序章 適当に流して良い女神噺
「ハイ! というわけで転生の女神ちゃんDEATH! そして琴音ちゃん、お前はDEATH!!」
……なにこれ。
「ふふふ、“何これ”って新鮮な反応いただきました! いやー、前の子はもうそりゃ生意気で反骨精神バリバリ、でもとっても気持イイツッコミくんだったからさ」
なに。声に出してないのに。心を読んだみたいに。
「みたいに、じゃないの。心を読んだの」
意味わからない。
「そりゃ女神ですから!」
……はぁ。
「だめだめー、そこは『女神だからなんだよ! だったら転生とかいろいろできるだろ!』ってツッコミ入れて、わたしが『できるよ』って答えて『できんのかい!!』って流れがテンプレだよ」
……はぁ。
「あ、だめだこの子。完ぺきにそういうノリじゃない」
いや、良く分からないっていうか。転生するなら早くしてって感じだから。
「え!? なにこの子!? 話早すぎない!? もっと『なんで死んだの!?』とか『オレどうなっちゃうの!?』とかない!? 女神の方がびっくりなんですけど!?」
だって最初に転生の女神って言ってたし。なんかこれ、あれでしょ。異世界転生とかいう奴でしょ。
「おおぅ、この子。クールぜよ。クールすぎて、『クール! クール! クール!』とか熱く叫んじゃうほどクールぜよ」
……はぁ。
「ま、ちょっち段取り狂ったけど、そう! 君にやってもらうのは異世界転生! だって今、神界でも大ブームだからね! しかも今回は一味違う! さらに流行の流行、悪役令嬢ものだー!!」
……ふーん。
「うぅ、辛い。このテンションの差。クールどころじゃないよブリザードだよ。ホワイト・アルバムだよ。静かに泣くよ。凍えそうな季節に君はだよ」
……へぇ。
「ダメだよ、そこは『お前、日本人だろ!』ってマスクマンの正体行っちゃうテンションでツッコまないと」
……うん。
「あ、ごめんなさい。え、なにこれ辛い。女神ちゃん、初めて仕事で辛いと思っちゃいました。女神オブザイヤーを頂いた女神ちゃんが仕事に限界を感じました。もう引退!? てゆうか反応薄すぎない?」
いや、これでも驚いてる。でもパパがあんま感情を表に出して相手に付け入れられることするなって。
「なんか素敵なこと言うパパ!? ダンディー! え、ちょっと紹介してくれない?」
パパ結婚してるから。
「そりゃそうだ! じゃなきゃ君ここにいないもんね! なんてセンシティブな辺りをいじっちゃう、まだまだ現役な女神ちゃんでしたー。で、異世界転生なんだけどどう?」
あー、なるほどなー、って感じ。
「反応薄すぎー! これが新世代ってこと? XYZ世代ってこと? 掲示板に書き込んで最強のもっこりガンマンに助けてもらっちゃうってこと?」
え、いや〇ティー〇ンターとかないから。
「知ってるよ! これでも全知全能だったらいいなの女神ちゃんだよ! ジャパントレンドに惹かれる女神ちゃんだよ!」
あ、やっぱり日本人なんだ。
「だから違うの! ……え、いいね。なに、それ。新しいツッコミ? ゆるふわな新時代のツッコミってこと? できるわね」
良く分かんないけど。
「うん、じゃあもういっちゃいましょう! なんか色々ジェネレーションギャップで辛いんで! というわけで第19012回異世界転生グランプリは、今回ついに新ジャンル! 悪役令嬢ものっていう、新ジャンルでしょ? だから色々分かってるオタクちゃんを採用したわけなんだけど。私の慧眼褒めてよね?」
……はぁ。
「なんかこの反応、怖いわー。よし、もう行こう。行っちゃいましょう! 悪役令嬢ものならスキルもアバターもなにも関係なし! とりあえずその身のまま令嬢しちゃってくださいな! いやー、経費削減ができる女神。今年も女神オブザイヤーもらっちゃうからね。はい、というわけで転生カウントダウン、ぽちっとな! 60秒前……って長すぎかい!」
…………。
「あ、ついに無反応。それはキツイって。でも歴史学者には天下統一を、オタクには悪役令嬢を。ふふふ、女神ちゃんの名采配。これはもう名将と呼ばれてもいい監督っぷりでしょ女神リーグ日本代表まっしぐらでしょう」
あのー、あ、てかやっぱ日本人。
「日本人じゃないっての! おおぅ、いいね、この静かなツッコミ。ちゃんと天丼にも対応してるのね。というわけであと30秒。女神ちゃんとの楽しい時間ともお別れの時間DEATH!」
何ですか?
「え?」
悪役令嬢ってどういう物語ですか?
「え? え? え? ど、どういうこと!? マ、マジ!?」
はい。まぁそこそこにオタクしてますけど、ちょっとそこは対応外で。一応、あるのは知ってるけど。
「ちょ、そういうこと早く……って、時間! と、とりあえず婚約破棄には気を付けて! 婚約者はぶっ飛ばす方向で! それと相手の令嬢は――」
はぁ。まぁ何とかなるだろう。
そう思いながら。
女神の声と共に意識は消えていった。
新しく書き始めました。
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