94 ダカール
ポルトガ国首都「リスボン」
リスボンのいつもの大層立派な教会付きの孤児院
「リスボンは好景気なの。この上昇気流がどこまで昇るかわからないの。」
「なぁ、この子を連れて行こうぜ。」
「好景気とやらを見に行くのじゃ。」
リスボンのいつもの商会
「アルジェで買った品々を売って、「ハム」と「アーモンド」を買うのじゃ。」
「ここの取り扱い商品もどんどん増えているな。」
「黄金海岸方面に向うなら、おすすめは武器ですよ。みなさん買ってますよ。」
「ここは新大陸への三点貿易の起点なのじゃ。」
「ぴー」
「ぴーちゃんは「新大陸への三点貿易とは、ヨーロピアで武器を買い。西アフリカで奴隷に替え、新大陸で砂糖や金銀などに替えて帰ってくる。」と言っている。」
「いつもお利巧な鳥さんですね。」
「このリスボンの現在の主要産業は「ロジスティクス」なのじゃ。」
「ふむ。」
「自分には聞きなれない言葉っす。」
「「兵站」だな。」
「「兵站」は知ってるっす。軍隊に食料を届ける事っす。」
「そこから派生した概念なのじゃ。ここにはヨーロピア中から武器そのものと作るための材料が集まってくるのじゃ。それらを管理し、必要な数だけ用意し出荷するのじゃ。武器だけではなく食料でも同じことをしておる。」
「ほぅ?」
「新大陸から来た産物もヨーロピア中に同じように発送されるのじゃ。」
「物が必ずここを通るという事か。」
「このイベリア半島をなのじゃ。」
「ポルトガ国がシチリアを嫌ったら、物が来なくなるっすか?」
「そうなるように動いているのじゃ。」
「でも、シチリアから新大陸への船を出せばいいっす。海は誰のものでもないっす。」
「前話で見た通り、性能のよい船は新大陸との行き来に使われておるのじゃ。」
「性能の良いイタリ都市国家の船もあるっすよ?」
「それらの船も新大陸との行き来しかしておらんのじゃ。」
「?よくわからないっす。シチリアの船が、シチリアに寄らずにリスボンから新大陸の行き来ばかりするんすか?」
「旧式のコストの安い船でもできる地中海の運送はそちらにまかせるのじゃ。」
「わざわざリスボンで荷下ろし、荷積みするのも手間がかかるっす。」
「最新式の船に満載された砂糖が届いても、シチリアの人には多すぎて困るのじゃ。」
「よそに売ればいいっす。イタリ都市国家はいっぱい国があるっす。」
「それをポルトガ国がやっておるのじゃ。」
「そんなことをされたら困るっす。イタリ都市国家が損をするっす。」
「もともとイタリ都市国家の「ヴェネツィア」がやっていた事なのじゃ。」
「なら、ヴェネツィアに返して欲しいっす。」
「それで、他の国に損をしろと言うのじゃな?」
「、、、」
「そもそも、地理的要因なのじゃ。新大陸への入口にあるからできる事なのじゃ。」
「私の国イギリ女王国も北大西洋航路でそうなりたいものなのですが、なにぶん島国なので少々不利ですね。」
「「ハンザの女王」は「ハンブルク」をそのようにしたいと考えているようなのじゃが、「神聖ドイ帝国」人は頭が堅いから苦戦してるのじゃ。」
「あそこの人達は自分の事しか考えませんから。」
「となると、やはり「オラン国」なのじゃ。」
「「オラン国」ですね。」
「自分には何をいってるのかさっぱりっす。」
「安心しろ。俺様にもわからん。」
「妾も実はよくわからんのじゃが、それっぽく振る舞ってみたのじゃ。」
「かっこいいっすね。自分、真似するっす。」
「ふ、「オラン国」か。」
「錨をあげるのじゃ!!船を出すのじゃ!!」
「ごぶーー!!」(あいあいさー!)
