76 プエルトリコ
カリブ海デンマー国領「シャーロット・アマリ―」
バージン諸島セントトーマス島南岸に位置する。名前の由来はデンマークの王妃「シャルロット・アマーリエ」
「この辺りはいろんな国の領地あるのじゃ。」
「まるで、ヨーロピアの見本市だな。」
役所っぽい建物に着くと見知った顔がいた。
「あんたらもカリブ海まで来たんかぁ!」
「デンマー国の愉快で陽気なバイキングが、南の島にいるのじゃ。」
「貴様達も新大陸に入植するつもりか?」
「いんや。おら達はバイキングは新大陸で土を弄って生きていこうと思ってないだ。」
「ほぅ、それでは何故にカリブ海に?」
「スペイやポルトガの連中が無茶をしてな。新大陸は大変な人手不足なのさ。」
「雇った従業員に逃げられたのか?」
「妾のように組合員に理解ある経営者を目指すのじゃ。」
「そんで、人材派遣業みたいな事をやってんだわ。」
「若者達は新天地に夢を見るものだな。」
「ヨーロピアは既存の利権が硬化しておるのじゃ。」
「んだ。アフリカで人手を集めて新大陸で仕事を紹介すんだ。新大陸からはヨーロピアに砂糖や珈琲、綿花とかの作物を運び出す。んで、ヨーロピアから人集め用の資材をアフリカに運ぶんだべ。」
「三方ヨシだな。」
「必要な場所に必要なものを届ける仕事なのじゃ。」
「けんど、副業でやってる私掠船のほうが儲かるべ。」
「どこの海でもバイキングだな。」
「しっかし、困った事になってんだぁ。」
「それは困ったのじゃ。」
「困ったな。」
「ここの近くにプエルトリコ島っていうとてもとても略奪に向いた島があるんだわ。」
「聞いたことがあるのじゃ。とても美しい島で、新大陸開発初期からスペイ国の重要な拠点なのじゃ。」
「略奪に向いた?」
「アフリカから来る奴隷船や、メキシコから来る金銀を乗せた船が寄港する重要な港なのに、碌な防衛能力が無かったんだべ。」
「それは危機意識が足りないな。」
「そんれに、島内での食料自給を考えてたらしく、食える作物を育ててる裕福な農家が多いんだわ。」
「それはこの辺りでは珍しい統治体制なのじゃ。」
「んだんだ。そんで、ここいらの海賊はみんなその島を襲っておまんま食ってたわけよ。」
「穀物は海賊の為に育ててるのではないのじゃ。。」
「昔は島内で金まで掘れたらしくて、まさしく一石三鳥よ。」
「まるで、海賊に襲われるためにある島だな。」
「んだども、スペイ国の奴らが最近になって港に防壁を築いてな。略奪ができなくて困ってんだわ。」
「それは困るのじゃ。海賊が飢えるのじゃ。」
「飢えた無法者の群れは厄介だぜ。」
「おら達は人材派遣のあがりがあるけんど、他の奴らはの。。」
「妾に任せるのじゃ。」
「俺様に任せな。」
「おぉー!やってくれるだか?」
「貧窮した船乗りたちの現状を打破するために、「プエルトリコ」にむかうのじゃ!!」
カリブ海スペイ国領「サン・ファン」
カリブ海北東部にあるプエルトリコ島の中心的湾岸都市。名前はスペイン語で「聖ヨハネ」の意味をもつ。
~船上~
「美しい島なのじゃ。」
「まさしくカリブ海に隠された海賊の宝だな。」
「な、なぜか珈琲博士ですが、珈琲の生産はまだ島内消費レベルですが順調に進んでいると聞いています。」
「私がワイン博士ですが、この島の環境は「ワイン」製造に耐えると考えます。」
「家畜も数が揃っていると聞きます。新鮮な乳からヨーグルトが作れるでしょう。」
「がーははは。名門貴族の威光で照らすに相応しい島だ。」
「ドッグもあるな。」
「ぴー」
「ぴーちゃんは「南国特有の色鮮やかな鳥たちの気配を感じる。固有種もいるかもしれない。」と言ってる。」
「まさしく、妾の島にするのに相応しいのじゃ。」
「俺様の学校をつくるかな。」
そこに一隻のボートが近づいてきた。
「のじゃ、感慨に耽っていたのに港湾案内人かの?」
「もう少し、機微を察して欲しいな。」
「ようこそ、プエルトリコへ。3000円払ってください。」
「のじゃ!すごく無粋な事を言われたのじゃ!」
「なぜだかとても3000円払いたくないな。」
「払ってもらえないと困ります。3000円払ってください。」
「のじゃ。どうしても払わないとダメかの?」
「少し手持ちがな。。。」
「みなさんちゃんと払っていますよ。」
「そこをなんとかして欲しいのじゃ。」
「2400円じゃだめか?」
「ダメです。3000円払ってください。」
「仕方ないのじゃ。渋々、嫌々、仕方なく払うのじゃ。」
「幸先の悪い3000円だぜ。」
3000円を受け取ると小舟は去っていった。
