6 パルマ
リスボンの大層立派な教会付きの孤児院
「飲んだからないのじゃ。」
「院長先生もよくなってよかったな。」
「いまは特に流行の風はふいてないの。。」
「困ったのじゃ。おつかいクエストないのじゃ。」
「なぁ、この子を船員に雇わないか?」
「街に出て、どこかの何かを持ってこいを探すのじゃ。」
私が住んでいる孤児院に少し前から、変な二人組が来るようになった。
院長先生もはじめはかなり警戒していたけど、ふたりは毎回よくわからない事を言って、たくさんの食料と、お菓子と、玩具を置いていく。異国の人らしく言ってることがよくわからないけど、きっと良い人たちだと思う。
前回来た時に、院長先生がお貴族様からの無理難題で対応できなかったので、かわりに私が対応した。二人は街の噂話の情報を教えてあげると喜ぶらしいのだけど、そのときの私には彼らが喜びそうないい情報がなかった。
だから、院長先生が貴族に持ってこいと言われて困っていたボルドーのワインを二人におねだりしてしまった。
他人に物を強請るような事をしては行けないと院長先生に叱られた。
次に来た時に、二人に謝らないといけないと悲しい気持ちでふたりが帰ってくるのを待っていたのだけど、ふたりは、ボルドーのワインを手に入れることに失敗したみたいだ。ほっとした。
かわり、珍しいシャトーのワイン?を持ってきて、そのおかげで院長先生は貴族の勘気を免れることができた。
リスボンの街
「ポルトガルワインの歴史は古く、紀元前2000年にはワイン作りが行われていました。リスボン近郊のワインはリスボアと呼び、9つの組合からなる多彩な味わいのワインたちが、私たちの眼と鼻と舌を喜ばせるのです。
「またでたのじゃ。」
「そうです。私がワイン博士です。」
「こんどは何に困ったんだ?」
「もう知識チートはしないのじゃ。世界観こわれるのじゃ。」、
「実は、ローマで開催されるワイン学会に行くために船を探しているのです。」
「渡りに船だぜ」
「ローマをめざすのじゃ!!」
ジブラルタル海峡
「良い風なのじゃ。」
「南スペインでは輸出用に酒精の高いワインが生産されています。」
「スペイン国内で一度寄港したいところだな。」
「バレンシアかバルセロナじゃな。」
「確かにバレンシアのワインも、バルセロナのあるカルターニャのワインもなかなか良いですが、とくにプリオラートは絶品でぜひともご賞味いただきたいのですが、今回は、私のワイン棚には隠し棚があります。」
「のじゃ?」
「ん?」
「失礼、ワイン通の間でよく使われる、腹案があるの言い回しです。」
「早く言えよ。」
「いうのじゃ」
「パルマ・デ・マヨルカに行くのです!!」
スペイ王国バレアレス諸島マヨルカ島パルマ
パルマはイタリアにも同名の都市があり、むしろ一般的な人名であることから、この都市の事は「パルマ・デ・マヨルカ」とよぶ。
「島ってテンション上がるよな」
「響きがいいのじゃ」
「この小さな大陸を出たがってる若者を探すのじゃ。」
「両親と反目しあってるけど、実はお互い思い合っている奴な。」
「遠ざかる船と涙の別れが映えるのじゃ。」
するとまるで、髪結いになるためのバルセロナにある専門学校に行くのを親に反対されて飛び出してきたかのような少女が飛び出してきた。
「父さんのばか!もうしらない!」
「先のある投資に理解のない大人はダメなのじゃ。」
「あんたがツラいバイトして溜めた金はあんたのために使いな。」
「え、え、あなたたちはなんですか?」
よくよく話を聞いてみると、少女の父親は若い時からギャンブル狂いで、ギャンブルで大きな借金をして実家を追い出され、ギャンブルで大きな借金をして妻に逃げられ、ギャンブルで大きな借金をして、少女がツラいバイトして溜めた、弟の給食費を使い込んだのだった。
「そなたには用はなかったのじゃ。さよならじゃ。」
「もう2度と会うことは無いだろう。」
「待ってください。もうすぐモナコで大きな大会が開催されるのです。父さんを連れて行ってあげてください。」
「お断りなのじゃ!他あたるのじゃ!」
「悪いな、俺様の船は3人乗りなんだ」
私の父は腕の良い船大工だ。たぶん、このパルマで一番腕がいいと思う。でも、職人気質すぎて雇い主とよく喧嘩する。
若いころに、当時最先端の技術を導入しようとし、生家の船工房の親方である私の祖父と仲たがいして飛び出した。
腕がよかったので、すぐに次の工房の仕事にありつけたが、最先端の技術を導入しようとして、私の母の父である親方でもある私の祖父と仲たがいして飛び出した。
そして、今回、弟の給食費でプラモデルを買った。
そんなどうしようもない父だが、私は父の船を語るときの熱っぽい視線が大好きだった。
モナコで行われる船大工の大会で優勝すれば、きっと父の腕の良さを世間が認めてくれるはずだ。父の夢をかなえてほしい。
今日、私の前に変な二人が急に現れた。なんと、ふたりは父さんをモナコに連れて行ってくれると言うのだ。きっと、天使様に違いない。
マヨルカのただでさえ熱い太陽が、ジリジリと照りつけるに熱い日に父さんはこの小さな大陸を旅立った。
私は出航する船を見送りながら、「天使様、どうか、私の想いと、父さんの夢を運んでください。地中海の風に乗せて。」と、願った。
「すごい押しの強い娘だったのじゃ。」
「断りきれなかったな。」
「すまんな。」




