80 ロアノーク島
北米大陸ノースカロライナ沖にある「アウターバンクス」は長大な砂州の連なりで、内側にパムリコ湾・アルベマール湾などがある。
「まるで天然の防波堤なのじゃ。」
「穏やかな内海は良い港になりそうだな。」
「のじゃ。妾の港を作ってやってもいいのじゃ。」
内海の調査と言う名の観光をしていると、ロアノーク島が見えてきた。
「あのロアノーク島がパムリコ湾とアルベマール湾の境界になっているのじゃ。」
「誰か人がいるようだぞ?」
「あの島は何年か前に植民が失敗したと聞いておるのじゃ。観光客かの?」
「こんな野生の肉食獣や凶悪な現地民のいる地域に観光客なんてこないぞ。」
「とりあえず話を聞いてみるのじゃ。上陸艇降ろせなのじゃ!!」
「ごぶー!!」
上陸して、一人でウロウロしてる西洋人の老人に話を聞いてみることにした。
「やい!貴様!俺様に話をしやがれ!!」
「何か探しているようじゃの。妾が力になれるかもしれないのじゃ。」
キョロキョロしていた老人は警戒しながら返事をした。
「何者だお前たちは?」
「俺様は俺様だ。」
「妾もいるのじゃ。」
「こんな野生の肉食獣や凶悪な現地民がいる島に何の用だ?」
「調査と言う名の観光なのじゃ。」
「このほぼ未開のロアノーク島に観光客なんぞ来るものか!」
「ふ、まだ見ぬ物を見るために、」
「妾が、」
「俺様が、」
「来たのじゃ!」「来てやったぜ!」
「ふん、誰だか知らんが儂は忙しいのだ。冷やかしなら他所でやってくれ。」
「妾達は世界を良くするために、善いことをして回っておるのじゃ。」
「暇なことだな。それがどうしたと言うのだ。」
「ご老体は何かお探しのようなのじゃ。」
「手伝ってやるから、さっさと事情を話やがれ。」
老人は草をかき分けたり、石をどけたりしていた手を止めて、少し考えた。
「女王陛下の許可を得てこの「カロライナ」を開拓するために基地を作る先遣隊が結成されたのだ。」
「これは長くなりそうだ。」「とりあえず聞くのじゃ。」
「儂は先遣隊の隊長としてこの地に赴任した。」
「先遣隊?」「一人しかいないのじゃ。」
「はじめは100人以上いたのだ。儂はこの地に骨を埋めるつもりだったから、結婚したばかりの跡継ぎの夫婦も連れてきた。」
「たしかに、ここには井戸や建物の跡があるのじゃ。」
「全てがうまくいったとは言えないが、なんとか形になってきた頃に、跡継ぎの夫婦の子供が産まれた。」
「そんな状況で子をなしたのか?」
「子供は授かりものなのじゃ。どんな状況でも祝福されるべきなのじゃ。」
「うむ、儂も妊娠を聞いたときはよく思わなんだが、産まれてきた孫を見た時に神に感謝した。この入植はきっとうまくいくと希望の光だと信じた。」
「その大人の浅はかさのツケを子供が払わねばいいがな。」
「くっ、、凶悪な現地民どもが我々の邪魔さえしなければ上手くいったはずなのだ。」
「何かあったようじゃの?」
「近くに住む現地民と揉め事が起きてな。先遣隊員に死人が出た。」
「ふむ。」
「その冬は食料の備蓄も危なかったこともあり、本国に救援を頼むために儂はロンドンに向ったのだが、、、」
その年は本国であるイギリ女王国の状況が大変悪く、先遣隊に対する援助を引き出すことはできなかった。それどころか、老人が再び新大陸のロアノーク島に向うための船を確保する事すら苦労した。さらに、やっと見つけた船も質の悪い船長のせいで、新大陸に到着することすらできなかった。
「3年後に儂がここに戻ってきた時には廃墟しかなかった。」
