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8 モナコ 大公爵主催大レース

 モナ公国はフラン王国南部の地中海沿岸部にある世界で2番目に小さな主権国。

 所得税がなく、法人税も安い為、租税回避地として有名。比較的治安が安定していて、合法カジノと観光資源に富裕層が集まる。



 ギャンブル狂いのおっさんの大会の日をむかえた。


 おっさんが変にこだわり過ぎたせいで船の整備に時間がかかり「大会の日は過ぎたので、行っても意味がない」などと日酔った事を言ってたが、諦めずに来てみたら、大会に間に合った。


「ギャンブルはギャンブルでも船に乗る方だとは恐れ入ったぜ」

「出場選手は舟券買えないから、身を崩さないのじゃ。安心なのじゃ。」


「始めは緊張の為か困惑してたけど、ペラをたたき始めたあたりから空気変わったな。」

「いいエンジン引き当てたと喜んでたのじゃ」





 俺はスぺイ国の沖にあるマルヨカ島で船大工を生業にしていた。

 俺は、昔から船が大好きだ。船が好きすぎて、妻よりも船が好きで、連れ合いに婚姻破棄されたこともあるくらいの船好きだ。

 俺がモナコで数年に一度開催される造船技術の展示会にいつか行ってみたいと思っていると、娘が変な二人組を連れてきて、連れていかれた!?

 残念ながらやむにやまれぬ事情があって、今回の展示会には間に合わなかったが、変な二人組は俺を競艇の大会に出場登録していた!?


 船の操縦などはほぼ素人なので、レースにならないと危惧していたが、競艇という競技は出場選手の技術者としての腕前も試されるらしい。

 俺は与えられた機会と機械に感謝し、長年培ってきた船大工としての腕を試してみることにした。




 晴れ渡る海の波が穏やかな今日の日に、僕たち私たちはスタート位置に就くことができました。

 僕たちがこの場所につくことができたのは、レースの主催者である公国の関係者の先生がた。暖かく見守ってくれた父兄のかたがた。いままで、伝統あるレースを護り高めてきた先輩方。そして、僕たち私達とともにピットを離れた選手の仲間たち。

 いま、待機水面は開始されるスタートの期待に大きく波打っています。

 観覧者の皆さん、これから僕たち私たちの繰り広げる2分間をどうかあたたかく見守りください。




 6号艇の船大工はボートレースを見たことさえなかったので、5号艇の下手糞について行く事にした。

 みんなでお行儀よく1号艇の貴族の息子について行くと、2号艇の元軍人が大きく行列から離れた。そういうのもありなのかと感心したが、なにぶん素人なのでここでの作法がわからぬと、目立たず静かについて行くことにした。

 2号艇の元軍人以外の5艇が待機場所?につき、6号艇の船大工がほっと一安心していると、他の選手がなんとスタートラインに向って全速で艇を進め始めたのだ。

 6号艇の船大工はわけもわからぬまま、5号艇の下手糞についていった。



 5号艇の下手糞はこの世界で選手登録している全選手の中で下から2番目のレートの低い下手糞な選手だった。

 号艇番号はレート順にきまるので、いつもどのレースでも6号艇に乗っていたので、今日は初5号艇乗艇記念日だ。

 6号艇の船大工を「こいつが噂の世界で一番レートが低い選手か」と得意気に見下しながら、4号艇の貴族の取り巻きについて行くのだった。



 4号艇の貴族の取り巻きはイタリア側ターンマークを少し不利な艇勢でまわった。

 今回のレースにはガッツリ利権が絡んでいるので、確実に1号艇の貴族の息子を勝利させるために、何かと貴族の威光を軽視する2号艇の元軍人をブロックしないといけない。

 艇の引きが悪く乗艇機の性能では負けているようだが、貴族の息子のコネを最大限に利用し数々の工作を駆使したこのレースで負ければ自分の将来のキャリアが危ない。

 不安に胸をおさえながら3号艇の貴族の懐刀について行くのだった。



 3号艇の貴族の懐刀がフランス側ターンマークを回った時に、6号艇の船大工が大きく遅れているのがみえた。

 貴族の息子の父親のコネを使って、無理矢理このレースに素人をねじ込んだのが功を奏したのだ。

 懸念材料だった2号艇の元軍人は4号艇の貴族の取り巻きが良く抑えている。

 このレースで貴族の息子を勝利させる事によって貴族の息子の父親から大きな報酬が期待される事となるだろう。これで、私は大金持ちだ!。

 まだ見ぬ未来を夢見て1号艇の貴族の息子について行くのだった。



 2号艇の元軍人が2回目のイタリア側ターンマークを周りながら、4号艇の貴族のとりまきと3号艇の貴族の懐刀を抜き去り、1号艇の貴族の息子の背中を見た。

 1号艇の貴族の息子に妻を奪われ、妹を奪われ、母を奪われ、幼馴染を奪われた悲しい過去がある。

 次のフランス側ターンマークで永きに渡るふたりの因縁に決着をつけるのだ。

 手に汗を握りながら1号艇の貴族の息子について行くのだった。



 1号艇の貴族の息子は奇跡の旋回をフランス側ターンマークできめた時に勝利を確信した。今度こそ、2号艇の元軍人が飼っているインコのピーちゃんを自分のモノにできるぞ。

 2号艇の元軍人がピーちゃんのかわりに自分の周りの女どもを差し出すたびに、貴族の息子は悔しい思いをしていたのだ。もう2号艇の元軍人の周りに女はいない。元婚約者は関係が遠すぎてピーちゃんのかわりにはならない。させない。


 ふと、1号艇の貴族の息子が誰もいないはずの前方をみると、そこには6号艇の船大工の大きな背中があったのだった。



 このレースは周回遅れが他のボートの正常な航走を妨げたため、「失格」及び「レース不成立」となったのじゃ。



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