93 アルジェ
地中海を船は進む。
「つまり黄金海岸の封鎖はとけたのじゃな?」
「はい。ポルトガ国は艦隊をアフリカ西岸から東岸に移動したようです。しかし、ギニア湾の治安は悪いままです。」
謎の額に「008」と書いてある男はかなりの情報通だった。
「また船を担いでスエズを越えないといけないかと思ったぜ。」
「え、そんな事をしたんですか?」
「まさかなのじゃ。500トンはあるのじゃ。」
「私がワイン博士ですが、今度は秘蔵の「ワイン」を絶対に降ろしませんからね。」
「「ワイン」の重みで船が沈まねばいいのじゃが。。」
「大丈夫です。空のワインボトルは浮くのです。」
「それは、たくさん飲まねばなりませんね。」
その時、警報が鳴り響いた。
「ごぶーー!!」
「あれはイタリ国のどこかの都市国家の船なのじゃ。」
「バルバリア海賊に追われているな。」
「ぴー」
「ぴーちゃんは「「バルバリア海賊」とはアフリカ大陸北部アルジェあたりに本拠地を置く回教系海賊で、西地中海でヨーロピアの十字教国家にとても大きな被害を出している。」と言っている。」
「相変わらず賢い鳥ですね。」
「このままだと追いつかれるのじゃ。」
「旧式の船だしな。」
一緒に甲板に上がってきた「008」は、
「助けないのですか?」
「海賊は駆除するのじゃが、イタリ都市国家の船はえらく旧式の船を使っておるのじゃ」
「船足も少々おそいな。」
「偽装かもしれないのじゃ。」
海賊に襲われていると見せかけて、海賊の仲間かもしれないと疑った。
「船が古いのも、船足が遅いのも理由があるのですよ。」
「そういうのいいから早く言え。」「言うのじゃ。」
「簡単な事です。新大陸が発見されて以降、最新式の船や優れた航海士は新大陸との航路に投入されているのです。その結果、地中海の十字教勢力の船は少し劣る船が多いのですよ。」
「なるほどなのじゃ。」
「それにあのガレアス船は漕ぎ手が足りていませんね。稼働しているオールが少なすぎます。奴隷も新大陸にとられてますからね。」
イタリ都市国家の船は「ガレアス船」で、「キャラベル船」や「ガレオン船」のように大型の帆をはれる船だが、地中海の複雑な風に対応するため、半帆半櫂運用を基本としていた。
対して、バルバリア海賊の「ガレー船」は帆も張れるが主動力は櫂に頼っている。
「忌々しいことに、バルバリア海賊は我ら十字教徒を奴隷として漕ぎ手にしているのです。我らが奴隷不足で苦しんでるときに自分たちだけ奴隷を確保しているのです。」
「そなたらも、アフリカ大陸の人々を奴隷にしておるのじゃ。」
「十字教徒を奴隷にするのは戒律で禁止されています。」
「それは十字教の戒律だな。」
「バルバリア海賊は回教徒なのじゃ。」
「そもそも、十字教徒になった奴隷は奴隷のままなのじゃ。」
「アフリカ人が本当に十字教徒になったのかわからないですから。口だけかもしれません。」
「口だけでない十字教徒はどこにおるのかの?東アフリカやアジアには大勢いそうなのじゃ。」
東アフリカとアジアは「十字教絶対主義者」達のせいで大変な事になっていた。
「それこそ、神のみぞ知るですね。」
風上から慎重に近づき、適度な距離で砲撃体制をとる。
「リスボンにはヨーロピア中から弾薬が集まってきておるのじゃ。ありったけ撃っても大丈夫なのじゃ。」
「砲弾のバーゲンセールだぜ。」
こちらが本格的に砲撃を開始する前に海賊船は逃げ出した。
「逃げたのじゃ。」
「逃げたな。」
警戒していたイタリ都市国家の船からも感謝の旗があがる。
「感謝料を徴収しにいってもいいのじゃが、、」
「あっちのほうが面白そうだな。」
「逃げた海賊を追って、本拠地に殴り込みなのじゃ!!」
「海賊は見つけ次第、殲滅だ!!」
回教帝国アルジェ州「アルジェ」
アフリカ大陸北部、地中海南岸にある要塞都市。回教帝国の艦隊の拠点でもあるが、実質は海賊の本拠地である。
「さすがに数が多いのじゃ。」
「俺様をもってしても骨が折れそうだ。」
念の為、エチオピ帝国の商船の旗をだしていたら普通に入港できた。
「お前たちは何をしにこの「アルジェ」に来たのだ?」