「なかなかハードなのをぶっ込んできたな。」
「もう少しハートフルな話がよかったのじゃ。」
「儂は孫を探している。邪魔をするなら何処かに行ってくれ。」
老人は周辺をひっくり返しながら、いなくなった孫を探し続けた。
「たぶん、草むらの中や石の下には赤ん坊はいないのじゃ。。」
「ならば、どこにいると言うのだ!!原住民の腹の中か!?」
「お、落ち着くのじゃ。とりあえず、落ち着くのじゃ。」
「原住民に聞いてみたらどうだ。近くに住んでいるのだろ?」
「きっとあいつらが、先遣隊に何かしたに決まってる!!儂に力があれば、、、」
老人は力なく落ち込んでいたが、何かに気付いた。
「そうだ!お前たち腕っぷしが強そうだ。あそこに住んでる原住民どもを滅ぼして、孫たちの仇をとってくれまいか?」
「お、落ち着くのじゃ。とりあえず、落ち着くのじゃ。」
「捜査の基本は情報収取だぜ。」
「情報は大事なのじゃ。お孫さんの服装と髪型を言うのじゃ。」
「ふん!かわいい服装とかわいい髪型だったとおもう。」
「何もわからんのじゃ。」
「歳をとると解像度が低くなるからな。」
「儂が最後に会ったのは何年も前の事だ!わかるわけがなかろう!!」
「さいきんのハイテク捜査には「ディープランニング」という手法があるのじゃ。少ない情報からAIが現在の姿を予想してくれるのじゃ。」
「、、髪の色はイギリ女王国によくいる赤みのかかったかわいい金髪で、肌は雪のように白いかわいい肌だった。」
「ふむふむなのじゃ。」
「儂が誕生の記念に贈った猫さんのメダルを気に入っておった。」
「猫さんw」
「それらのデータを纏めてわかったことがあるのじゃ。」
「なに!本当か!」
「「ディープランニング」すごいな。」
「少なくとも赤ん坊は草むらの中や、石の下にはいないのじゃ。」
「何もわかってないではないか!怒怒怒!!」
「ま、まぁ、落ち着くのじゃ。入力したデータの数が少なかったのじゃ。」
「やはり、入力する情報を増やすために聞き取りが必要だな。」
「消えた赤子の行方を追うために、現地民から聞き取り調査を行うのじゃ!!」
「気は進まんが「ディープランニング」の為なら仕方なかろう!」
近くに住んでる現地民の集落にやってきた。
「消えた住人の謎を解き明かすため、」
「妾が、」
「俺様が、」
「来たのじゃ!」「来てやったぜ!」
「ナンダお前たちは?」
「俺様は俺様だ。」
「そなたたちに少々聞きたいことがあるのじゃ。」
友好的な現地民に何年か前に行方不明になった先遣隊の事を聞いてみた。
「ソノモノ達の事は覚えている。何度も作物の窃盗や、略奪行為があって困ってイタ。」
「だから先遣隊員を殺したのか?」
「ナカマが襲われたので反撃はしたが死人がでたとは聞いてナイ。」
「嘘だ!儂の先遣隊員が一人死んだぞ!」
「オタガイに武器を持っていたノダ。当たりどころが悪ければ後から亡くなることもあるだろウ。」
「やっぱりお前たちが殺したのだ!イギリ女王国から正式な許可を受けた正式な先遣隊員を殺した殺人者どもめ!!」
「あーあー。この老人のことは気にしなくていいのじゃ。老人特有のアレなのじゃ。」
「アレならば仕方ないナ。ワガ部族でも歳をとったらアレする老人はイル。」
「理解を得られてよかったぜ。」
「ネンの為に言っておくガ、ワガ部族は遥か昔からこの島に住んでイタ。ウミの向こうから人々が来た時モ、こちらから攻撃を仕掛けたことは無イ。ムシロ、食料を分けてヤッタ。」
「そんなとこじゃと思ったいたのじゃ。」
「新大陸中で見た聞いた景色だ。」