しばらくすると、港湾案内人らしき船が来た。
「ようこそ!カリブ海の玄関口美しきプエルトリコへ。」
「うむ。正しき港湾案内人の口上なのじゃ。」
「プエルトリコに来た感じがして来たぜ。」
「ありがとうございます。さっさくですが入港税が1200円になります。」
「のじゃ!!入港税ならさっき払ったのじゃ。」
「3000円もとられたぜ?」
「あー。居るんですよねー。3000円払う人。」
「のじゃ?どういう事なのじゃ?」
「3000円おじさんは、ただ3000えん払ってくれって言ってるだけなんですよ。」
「3000円おじさん!?」
「最近多くて、こっちでも困ってるんですよ。」
「困ってるのは妾なのじゃ!」
「とはいえ、たった3000円ですからね。」
「3000円も!なのじゃ!!」
「港湾局としては、個人同士の問題なので何ともですね。」
「では、何か!妾は3000円おじさんに3000円!だまし取られたのじゃか!?」
「そーとも言いますね。」
「のじゃーー!!怒怒怒!」
「こうなったら!無理にでも接岸して3000円とり戻すのじゃ!」
「あー。居るんですねーそういう人。最近多いんですよー。」
「しかし、あの防壁が厄介だぜ?」
「そーなんですよー。あまりに多いので防壁建てちゃいましたー。」
「貫くのじゃ。」
「え?」
「妾達の輝かしき未来を阻む壁を螺旋の力で貫くのじゃ!!」
「ごぶー!!」(総員衝角戦用意!!)
「ふ、熱くなって来たぜ。」
「風向きが悪いのじゃ!櫂も出すのじゃ!」
「そー簡単に、あの壁が貫けますかね?」
「貫けるのです。」
「おや?貴方は。。」
「そうです。私がワイン博士です。暑い日差しが続く夏の日に、成熟した「ブドウ」が皮を破り実が飛び出すこともあるのです。」
「ぼ、ぼくはなぜか珈琲博士ですが、珈琲はすごいですよ。弾けますからね!!」
「がーーはっはははっは!!名門貴族の矜持が試される時が来たのだ!」
『一応、私たちはプエルトリコと同じスペイ国の軍人なのですが?』
「俺もいるぜ。」「私も、」「モイオシ、」「俺も」
「ぴー」
「ぴーちゃんは「みんなの魂が燃えている、この熱気ならあるいは、、」と言っている。」
「わーすごいですね。でもプエルトリコの防壁はこんなものではくだけませーーん!」
特殊な金属で加工した俺様の船のドリルの先端は、プエルトリコの防壁の表面の塗装を削るのみで、内部に侵入していかない。
「圧力が足らぬのじゃ!船を壁に密着させるのじゃ!!」
「ダメだ!風が弱すぎる。。キャラベル船の三角帆では出力が足りない。。」
「ならば、我らがその追い風になりましょうぞ!!」
そこには「国境なき騎士団」が勢揃いしていた。
「窮地にあった我らを救ってくれた戦友の為、騎士団一同馳せ参じましたぞ!!」
「「国境なき騎士団」来てくれたのか!?」
「船上にて口上は無粋、我らはただ突撃するのみ!チャージ!!チャーーージ!!!」
「もつろん、おら達もいるべ」
「陽気で愉快なバイキングなのじゃ!!」
「フラン国カリブ海派遣隊もきたぜ。」「クインズネービーィもいるぞ。」
「世界最強「バルチック艦隊」は、無敵艦隊などと名乗る輩を粉砕するのだ!」
「オラン国も一応きてます。」
「みんなが来たのじゃ!妾達がカリブ海で絆を紡いできたみんなが!!」
「逃げた名門貴族を追って「スペイ国海軍」を名乗る、実質はただのゴロツキも来たぜ。」
「ナッソーのカジノから借金取りも来ました。」
「なんか、楽しそうなので来ました。」
「祭りか?カリブの海のお祭りか?」
「みんなで妾の船を押すのじゃ!!」
「押せばいいのか?」「押すぜ!」
「いくらでも押します」「押すのは任せろ!」
「くーぅ。このままではプエルトリコの防壁が貫かれてしまいますー!」
「新世界と旧世界を阻む、世界の未来を塞ぐ壁を貫くのじゃー!!」
カリブ中の船乗りたちが俺様の船を押す。
はじめは小さく表面を削るだけだったドリルの先端は、すこしづつ壁の内側へとねじり込まれてゆく。
壁にヒビがはいる。その小さなヒビは瞬く間に広がっていく。人々の思いが、人のふれ合いを通じて世に届いていくように。
誰にも聞こえなかった粉砕音はいつの間にか、みんなの耳に届くようになった。
その場にいる全ての人の心が一つになる。
そして、壁は砕かれた。
その日、新世界において人類はひとつの殻を破った。
この小さな事件が、人類全体の未来に大きな傷跡を残すことになる事を、今は誰も知らない。ただ開いた、開かれた未来の希望と富と栄誉に人々は殺到するのであった。