「地中海の船々の安全を守るため、」
「俺様が」
「妾が」
「来てやったぜ!」「来たのじゃ!」
「ぼ、僕は、え、エチオピ帝国からきた、なぜか珈琲博士ですが!!なぜか珈琲の販路を探しに来ました!!」
「エチオピの帝国の珈琲はこの「アルジェ」でも大人気だ。歓迎するぞ。」
珈琲好きの青年の機転で怪しまれずに上陸できた。
いつもの商会の支店
「この商会はどこにでもあるのじゃ。」
「システム的なものですから。」
「ストレスフリーでユーザーフレンドリーなのじゃ。」
「「ゴマ」「ケナフ」「辰砂」などがお勧めですよ。」
「「ワイン」を売って。全部買うのじゃ。」
「すみません。「ワイン」は取り扱いできないんです。」
「のじゃ!?」
「ここ、一応、回教帝国なんで。。」
「完全に失念しておったのじゃ。」
「船倉がいっぱいだな。」
「なんとか「ワイン」を処分できないか考えるのじゃ。」
「海に投げるか?」
「「ワイン」を処分するとはトンでもない事です。」
「そ、そなたは!?」
「そうです、私がワイン博士です。「ワイン」は万国で愛されてる飲み物です。「ワイン」を買い取らないなんてトンデモない事です。今後こちらの商会とは取引を考えさせてもらうのです。」
「えーっと、あまり大きな声では言えませんが、「市」にいくといろんな商人の方がいらっしゃいますよ?」
「海賊の戦利品市なのじゃ。」
「ワクワクする響きだな。」
「えと、一応、公的に認められている「市」なんで、あまり物騒な物言いはやめてくださいね。」
「まかせるのじゃ!」
「頭蓋骨で作った盃とかありそうだな。」
教えてもらった「市」に来た。
「どいつもこいつも、胸に一物ありそうなバルバリア商人どもだぜ!」
「地中海の海賊の略奪品とやらをみせてもらうのじゃ。!」
商魂逞しい商人たちも話しかけるのをためらった。
「なんと、普通に「ワイン」が売ってるのです。否、普通とは言えないのです。ここにあるのは、あの幻のヴィンテージワインです。大量に出荷した船が沈んだため市場に出回る数がすくなくプレミア価格がついていたはずなのです。保管状態がよろしくないのは頂けないですが、全て買い取らせてもらうのです。」
「お酒も普通に売っているのじゃ。」
「これは、新大陸の造幣局で作られた「金」じゃないか?」
そこにはスペイ国が大層大事に国庫にしまい込んでるはずの新大陸の「金」があった。
「さすがにヨーグルトは売ってないようですが、ヨーロピアでは滅多にお目にかかれない薬の材料等もありますね。」
「馬鹿を言っちゃいけねぇ!!」
「のじゃ!バルバリア商人が怒ったのじゃ!!」
「いきなり失礼なバルバリア商人だな。」
「これを見ろ。」
「チーズなのじゃ。」「チーズだな」「チーズですね。」
「ヨーグルトだ!」
「チーズなのじゃ。」「チーズだぞ」「チーズですよ。」
「食べてみろ。」
「?」「?」「?」
バルバリア商人に勧められるまま「チーズ」を口にした。
「のじゃ!?ヨーグルトっぽい味がするのじゃ!」
「そうか?酸いいチーズだが。」
「いえ、たしかに乳酸菌の存在を感じます。」
「わかったか?」
「ヨーグルト味のチーズなのじゃ。」
「酸っぱいチーズだ。」
「ヨーグルトよりのチーズですね。」
バルバリア商人はプンプン怒って去っていった。
アルジェリア人がヨーグルトだと思い込んでいる「タカマート」は、現在の日本でも専門店などの乳製品コーナーで北アフリカのチーズとして販売されている。米要出典。
結局、怪しげなバルバリア商人との取引で「ワイン」をアルジェの特産と交換することができた。
「なぁ、こことヨーロピアを行き来すれば一財産築けるんじゃないか?」
「周りを見るのじゃ。」
そこには少なくはあれど、ヨーロピアの商人っぽい人々がある程度はいた。
「政府が国民にむけて発信しているプロパガンダなどあてにならないのじゃ。」
「敵国を危険だ野蛮だと言っても、現場の商人たちは交流してるんだな。」
「妾は妾の見たものだけを信じるのじゃ。」
「ならば、全てを見ないとな。」
「そのために、まだ見ぬ海を目指すのじゃ!!」