「儂の探検隊はイギリ女王陛下と教会から正式な許可を受けているんだぞ!!」
「はいはい、お老体。お昼ご飯はもう食べたのじゃ。」
「むこうでオヤツでも食べてな。」
老人を向こうに追いやった。
「オマエ達は他の海の向こうから来た人々と違うようダ。」
「海の向こうの人の中にも色んな人がいるのじゃ。」
「残念なことに、お前たちの土地に来たがる奴らはろくでなしが多いがな。」
「フム、我ら「海を見るカモメの部族」の中にも色んな奴はイル。」
「妾は悪い一人を見て「海を見るカモメの部族」全員を悪く思う事はないのじゃ。」
「ナルホドな。」
「先遣隊は結局どうなったのじゃ?」
「ナン年か前に出て行ッタ。ダイブ貧窮している様子だっタナ。」
「自分たちで出て行ったのか、、その中に赤ん坊はいなかったか?」
「サぁ、どうだろウ。」
そこに近くで興味深げに話を聞いていた現地人の女が来た。
「アタシは覚えてるよ、ママに抱かれてよく泣く子ダッタ。」
「手がかりがあったのじゃ!赤みのかかったカワイイ金髪で雪のように白いカワイイ肌をした赤子だったかの?」
「ソコまで近くで見ていないけど、アイツラの中に子供はその子だけだっタヨ。」
「猫さんのコインを持っていたかの?」
「猫ってなにサ?」
「ニャーって鳴く動物なのじゃ。」
「アァ、カモメに似ている奴ダナ。鳥は連れていなかっタヨ。」
「彼らは何処に向ったのじゃ?」
「ヤツラが向かった先はわからんガ、「ニュース川」を遡った先に「回転するワニの部族」が開いている取引場所がアル。ソコニいけば何かしらの情報が得られるダロウ。」
「ありがとうなのじゃ。行ってみるのじゃ。」
「邪魔したな。あばよ。」
船に戻って「ニュース川」を遡上することにした。
「なぜ、下賤な現地民などの下手にでないといけないんだ!?この船と武装があれば、簡単に制圧できただろうに!」
「自分の船を手に入れてから言うのじゃ。」
「斬るか?」
「がははは。その老人の言う通り、現地民は非文明的で野蛮だ。名門貴族の威光で照らしてやらねばなるまい。」
「な!?スペイ人!!この船は「スペイ国」の船だったのか!騙したな!!」
「この船は「スペイ国」の船ではないのじゃ。」
「儂が先遣隊救援に遅れたのは「スペイ国」の私掠船が邪魔をしたからだ!お前たちさえいなければ、今頃ロアノーク島の開拓拠点で孫と暮らしておったはずだ。」
「バウィ、「スペイ国」がなければ、我々「フラン国」が新大陸の覇権をとれていたかもしれません。」
「フラン語?この船は「フラン国」の船なのか?」
「自分は「イタリ都市国家」のシラクサからきたっす。この船には色んな国の人が乗ってるっす。」
「ごぶ。」
「あいにくと「イギリ女王国」の人間は乗ってないのじゃ。」
すると一人の男が手をあげた。
「私は一応、「イギリ女王国領」出身です。」
「のじゃ!誰なのじゃ!?」
「俺様も知らないぞ!!」
「「バハマ」から乗っているカジノのオーナーです。。」(74話参照)
「没個性は罪なのじゃ。」
「次の台詞はマカオまで無いな。」
「この船では栄光ある「イギリ女王国連邦」が低く見られているようだな!けしからん!!」
「「イギリ女王国」も「現地民」も同じで、集団につけた名前なのじゃ。」
「同じなわけがあるものか!!」
「この赤子を巡る旅の中で、そなたもきっと知るのじゃ。集団の中で個人がどう生きるかが大事だという事を。」
「私もこの船でカジノの元オーナー以外の個性を探します。」
偏屈な老人を乗せて、船の旅は続いていくのであった。




