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86 プリマス



「1!2!1!2!上半身も鍛えるっす。バランスは持久力を生むっす!1!2!」

「1!2!これ本当に、1!2!必要っすか?1!2!」

「ドラコを救うためには必要だ。1!2!1!2!」

「1!2!おいらはプロ二輪レーサー1!2!になりたいんす。」

「1!2!1!2!そのためにまず、1!2!」

「1!2!ドラコを救うのだ1!2!1!2!」


「訓練中失礼するのじゃ。プリマスに着いたのじゃ。」

「よし、街を燃やそう。」

「のじゃ!まずは話し合いなのじゃ。妾達は理性ある生き物なのじゃ!」

「ふむ、それもよかろう。」



 イギリ女王国南部都市「プリマス」

 グレートブリテン島の南部、コンウォール半島の南に位置するこの港町はイギリ女王国にとって重要な立地であり、強力な海軍が軍港を構えている。



「ドラゴン提督に会いに来たのじゃ。ツケを払ってもらうのじゃ。」

「あー、また飲み屋の集金ですか?ここでは立替えませんよ。」

「本人から直接貰うのじゃ。居場所を教えるのじゃ。」

「あー。あの人は、何回目かの世界一周に行ってますね。いったい何週するつもりなんですかね。」

「のじゃ!いったい何時でたのじゃ?」

「先週くらいですかね。あの人、出港前になるとツケで買い物するんですよ。」


「行き掛けの駄賃にスペイ国の港町「ビーゴ」を襲ったのじゃ。。」

「一年くらいしたら帰ってくると思いますよ、東から。」

「情報ありがとうなのじゃ。とりあえず街を燃やすのじゃ。」

「え?」

「まぁまて、俺様達は理性ある生き物だ。」


「のじゃ。炎の誘惑に取り込まれるところだったのじゃ。」

「しかし、「ドラゴン提督」野郎がいないとは困ったな。」

「困ったのじゃ。」


「追いかけて行っても軍艦隊に勝つのは難しいか。」

「ドリルで貫けるものなど無いのじゃが、その後が問題なのじゃ。」

「ケツを貫いて終わればいいのだがな。」


「あのー、ここは「イギリ女王国海軍」の基地で、私は「イギリ女王国海軍」の軍人なのですが、、」


「軍人よ、偉い人は言ったのじゃ。」

「死体は喋らんとな。」


「ひぇー、お助けー。」


 そこに見覚えのある派手な女性がやってきた。


「おーほほほほ。話は聞かせてもらいましたわ。」

「げ、「ハンザの女王」なのじゃ。」

「ちっ、退路は確保できてるぞ。」


「そんなに警戒しなくても、きっと「イギリ女王国政府」から許可がでますわよ。」

「のじゃ?」

「なんの許可だ?」


「もちろん「ドラゴン提督」閣下の討伐ですわ。」



 大言を吐いて、ハンザの女王は偉い人の部屋に入っていった。




「おーほほほほ。少々失礼しますわよ。」

「貴様か。何の用だ?」


「女王陛下の海軍の皆様にとって大変お得な情報をお持ちしたのですわ。」

「貴様のよからぬ企みに軽々しく乗るとは思わぬことだ。また、貴様ばかりが得をする計画なんだろう。」


「わたくしの提案した宗教的に少々問題のある方々が新大陸を自主的に開拓してくださる計画で大儲けしたではありませんか。」


「その利益が奪われようとしているのだ!知っているのだぞ、お前の関係者が我々の投資した船団を狙っていることを!」


「まぁ恐ろしい。わたくし達「新生ハンザ同盟」は個人と組織の利益を守るためにあるのですわ。国を相手取って船団を狙うなどできるはずもございませんの。」


「いけしゃあしゃあと思ってもないことを口にするな!「ドラゴン提督」の船団への投資には大きな期待とともに、大きなリスクがかかっているのだ。それこそ、国が傾くくらいのな!」


「その件ですわ。イギリ女王国の銀行家のみなさんはとても商売がお上手なようで、投資家のみなさんは利子が苦しくありませんの?」


「く、苦しいがしかたあるまい。優秀な「ドラゴン提督」とは言え、船は沈むときには沈むものだ。リスクには相応のリターンが必要になる。」


「リスクとリターンですの?知っていますか?「古十字」の戒律ではとってよい利子の料率が決められていますのよ?」


「それは、大きな取引が発生しなかった古い時代に作られた戒律で、今の法ではリスクのある貸付には相応の利子をとっていいことになっておる。お前だって知ってるだろうが!」


「えぇもちろん知ってますわ。けれど、世界で一番船をだしている「スペイ国」では、その戒律が守られているんですわよ。」


「そんな馬鹿な!船が沈めば投資家は大損し、銀行も借金を回収できなくなるではないか。そのリスクを軽減するため高い利子が必要なのだ。これだけ散々「ドラゴン提督」に船を襲われても破綻しないものなのか。スペイ国の銀行にはどれだけ金があるのだ。」


「あちらは新大陸で大変儲かっているようですが、もちろん無限にお金はございませんわ。今回は、そのカラクリの種を仕入れてきたので、皆さんにご購入して頂きたいのですわ。」


