表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

再出発

姉弟子のイトマキと偶然再会したタネマキ。両者は今までの経緯を話し合う。

 「あんた、もしかして…忍苦岩に触ったの?」

森に静かに響いたイトマキ姉さんの声は、低くも鋭かった。

彼女の瞳は真っ直ぐで、逃げ場を与えてくれない。

「はい、その通りです」

観念して答えると、彼女は深くため息を吐いた。

「なに馬鹿なことしてんのよ!アンタに問いただしたいことは山ほどあるけど……」

そこで言葉を切り、ふいに視線を逸らす。頬がうっすら赤い。

「……そのままじゃ目線に困るから。ちょっと待ってな。服を作ってあげる」

「あ、ありがとうございます」

俺は頭を下げつつも、気になっていることを尋ねた。

「ところで、イトマキ姉さんは、こんな場所で何してたんですか?」

「私? 私はね、呉服の行商をしながら忍の任務もこなしてるの。今日は“ダイダラの里”に寄ろうとして森を抜けようとしたら……あの熊に襲われちゃったのよ」

彼女は肩をすくめ、さっきの戦闘を思い出したように苦笑する。

「そんなことより!」

一転して声を張り上げる。

「タネマキ! なんで忍苦岩に触るなんて馬鹿をしたのか、ちゃんと説明しなさい!」

「いやぁ、それがですね……」



あの日、俺は忍苦岩を折り返し地点とする日課のランニングをしていた。


「ふう……もうすぐで折り返しか」

息を整えながら走っていたその時――

アンアンアアーン!

耳を疑うような、妙に艶めいた声が森の中から聞こえて来た

「!?」

声のする方に目を向けると――

そこには、里一番の豊満女・マシ子と、里一番の筋肉野郎・キレ雄がなにかをしていた。

「な、なんだあれは!? 一体何をしているんだ!?」

走りながらも二人へ視線が釘付けになっていた。

――その瞬間


ドッシーン!!!


「うわっぁ!!」

気づけば俺は忍苦岩に衝突していた。

ムクッ……ムクムクムク……

俺の身体が急激に膨張し、腕も脚も天に届かんばかりに伸びていった。



「……っていう感じなんですよ」

「へ、へぇ~……そうだったんだ……」

イトマキ姉さんは妙に引きつった笑みを浮かべていた。

「そ、それで……里を追い出されちゃったわけね」

「はい。もう身体が元に戻らないから……」

彼女の表情が少し和らぐ。

「大変だったね」

だがすぐに、瞳を鋭く光らせて俺を見据えた。

「あっ!じゃあさ、地雷也師匠との約束はどうなっちゃったのさ?」

師匠…親父との約束とは、親父を超える忍になるために、九忍将(くにんしょう)。その中でもさらに優れた忍である“四天忍(してんにん)”になるというものだ。

「もうこの身体じゃ……諦めるしかないかなって」

自嘲気味に笑った俺に、イトマキ姉さんは首を横に振った。

「んー……そうかな?」

「へ? どういうことっすか?」

「さっき私を救った“螺旋岩”。あんな巨大な岩……元四天忍の地雷也師匠でも出せるかどうか。つまり、あんたは身体が大きくなったぶん、忍術の規模も大きくなってるんじゃないかってこと」

「……たしかに! さっきの螺旋岩の威力、すごかった!」

胸に希望が芽生えるのを感じた。

「でしょ? なら、巨大な身体だって武器にできる。今のあんたでも、四天忍を目指せるわ!」

その言葉に心が熱くなる。

「よーし! そうと決まれば、親父との約束……果たしてやるぜぇぇぇ!!!」


数十分後。


「よし、服ができたわよ」

イトマキ姉さんが大きな布を差し出した


「ありがとう、イト姉! うぉぉぉ! シャッキーン!……って、ふんどしだけじゃん!!!」

「贅沢言わないの。それだけでも手持ちの布、ほとんど使ったんだから」

「す、すみません……ありがとうございます……」

「それで、タネマキ。これからどうするつもり?」

「とりあえず……ちゃんとした服は欲しいっすね。ふんどし一丁で四天忍になったら、さすがに恥ずいし」

「なら、私と一緒に来なさい。“イッタンモメンの里”に」

彼女は凛々しく胸を張って言った。俺は特に行くあてもないので姉さんの誘いに乗ることにした。


一方その頃、森の外れ、木陰に潜む影があった。

「凄い忍術だったな。興味が湧いたぞ、大きな忍よ…」

暗闇に潜む忍が、妖しい光を宿した瞳でふたりを見つめていた。

今回で第一章完、次は第二章 壁 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