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53 スエズ



 回教帝国エジプ州「スエズ運河」建設予定地


「掘れども掘れども砂なのじゃ!」

「もう砂は飽きたな。」


 俺様達はヨーロピアに船で帰るため、建設中のスエズ運河に来ていた。

 物語の都合でいつ完成してもおかしくない状態だったため、少しでも開通を早めるためにみんなで工事を手伝っていた。


「普通は工事をしたら工賃が貰えるのではないのか?」

「たまに小麦粉を練って焼いたものをもってくるのじゃ。」

「清涼感のある葉っぱが入ったぬるい水も持ってくるな。」


「こ、こんなに暑い日はじっくりと水で出して氷を浮かべたアイス珈琲が飲みたくなりますね。ぼ、僕はなぜか珈琲博士です。」

「知ってる。」「知ってるのじゃ」


「ぴー」

「ぴーちゃんは「工事とは計画されて管理されて行われるものである。」と言っている。」

「ぴーちゃんは賢いけど、監督なんぞ見たことないのじゃ。」

「みんな勝手に来て、適当な場所を掘っているだけだな。」


「自分は楽しいっす。太陽の下で体を動かすのは最高っす。シラクサを思い出すっす。」


「、、、少し、他の人達に聞いてみるのじゃ。」



 少し離れた場所で適当に砂を掘ってる人に話しかけた。


「少し良いかの?」

「ん?お隣さんかい?何でも聞いてくれ。何でもだ。」

「なんでもは聞かんのじゃ。そなた何もしらんじゃろ?」

「俺はなんでも知ってるぜ。何でもさ。」

「それでは、この工事は誰が管理しとるのじゃ?」

「知らん。」


「給金はどこでもらえるのじゃ?」

「知らん。」


「適当に掘っておるが、ここを掘ってよいのか?」

「知らん。」


「そなたの父親の名前は?」

「知らん。」


「聞きたいことは以上なのじゃ。邪魔したのじゃ。」


「、、、こんな俺でも知ってる事があるぜ。」

「なんじゃ?」


「この運河が完成したら、たくさん船が来てアラビアは豊かになる。俺の子供たちが笑顔で生きていけるようになる。」


「、、、そなたの息子の名は?」

「知らん。」




 少し疲れたので俺様達の村に行ってみる事にした。


「妾の村が大きくなっているのじゃ。」

「俺様の村に畑もできているぜ。」


「土壌管理や灌漑工事、品種の研究、肥料の導入、試行錯誤の末、やっとこの砂しかない土地で「ブドウ」が実をつけるようになってきたのです。」

「お、おぬしは!?」

「そうです。私がワイン博士です。」


 懐かしい顔がいた。


「酸味もなく、甘みもなく、水分も少ない。シンプルな味わいと言えば聞こえはいいのですが、まだまだ求める品質にはほど遠いのです。ですが、確かに「ワイン」へと繋がる小さな一歩を少しづつ歩いているのです。」



「よぅ」

 そこにはマヨルカ出身のギャンブル狂いのおっさんがいた。


「ギャンブル狂いのおっさんもいたのか!?」

「見ろ。」

 そこには小さいけれど、風を受けて回転する風車があった。


「水をな。」

「彼が作った風車で水をくみあげているのです。サジ(涸れ川)の下に水脈があるのをみつけたのです。」

「少しな。」

「水量は少ないですが、この砂しかないアラビアでは貴重な飲める水です。貴重な「ワイン」を育てるのに適していると言えるのです。」


「妾の村が成長しておる。すごいのじゃ。みんなすごいのじゃ。」

「ワイン博士村はこれからもっとすごくなるのです。」

「俺のな。」




 お気に入りの婆さんのところに茶を飲みに来た。


「よく帰ってきたねぇ。」

「ただいまなのじゃ。」


「美味しい珈琲だねぇ。」

「エチオピア産なのじゃ。雑草を煮だしただけのお茶もどきとは違うのじゃ。」


「砂漠に生える草には砂漠に生える力があるんだよ。」

「ww」


「この村の人らも、肥料?というのを作るために、魚や貝を採るようになって豊かになったんだよ。」

「海賊も人様の役にたつようになったのじゃ。」


「いまでは、少ししか海賊しなくてようなったよ。」

「少しはしてるのじゃ!?」


「砂漠の草は砂漠の草。砂漠の人は砂漠の人なんだよ。」

「よくわからないのじゃ。むずかしいのじゃ。」


「たくさん悩んで、たくさん考えたらいいんだよ。」



「おい!また闇商人が変なトラブルの種を仕入れてきたぜ!!」

「そろそろ行くのじゃ。」

「また顔を見せにおいで。。」





「へへっ、困ったことになりやして、、」

「何があったのじゃ?」


「この村の産物を街に売りに行くために船を買ったんでさ。」

「それは、高かったじゃろ?」

「みんなで少しづつ出し合って、最新式の船を買ったんでさ。」

「少し?」



「ところでお腹が膨らんでるようですが、何か隠してやせんか?」

「これはドラコだな。」

「。」

「ドラコ?でやすか?」

「ドラゴンだ」

「そいつはすげーや。見せて頂いても?」

「良いだろう。とくと見るがいい。」


 俺様は丁重に包まれた腹帯の中から大事な大事な卵のドラコを取り出した。


「おー、これは立派な、、、植物の実だと思いやすが、、」

「ふ、知らぬだろうが、この世界には樹属性の竜もいるのだ。」

「あっしの知る限り、爬虫類であるドラゴンは植物とは根本的に違いやすが、、、」

「アフリカにも雪は降るのじゃ。」


「で、やっかい事だと聞いたが?」

「え、えぇ。へへっ、あっしの村の産物を街に売りに行くために船を買ったんでさ。」

「そういうのはいいから早く言え。」「言うのじゃ。」


「どこで間違えたか、注文した船がアレクサンドリアに納品されたんでさ。」


「それは困るのじゃ。スエズ運河が繋がってないから、地中海のアレクサンドリアに納品された船を紅海にある妾の村にもってこれないのじゃ。」

「このままでは、俺様の村人たちが出し合ったお金が無駄になってしまうな。」

「大変面目ねぇでさ。」


「妾にプランがあるのじゃ。」

「俺様にもいいアイデアがあるぜ。」


「船を交換するのじゃ。」「船を担いで運ぶのさ。」


「む!?」「のじゃ!?」




 30分くらい議論した。


「俺様のアイデアのほうがよかったが、今回は譲ろう。」

「50トンくらいあるしの。」

「本当に船を譲ってもらっていいんでさ?」

「困っている人を助けるのは妾の趣味みたいなものじゃ。」

「感謝は俺様の村人を笑顔にすることでかえすのだな。」


「かわりと言ってはなんなんじゃが、はるか南のアフリカ沖のさらに沖にあるモーリシャスというオランダが支配する島があっての。」

「へ、へい。」

「そこを妾の島にすることにしたから、ちょっと良い感じにしとくのじゃ。」

「へ、は?はぁ!?」

「俺様達はバルト海まで行ってくるから、帰ってくるまでに頼む。」

「へ??へへー?」


 こうして新たな船を手に入れて旅は続くのであった。


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