54 クレタ島
回教帝国エジプ州都市「アレクサンドリア」
地中海沿岸アフリカ大陸の北東端に位置し、スエズ回廊でアラビア半島さらにさきのユーラシア大陸へと繋がる交通の要所。紀元前3世紀に作られ世界7大不思議のひとつである「ファロス大灯台」は地震で崩壊したため跡地が「ファロス大要塞」になっている。
「歩いてきたのじゃ。」
「ラクダにも乗ったがな。」
「皆さん、お久しぶりです。」
新しい船の前に「大ロシヤ大正教」の若き司祭がいたのです。
「石を投げるのが得意な若き司祭なのじゃ。」
「みなさんが勝手にいなくなったので、ひとりで回教帝国内の大主教庁を回ってましたよ。」
「すまんな。ワイン博士のいつものあれでな。」
「アレなら仕方ありませんね。」
「ところで、お腹が膨らんでいるようですが、、」
「ふ、これはドラコだ。」
「。」
「ドラコですか?聖伝にも記載がありませんね。」
「ドラコは竜なのじゃ。」
「竜!それはすごい!!」
「まだ卵なので育ったら背中に乗せてやろう。」
「それは楽しみです。ハリストスの恩恵がありますように。」
聞いたところによると、「大ロシヤ大正教」の若き司祭は地中海東での仕事を終えたので大ロシヤ大帝国のサンクトペテルブルクに帰る船を探していた。
「バルト海の「リューベック」までなら送れるのじゃ。」
「それがですね。一度モスクワに行きたいので、黒海の「オデッサ」まででいいのですが。。」
「悪いな、急ぐ身でな。」
「「リューベック」にいる、「ハンザの女王」に会わないといけないのじゃ。」
「黒海は「トルク国」の奥にあるからかなり遠回りになるな。」
「「ハンザの女王」ならたぶん黒海の「セバストポリ」にいますよ?」
「なんと!?」
「セバストポリ」がある「ウクライ国」は大ロシヤ大帝国とのあいだに問題を抱えており、問題があるなら「ハンザの女王」がいるだろうとの事だった。
「嫌な予感しかせぬのじゃが、行くしかないのじゃ。」
「最悪ドラコだけは守らないとな。」
「僕はオデッサで降ろしてもらえれば幸いです。」
「錨をあげるのじゃ!北を目指すのじゃ!!」
「ごぶー!!」
~洋上~
「警察に追われてもいないのにバタバタと出発してしまったのじゃ。」
「由々しき事態なのです。」
「む、そなたは!?」
「そうです。私がワイン博士です。」
「何か問題があるのか?」
「私が注文する時に、特注で作らせた特別なワイン保管室にワインが収まっていないのです。もちろん、隠しワインセラーにもです。」
「回教帝国は宗教上の理由でお酒を禁じておるのじゃ。」
「しばらく我慢するんだな。」
「私が「アレクサンドリア」の闇取引所で仕入れてきた「ワイン」だけでは到底足りないのです。」
「こやつがおるから、毎回警察に追われているのじゃ。」
「斬るか?」
「刻む。」
「のじゃ!!ギャンブル狂いのおっさんが物騒な事を言い出したのじゃ。」
「違う。距離だ。」
「首か?」
「ぴー」
「ぴーちゃんは、「始めての船で、はじめての航海なんだから、短めのにしといたほうがいいわよ。」と言っている。」
「ぴーちゃんがオネエみたいな口調になったのじゃ!!」
「ドラコも淑女の言葉づかいを覚えるべきだな。」
「。」
近くの港に寄港することになった。
地中海クレタ島都市国家ヴェネツィア傘下都市「イラクリオン」
クレタ島北部クレタ海に面している。ミノア文明の遺跡「クノッサス宮殿」が近くにある。
「クレタ島では古くからワインの栽培が行われ歴史ある固有種が栽培されており、主に辛口の白ワインが人気を得ているのです。。」
「懐かしい感じだな。」
「そうです。私がワイン博士です。」
「この強引さを見習うのだな。」
「ぼ、僕はなぜか珈琲博士です。クレタの珈琲について調べたのですが、あいにくギリシャ珈琲に関する記述しかなく、、、」
「この先は厳しいかもしれないのじゃ。」
「俺様の村で珈琲の栽培でもさせとくべきだったか。」
「で、でも、クレタ島の人達が世界で一番オリーブオイルを飲んでいます。」
「なんと!?エクストラバージンオリーブオイルか?」
「?、そ、それは何ですか?」
「ダメだな。」
「ダメなのじゃ。。」
「聖伝には「ワイン」も「オリーブ」もありますが、「珈琲」の記載は見当たりません。」
「むろんコーランにも載ってないのじゃ。」
「ぼ、僕は、、ぼくは、、、、」
逃げ出した珈琲博士は海を見ていた。
「や、やっぱり十字教の世界では回教徒は差別されるんだ。。珈琲豆が選別されるように。。。なんてね。。。」
そこに、クレタの女がきた。
「あなた、外からきたのね?」
「き、君は?」
「私はクレタの女よ。」
「ねぇ、外の話を聞かせてよ。」
「ぼ、僕は、僕に出来るのは、珈琲の話だけなんだ。」
「へー。あなた珈琲に詳しいのね。」
「ぼ、ぼくはなぜか珈琲博士です。」
「なぜか?私には立派な珈琲博士にみえるわ。」
「ぼ、僕には珈琲しかないのに、聖書には珈琲の事が載ってないんだ。」
「それで泣いていたのね。」
「な、泣いてなんかいない!ドリップした時に雫が垂れただけだ。」
「ふふ、良いこと教えてあげる。」
「な、なんだい?」
「クレタの人は珈琲にオリーブオイルを入れるのよ。」
「っ!!そ、それはエクストラバージンかい?」
「もちろんエキストラバージンオリーブオイルよ。」
「あ、ありがとう。君のおかげで航海を続けられそうだ。本当にありがとう。」
さっきまで泣いていた珈琲博士は笑顔になって去っていった。
「、、、外の男はいつも私の前を通り過ぎてゆくのね。私はまるで珈琲カップに残った小さな砂糖の欠片。」
クレタの海をオリーブの香りにのった風が通り過ぎてゆくのであった。