「巻きで行くのじゃ。100話が近いのじゃ。」
「記念回には派手な事がしたいな。」
「リスボンを出港する時には、あの女が出そうなものなのじゃが、、」
「フラン国の自転車レースもそろそろ終盤だな。」
「どんな結末であれ良い結果だといいのじゃ。」
「そういえば、「ツール・ド・フラン」の運営から頼まれ事をしてたっす。」
「のじゃ、いつのまにそんな伝手を得ていたのじゃ!」
「油断も隙も在りはしないな。」
「なんでも、大好評の「ツール・ド・フラン」の拡大版「パリ・ダカール・ラリー」を開催するために現地調査してほしいらしいっす。」
「スポーツの振興は世界平和への一番の近道なのじゃ。」
「それは行かねばなるまいな。」
「世界平和の一翼を担うため、いざ行かん「ダカール」へ!!」
セネガ国ポルトガ国租借地「ダカール」
アフリカ大陸の最西端に位置するヴェルデ岬の先端にある町。アフリカで最も奴隷を出荷した港。ヨーロピアの国々が水面下で仲良く覇権を争っている。
「いろんな国の船がいるのじゃ。」
「思ったほど街中に奴隷はいないな。」
「へへっ、奴隷は沖にあるドレ島に集められているんですぜ。」
「む、闇商人!いたのか?」
「へへっ、この街の主要産業は「ロジスティクス」なんですぜ。」
「のじゃ!?真似っこなのじゃ!知的財産権の侵害なのじゃ。」
「主要産業は奴隷売買だと聞いていたが?」
「へへっ、この街にはアフリカ中から奴隷が集まってくるんでさ。そいつを調教して使えるようにして新大陸行きの船に売るんですぜ。」
「むぅ。」
「新大陸に行っちまったら帰れねぇですからね。逃げようとする奴隷も多いんでさ。そんで、逃がさないよう沖に奴隷の保管場所を作って、そこでまとめて教育やらもしてるってわけですぜ。」
「随分と、随分な話なのじゃ。」
「おやぁ?奴隷はお嫌いですか?」
「この世界に必要だと理解はしておるのじゃ。」
「わた、、あたしは必要だとは思えません。」
リヨンから一行に加わった若いシスターは理想に燃えていた。
「人は平等なはずです。誰かの自由を奪うなんて間違ってます。」
「へへっ、十字教の教皇様が認めていらっしゃるんですぜ。」
「それは、十字教徒を奴隷にしてはならないとおっしゃっただけです。」
「同じことでさ。昔はそんな規定は無かったのに、新大陸で人手不足になるや、急に言い出したんですぜ。つまり、十字教徒以外は奴隷にしても構わないって事ですぜ。」
「違います。ただ、十字教徒を奴隷にするのを禁止しただけです。」
「何も違いませんぜ。」
「そんな意地悪を言いに来たのか?」
「へへっ、奴隷の取引所では孤児も取引されてやすが、買ってモーリシャスに連れて行かないので?」
「な!?子供まで売買しているのですか!許せません!!」
「妾は見たのじゃ。」
「見たな。」
「ここよりはるか南にあるそれはそれは大きなスラムでは、たくさん子供たちが毎日亡くなっておるのじゃ。」
「それはっ、、聞いています。。」
「ここの子供たちは食べ物を食べれるのじゃ。」
「だからって!目の前の子供を救わないのですか!!」
「救わないのじゃ。」
「救えんな。」
怒りでどうにかなりそうだけど、一呼吸して落ち着ける。
「こんな場所でスポーツ?を催して世界を平和にするですか!?」
「こんな場所だからこそなのじゃ。」
「わた、、あたしは自分に流れるヨーロピア人の血が恥ずかしいです!」
「へへっ恥じる事はありやせんぜ。アフリカ人の奴隷を集めているのはアフリカ人なのですぜ。」
「そんなことは!関係!!ないのです!!!」
若いシスターはプリプリ怒って出て行った。
「若いな。」
「若いのじゃ。」
プリプリ怒りながら歩いていると、いつの間にか町はずれにきていた。
そこに売り物の奴隷と思わしき人々を連れてた男が歩いてきた。
「女、こんなところで何をしている?」
若いシスターは警戒しながらも答えようとして、答えが無いことに気付いた。
「何もしていません。。」
「若い女がこんなところに一人でいるものではない。早く家に帰れ。」
男は奴隷なんかを引き連れているわりに随分と親切なようだ。
「奴隷を売りに行くのですか?」
「そうだ。」
「人間を売り買いする事は善くない事だと思いませんか?」
「それで泣いていたのか?」
「わた、、あたしは泣いてなどいません!」
男と奴隷たちはしばらく、海を見ながら娘が泣き止むのを待った。
「俺たちはお前たち西洋人が来るずっと前から戦いをしている。」
「争いは善くない事です。」
「奴隷商達が来る前は、戦で負けたものは死なねばならなかった。今は武器にかわる。」
「それで、また戦をするのですか?」
「そうだ。それが俺たちの生き方だ。」
若いシスターは間違っているとは思ったが、何が間違っているのかわからなかった。
「私は世界を見てきます。真に正しいと思える事を行えるように。」
若いシスターは去っていった。
アフリカ人の男は呟く。
「雛鳥はいつも俺の前から飛び立っていく、このダカールの乾いた海風の中を。。」
「カッコいいっす。自分も真似するっす。」
隠れて見守っていたシチリアの若衆は新たな男の生き様を見たのであった。




