88 ダンケルク
フラン国湾岸都市「ダンケルク」
フラン国最北部、ベルギ国との国境に位置する。工業都市として栄え製鉄が盛ん。名前の意味は「砂の教会」。
「自分が「ツール・ド・フラン」少年の部への参加登録をしておくっす。今日は体を動かさずに休むっす。」
「でもコーチ。おいら、トレーニングしないと不安で、、」
「馬鹿野郎っす!!筋肉を休ませるのも大事だって教えたっす!」
「でも、、でも、、」
「明日から、長く辛い戦いが始まるっすが、もう戦いは始まってるっす。」
「もう始まってる?」
「万全のコンディションで本番に挑めるようにするのも一種の戦いっす。」
「!!、おいら、体を休めるぜ。明日、最高の自分であるように。」
「体は休めても、心は燃やしておくっすよ。」
そして、選手たちにとって長い夜が明け「ツール・ド・フラン」当日を迎えた。
「いい天気なのじゃ。」
「強者達が集まってきたな。」
そこに一人の鼻っ柱が伸びきった少年がやってきた。
「ボンジュー。君も「ツール・ド・フラン」の参加少年かい?」
「そうだ!おいらは「ツール・ド・フラン」参加少年だ。」
「オ、ラーラ、君のような貧相な孤児が、栄誉ある「ツール・ド・フラン」に参加少年だなんて、世も末だね。」
「お、おいらは孤児じゃなくて、農家の三男で「海峡の向かい風少年団」の船乗りだ!」
「ジュボア、ぼくのマシンを見て見なよ。パパに買ってもらった最高級の少年用自転車だよ。すごいだろ?君の貧相なマシンはどこだい?」
「おいらのマシンだって、姉御が夜なべして買ってくれた最高の少年自転車さ。」
そこに、徹夜で整備をしていたギャンブル狂いのおっさん達が少年自転車を持ってきた。
「できたぞ。」
「セパヴレ!これが、、君のマシン!?」
「どうだ、おいらの自慢のマシンだ。驚いたか。」
「ぴー」
「ぴーちゃんは「この自転車はスロットルを開くと最大5馬力の出力を発揮できる。」と言っている。」
「外部動力の取り付けはレギュレーション違反なのじゃ。」
「内燃機関だ。」
「もっと、問題なのじゃ!」
「エンジンオイルも特注ですよ。」
「ここを見てくださいマフラー(排気口)でジャガイモを焼けます。」
「こ、珈琲用の湯を沸かすこともできるのです。」
「完全に規定違反なのじゃ!!検査前に取り外すのじゃ!!」
大急ぎで取り外した。
「ゆ、愉快な仲間だね。ジャストモメン!君には負けないよ。」
「望むところだ!おいらは優勝してプロ二輪レーサーになるんだ。!!」
参加少年達がスタート位置に移動する。
「おいらは前に行くぜ。」
「ダコール、好きな場所に行くといい。けれど前はお勧めできないね。」
「なんでだよ?前の方が有利だろ?」
「セスラ、だけど見て見なよ。」
スタートライン近くではたくさんの少年が自転車で殴り合いをしていた。
「なんだ!殴り合いをしているぜ。審判は止めないのか!?」
「セサ、毎年あれだよ。伝統ってやつだね。」
「なるほど、だから前に行かない方がいいのか。おいらも後ろからいくよ。」
「パシュール、前に行かない本当の理由が来たみたいだよ。」
「本当の理由?」
なんとそこには熊のような大男がきたのです。
「な、なんだ!?おいらの3倍異常あるぜ。。」
「セスラ、あれも参加者だよ。」
「え?何を言ってる、どうみても少年じゃない。お兄さんですらない。オジサンだよ!それもお爺さんよりの奴だよ。」
「ウイトタアフェ。彼は30年近く前から毎年このレースに参加してる少年さ。」
クマのような大男はスタートライン周辺で大暴れした。かわいそうな少年たちは自転車を壊されたり、噛みつかれたりして大騒ぎだ。
「あんな、クマみたいな奴に勝てるわけないじゃないか!」
「パシュール、大丈夫さ、彼の自転車を見てごらんよ。」
「ん?可愛い自転車だなクマさんのマークがついてる。」
「ノン、前じゃなくて後輪を見るんだ。」
「あれは!、補助輪じゃないか!!レギュレーション違反だろ!!」
「パシュール、補助輪がルールに抵触するとは聞いたことがないね。そもそもルールの存在する聞いたことがないね。」
「なんてこった、コーチ達が付けてくれた「内燃機関」を外さなくてよかったなんて」
「ジャスタメン、あのクマのような大男は大人の癖に補助輪なしで自転車にのれないのさ!」
「なんだって、やぱり大人だったのか!」
「ノン、少年だよ」
「君が大人って言ったんじゃないか!」
「ノン、言ってない。」
「言った!!」
「セプブレ!絶対に言ってない!!」
「絶対に言った!!」
少年たちは喧嘩のすえ決別する事になった。
「君のような嘘つき野郎とはもう話さない!!」
「オ!ララ!それはこっちのセリフだよ。絶交だ!!」
前歯の少年は自転車を押して離れる。
なぜだか自転車がいつもより重く感じる。あんなにレースを楽しみにしていたのに、心の中がぐしゃぐしゃだ。だいたいあいつが悪いんだ。変な嘘をついて、意固地になったあいつが悪いんだ。
スタートの時が近づいてきて、空も曇ってきた。なんだか、天気までおいらの心の中みたいだ。もし、あいつが謝ってきたら許してやってもいいかもしれない。
たくさんの保護者達が見守る中「ツール・ド・フラン」少年の部は発走した。
「さて、少年たちはスタートしたのじゃ。ゴールはどこかの?」
『ゴールは2か月後です。』
「のじゃ!!2か月と言うたのじゃ?」
『はい。「ツール・ド・フラン」は「フラン国」中を自転車でまわりますので、そのくらいかかりますね。』
「少年の部なのじゃ!」
『少年もです。』
「困ったのじゃ。そんなに付き合えんのじゃ。」
『大丈夫です。「海峡の向かい風掠船団」が各地でサポートを準備しています。』
「妾達はなんの為にここに来たのじゃ?」
『さぁ、、たぶん、物語の都合ですね。』
少年たちの行く末を見届けることなく、航海は続くのであった。




