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43話 もしかして何かお嬢様してしまいましたー?

「エリ、お前はなんという……なんという」


「いかがしましたか、お父様。娘の部屋に入っていきなり」


 今パパが私の部屋を訪れたはいいものの、困り切った顔でそう言いながら、あとは言葉にならなかった。


「本当に、お前は」


 再び首を振る今パパ。


 まったく、何なのかしら。

 いきなり淑女(レディ)の部屋に入ってきて。はっ、まさか――


「なんでしょうか、お父様。もしかして親と子で……!?」


「や、やめなさい、そんな冗談は! そうではない! そうではないのだ。…………エリ、お前。一体、何をした?」


「ええ? いきなりなんの話でしょう?」


「アード卿のことだ」


「アード卿?」


「今日、彼の審問があったのは知っているだろう」


「そのようですわね。私は朝議にしか参加できない身分ですので、それ以外は分からないのです」


「アード卿は謹慎処分となった。当然、次期筆頭大臣の候補からも抹消。悪ければ彼の領地も削られることになる。その息子も同罪だ」


「あらあらお気の毒に」


「気の毒にではないだろう。エリ。お前がやったな」


「お父様、実の娘を疑うのは悲しいことですわ」


 実の娘じゃないけどね。


「アード卿が謹慎になったことで、選挙はもはやガーヒル一色になった……わけではなかった。エリ、立候補していたお前に票が流れたな。アード卿の取り巻きだ」


「ええ、彼ら、行く場所がなくて困っていたみたいで」


「みたいで、ってお前」


「それで? 私が何をしたというのです?」


「お前がアード卿の息子と何かをやったのは聞いている」


「あら。あれは哀れな町民を守っただけですが。純粋な町民に解決を頼まれたので、ちょっと仲介しただけですわ」


「そのやり方が問題だというのだ」


「別に問題は起こしておりません。“たまたま”知り合いに頼まれて、“たまたま”言い合いの仲介に入ったところ、“たまたま”相手が自暴自棄になって襲ってきたので、“たまたま”近くにいた知り合いが助けてくれた。それだけですわ。ですから警備隊を呼んで、彼らを確保してもらったのです。立派な正当防衛ですわ」


「し、しかしだな」


「それともお父様は、私がアード卿の息子に暴行を加えられても良かったと? ああ、エリはあのような軽薄な輩に組み伏せられて、もはや抵抗はできないままに(なぶ)られてしまうのですね……」


「ぬぁぁぁぁぁ! エリにそんなことをするのは誰だ! 許さん!」


「はいはい。落ち付いてお父様。エリは無事ですから」


「うん。そうだな。エリは無事だな。うん。良かった……って、なんだか丸め込まれた気がするけど気のせい?」


「気のせいですわ。“そんなことより”、ちょっとお願いがあるんですが」


「うーん、エリのお願いはちょっと怖いんだが」


「また手紙を出させてもらえます?」


「手紙? 国際郵便か。しかし一体何に使う気だ。今、隣国のイチノ王国との国境で小競り合いが起きているのは知っているだろう?」


「大丈夫ですわ。イチノ国のお偉いさんへの熱いラブレターですから」


「ラブ!? え、ちょ!? エリ!? 何をしている!? いや、企んでいる!?」


「何も企んでませんわ。私はこの国の平和を、そして何より私自身の生を考えている。それだけは本気ですわ、お父様」

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