「さっさとそのカラクリの種とやらを言え!内容もわからんものに金は払えんぞ。」

「あら、興味を持っていただけたようで嬉しいですわ。」

「早く言え。私の時間が「スぺイ国」の銀行にある金のように無限にあるとは思わぬことだ。」


「おほほ。そんなに大層な話ではないのですわ。利子のかわりに保険を売っているのですわ。」

「ふん、もったいぶって新しい商売の話をするかと思えば、保険なぞわが国でも扱っている。もちろん、今回の「ドラゴン提督」の航海にも銀行は私たちの利子から保険をかけておるよ。」


「えぇその通りですわ。「スペイ国」の銀行は戒律を守るために、高い利子をかけるのではなく自分たちが払う保険料を投資家に立替えてもらっているのですわ。」


「ただの言葉遊びだな。古い慣習にとらわれた国では航海をするにも誤魔化しが必要とは愚かなことだ。」


「おほほほ。ですので、わたくしも保険を販売しに来たのですわ。」

「む、新しい航路への投資でも強請りにきたのか?お前の話は一応利益がでるので聞いてやらんこともないぞ。」


「いいえ、「ドラゴン提督」閣下の今回の航海に対する保険ですわ。」

「ん?航海の資金は十分に溜まったから出港したのだぞ?第一、お前が口出しできる事業じゃないだろ。」


「私が販売するのは、「ドラゴン提督」の船が沈んだ場合に所定の金額が払われるだけの保険ですの。投資もしたかったのですが、もう出港してしまいましたでしょ?なので、保険だけ売ることにしましたの。おほほ。」


「話にならん。わが国では許可のない賭博は違法だ。」

「あら?私が売るのは保険ですわよ。」

「誰が信じるかそんなもの!」

「わたくしの「保険」が「保険」として販売できるように国に働きかけて欲しいのですが、、」

「政治家どもに言え、誰も聞かんぞ、そんな話。」


「困りましたわ。イギリ女王国にとって、とても良い保険だと思いましたのに、、」


「ん?国にとって?どういうことだ?」


「大したことじゃありませんわ。この保険がたくさん売れた状態で「ドラゴン提督」閣下の航海が失敗したら、「新生ハンザ同盟」は大損してしまいますでしょ?」


「お、おま、やはり脅迫ではないか!その「保険」とやらを買わねばどうなるというのだ!!」

「もちろん、何もおこりませんわ。私の限りある時間が無駄になるくらいですわ。」

「信じられるものか!このタイミングで、この話だぞ。船を襲われたくなければ「保険」を買えと言ってるようなものだ!」


「まぁ!なんて恐ろしい事をおっしゃいますの。「新生ハンザ同盟」は個人と組織の利益を守るための存在なのですわよ。そんな物騒な事できませんわ。」


「わかった。今回はその保険とやらを買ってやるが、こんなあくどい商売がいつまでもできると思うなよ。」


「あら、内容を確認しなくてもよろしいですの?」

「金は払うからもう勘弁してくれ。」


「お国のほうへの口添えは?」

「政治家に言えといったぞ。」




 イギリ女王国海軍の偉い軍人を見送ってハンザの女王は考える。


 今回の相手は失敗した。聞いたらヤバいと判断し、情報を聞くのを拒まれた。優秀だ。貴族主義者だと聞いていたので、もっと乗り気になるかと思った。むしろ、己の実力で今の地位を勝ち取った「ドラゴン提督」へ憧れを持つであろう若き軍人たちのほうが話が通りやすいのが気がかりだ。

 今回の計画の骨子は「イギリ女王国海軍」に「ドラゴン提督」を沈ませる事に意義がある。


 「イギリ女王国海軍」内に蔓延しているであろう「ドラゴン提督」への妬みを利用し、撃沈したときの利益を目の前にチラつかせる。もちろん、すぐには動かない。「できたらいいな」と思わせる。少しづつ、夢を現実に変えていく。

 「できたらいいな」を集めて「できるかもに」変えていく。


 女王陛下はともかく、政府首脳陣が私掠船に頼っている今の現状を良く思っていないのは把握している。海軍による統制体制の強化が行われるはずだ。「ドラゴン提督」が受章したのもその一環。使える私掠船は取り込み、指揮系統を一本化していく。

 組織の中で目立ちすぎる個は邪魔でしかない。女王国政府はどこかで「ドラゴン提督」に消えてもらわねばならない。組織の利益につながる形で行われるのが望ましい。そのための場を「新生ハンザ同盟」が整える。


 女王国中に「ドラゴン提督」が沈んだらお金を貰えるチケットをばらまく。いまはまだ、手元に届けるだけでいい。

 「できるかも」を「できる、けどやらない」に変えていく。


 今回の件で「新生ハンザ同盟」は損をしない。いまはまだ明かしてないが、このギャンブルの胴元は「スペイ国」王室だ。「ドラゴン提督」の船が沈んだ時の払戻金は「スペイ国」王室が払う。こちらを引きずり込むのには本当に苦労した。投資した分はすべて回収させてもらう。すべては難しいか。損しない程度に回収させてもらう。


 いまはまだ、「スペイ国」にとって払戻金は痛くもない額だろう。この程度の金額で長年苦しめられてきた「ドラゴン提督」が消えてくれるなら喜んで払うだろう。

 それでは駄目だ。「スペイ国」にとって痛い額まで跳ね上げる。

 少しづつカードをめくっていく。お互いの利益と不利益が綺麗に噛みあうように、「ドラゴン提督」を「スペイ国」が守り、「イギリ女王国」が狙う状況に持っていく。

 「できる、けどやらない」を「やらねばならぬ」に変えていく





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