51 サラーラ
「砂しかないアラビアに帰ってきたのじゃ。」
「モガティッシュ」で知り合ったアラブ人の商人は、アラビア半島の南端にある「オーマ国」の商人だった。俺様達は彼に誘われて、「オーマ国」の港町「サラーラ」に来ていた。
オーマ国港町「サラーラ」
アラビア半島南端インド洋に面している。オーマ国には常に水の流れる川は一本もなく、モンスーンの時期になるとワジとよばれる涸れ川の周辺に緑が繁る。そこで採れる乳香はこの地方の特産品となっている。
「私達はこの砂しかない土地で商いをして生きてきたのです。」
「それは難儀なことだな。」
「サラーラ」の街はその規模に比べ、少し活気がないように感じた。
「西洋人の船の技術が上がり、彼らがアフリカから直接「インド」に行ける様になって、私たちの地に訪れる商人たちが減りました。」
「それは仕方のない事なのじゃ。」
アラブ商人は寂しそうに少し笑った。
「私たちは座して死を待つ事をよしとせず、商人が来るのを待つのでなく、自分たちで外に出て商売をすることにしたのです。」
「それは善いことなのじゃ。」
「ただ、」
アラブ商人の顔が曇る。
「ポルトガ国はいただけません。彼らは十字教以外を認めないのです。」
「のじゃ。。」
海に出たオーマの商人たちは、アフリカ大陸の南にある各国のインド貿易拠点に商機を求めたが、東アフリカで勢力を伸ばす「ポルトガ国」の古十字絶対主義者によって商売ができないでいた。
「奴らは世界中で迷惑をかけておるのじゃ。」
この時、俺様達は知る由もなかったが。新大陸はそれはそれは酷い事になっていた。
「このままでは、私たち「オーマ国」と「ポルトガ国」によからぬ事がおこるのは目に見えていますが、その前に「ポルトガ国」以外の西洋の方々と縁を紡ぎたかったのです。」
「尤もな話だな。」
「妾の仕事が東南アフリカにあるのじゃ。この海域に取引相手が増えるのは大歓迎なのじゃ。」
「それは重畳。これからもよろしくお願いします。」
お互い握手して会談は終わった。
この時、オーマ人が「ポルトガ国」だと思っている相手が国ではなくただの「古十字絶対主義者」達だと説明できていれば、後の不幸は回避できたかもしれない。
「この街の現状が貿易の中継地としての立場を失った先にある未来なのじゃ。」
「学校を作る予定のモーリシャスも同じになると?」
「そうならないために学校をつくるのじゃ。」
「あの商人は絶望的な状況のなかで上を向いていたな。」
「妾の子たちもそうあって欲しいものじゃ。」
「「乳香」でも買ってくか?」
「交易所を目指すのじゃ!」
ボスウェリアの樹から採取される樹液である「乳香」は砂漠地帯に適した植生から他の地方では栽培の難しい特産品である。
「「乳香」のような、ここだけでしか採れない特産品があればいいのじゃが。」
「バニラですら栽培方法が確立されたしな。」
「人の知恵はすごいのじゃ。」
「妾は「高度な技術を持った人」を特産品にするつもりじゃ。」
「奴隷商にでもなるつもりか?」
「奴隷じゃなくても売れるのじゃ。」
「ふむ。」
「雇用契約も取引じゃ。」
「俺様にお金が入ってこないぞ。」
「まず妾達が船乗りを必要としておるし、学校の入学希望者が増えれば授業料もとれるのじゃ。」
「それは、壮大な計画だな。」
「必ず成し遂げるのじゃ。」
「その為にまずは、、」
「スエズ運河を掘りに行くのじゃ!!」




