだ。

 冷たい風だけが、屋根の上を滑るように、通り過ぎていく。

 レオンはその風の中に立っていた。

 呼吸はほとんど聞こえない。

 風と一体になっているかのような、存在だ。

 

 標的の部屋は、真下だ。

 窓から漏れる灯り。

 かすかな足音。

 中にいる人間が、まだ生きていることを示す、気配。

 レオンは無心で、屋根の縁から一歩踏み出した。

 身体は落ちることなく、流れた。

 窓枠に足を掛け、音もなく部屋の中へ入る。

 風が隙間に入り込むように。

「……誰だ?」

 標的が振り返るより早く、喉元に刃が触れた。

 一瞬、風が止まる。

 血が噴き出す音は、思ったより鈍い。

 それだけだ。

 男は床へ崩れ落ち、何かを言おうとして口を開いたが、そのまま動かなくなる。

 レオンはその様子を見下ろした。

 心臓の音を確かめる。

 脈が止まったのを確認する。

ーー任務完了。

 だが、感想はない。

 達成感も、嫌悪も、後悔も。

 ただ一つ、いつも通りに思うことがある。

(……風が、止んだ)

 レオンは窓から外へ出て、屋根へ登る。

 夜の風は冷たい。

 その風は、レオンにとっては、心地よいはずだった。

 だが、その日はほんの一瞬だけ、違和感があった。

 建物のそば、路地の奥に、いくつかの小さな影がある。

 子供だ。

 泣いているわけでも、騒いでいるわけでもない。

 ただ、互いに身を寄せ合って、じっとしている。

 親の姿は見えない。

 恐らく孤児なのだろう。

 胸の奥が、わずかにざわついた。

 理由は分からない。

 罪悪感ではない。

 恐怖でも同情でも哀れみでもない。

 ただ、風の流れが変わった。

 レオンは子供たちから、目を逸らし、屋根から飛び降りた。

 風に乗り、闇に紛れる。


 それが、レオンという殺し屋だ。

大精霊の器が辿った道を読んでいただきありがとうございます!本日から新しい章が始まりました。この章はサクサク進めてサッと終わらせる予定です。予定通りにならなるかどうかはわかりません。頑張って書いていくのでこれからもよろしくお願いします!

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