48 ポートルイス
オラン領モーリシャス首都「ポートルイス」
名前の由来はフラン国王「ルイ15世」にちなむ「ルイの港」。
「ここはオラン王国の領なのじゃ。」
「ほぅ。」
「隣のブルボンだかレユニオンだかボナパルトだか名前がころころ変わる島はフラン国の領なのじゃ。」
「ふむ。」
「「モザンビーク」がポルトガで、だいたいこの辺りから各国の船はインド洋を越えて、インドや東南アジアと貿易をしとるのじゃ。」
「アラビア海にはいかないのか?」
「回教帝国は関税がたかいのじゃ。」
「アフリカ大陸をぐるりと回らねばならんほどの関税か。」
「この島ではオランダ人の農場主が経営する農園で砂糖を作っているのじゃ。」
「ほぅ。こんなところまでご苦労様だな。」
「本人は本国でふんぞり返っておるのじゃ。」
「なるほど、金持ちが金持ちになるわけだな。」
「のじゃ。して、この島なのじゃが貿易の中継地と嗜好品である「砂糖」の生産がおもな産業なのじゃ。」
「ふむ。それで?」
「なんと、この島はこんなに豊かな島なのに自分たちの食べ物の生産をほとんどしとらん。」
「な、馬鹿な」
「もちろん砂糖農場の片隅で自家消費分くらいは作っておるじゃろうが、主に消費する食料は輸入に頼っておるのじゃ。」
「、、、」
「さらに、すぐそこのマダガスカル島では食料が余っているのじゃ。」
「マダガスカルからバナナをもってくるだけで一生稼げるな。」
「偉大な王が言っていたアフリカの人々に見せる「光」についていろいろ考えたのじゃ。」
「ふむ。」
「妾は自分達の食べる物を自分たちで作るべきと思うのじゃ。」
「農場でも作るのか?」
「学校を作るのじゃ。」
「続けろ。」
「ブエノスアイレスの孤児たちに船の乗り方を教える学校を作るのじゃ。」
「ふむ。」
「ここらは豊かな漁場なのじゃ。船を出せばいくらでも魚がとれる。」
「魚を買う人もいっぱいいるな。」
「マダガスカルや、アフリカ大陸の港へ食料を買い付けに行っても利益が出るのじゃ。」
「アラビアやインドに行ってもいいな。」
「妾たちがダメになっても操船技術をもてばどこでも食っていけるのじゃ。」
「時はまさに大航海時代だしな。」
「でも、妾達だけでは難しいのじゃ。」
「俺様は人に物を教えるのが苦手だ。」
「箱を用意するのが得意な人物に心当たりがあるのじゃ。」
「俺様にも良いプランがあるぜ。」
「リューベックの「ハンザの女王」に貸した物を取り立てに行くのじゃ!!」
「倍返しだ!」
「錨をあげるのじゃ!帆を貼るのじゃ!!」
「ごぶーー!!」(アイアイさー!!)
「進路北北西なのじゃ!!最大船速なのじゃ!」
「ごぶごぶ!!」(アイアイさ!!)
「とりあえず、モザンビークに行って情報を集めるのじゃ。」
「情報は大事だな。」
「自分は、モーリシャスの状況が理解できないっす。」
「ふむ。」「のじゃl」
「自分たちが食べる物を育てずに、砂糖を育てるなんて変っす。思えば、自分の故郷のシラクサも似たような状況でした。」
「シラクサのあるシチリア島はオリーブオイルとワインなのじゃ。モーリシャスより食料自給率はぜんぜん高いのじゃけど、構造は似たようなものなのじゃ。」
「地中海貿易の中継地でもあるしな。」
「高く売れる物をつくるのは当たり前の事だ。」
「けど、けど、それで腹を減らしていたら意味がないっすよ。」
「食べ物は商人から買えばいい。」
「そんなの何かあったら困るっす。」
「その何かを無くすためにも商人に来てもらわんといけないのじゃ。」
「ん?商人に来てもらうのは砂糖を高く売るためっすよね?」
「いや、そもそも「どこか」と「どこか」の貿易の中継地として商人が来ることが前提だろ。」
「シチリアもモーリシャスも始めは自分たちの食べる食料を作ってくらしていたのじゃ。」
「うむ。」「わかるっす。」
「そこに珍しい物を売りに商人は来ていたかもしれないのじゃが、概ね、自分たちの食べる分を適度に作っていたはずなのじゃ。」
「余っても仕方ないしな。」
「それなのじゃ。」
「どれさ?」
「商人が来るなら余った分を売れるのじゃ。」
「ふむ。」「当然のことっす。」
「農業が生きるための当たり前から金を稼ぐ手段に変わるのじゃ。」
「なるほど。」
「それで、お金を稼ぐために高い作物ばかり作るようになるっすね。」
「まだ、なのじゃ。」
「む?」「まだ?っすか。」
「人は馬鹿じゃないのじゃ。自分たちが食べるぶんの食べ物を作らないと何かあったら困ると誰でもわかるのじゃ。作った方が買うより安いしの。」」
「ふむ、ならばちょうどよくお金を稼いで、ちょうどよく食べれるな。」
「よかったっす。生産バランスの崩れた社会は産まれないっすね。」
「妾の旅の目的はいろんな場所に行き、いろんな物を見て、いろんな食べ物を食べる事なのじゃ。」
「む、話の流れが変わったか?」「楽しそうっす。」
「これは人間が「幸せ」に感じる事なのじゃ。」
「まぁ一部例外はありそうだが、概ねそうだろうな。」
「みんな旅行が好きっすもんね。」
「商人が来れば島から出ずに、いろんなものを見て、いろんな食べ物をたべれるのじゃ。」
「それはまぁ「幸せ」だな。」
「自分もたくさん商人にきてほしいっす。」
「島の人が商人に「高く売れる砂糖」は、商人にとっても島の外の人に「さらに高く売れる砂糖」なのじゃ。」
「商人をよんで「幸せ」になるためには砂糖をいっぱい作らないといけないっすね。麦はあまり売れないから作らなくていいっす。」
「まて、腹いっぱい食べれないのは「不幸せ」だぞ。」
「商人にとって、島の外では安い麦を島の人が高く買ってくれる事は、島に来る大きな理由になるのじゃ。」
「商人がきて、麦を買えて、砂糖も売れるっす。「幸せ」っす。」
「島の立地が貿易の中継にちょうど良い場所だったなら、次々と商人が勝手にきてくれるのじゃ。」
「次々と勝手に幸せになれるっす。善いことっす。」
「ここで大事なのは、ただの貿易の中継地ではなく「砂糖」と「食料」の売買が成立する場所である事なのじゃ。」
「マダガスカルは、島民にとって「珍しい物」を買って、商人にとっての「珍しい物」を売る場所だったな。」
「貿易の中継地としては優れているマダガスカルじゃが、シチリアやモーリシャスのように自分たちの食べ物を輸入に頼るようにはなっていないのじゃ。」
「マダガスカルの人は「不幸せ」だったっすか。」
「そうは見えなかったけどな。」
「話は変わるのじゃが、砂糖ばかり作っていたら、自分達の食べ物がなくなって困るのじゃ。」
「ん?商人から買えばいいぞ。」
「勝手にいっぱい商人くるっすよ?」
「のじゃ!不作になったらどうするのじゃ!?国際情勢の変化で主要交易路から外れたらどうするのじゃ!?」
「そ、それは、困るっす。やっぱり、麦も育てるっす。」
「バナナを食えばいいだろう。」
「バナナの樹は全部切って砂糖畑にかえたのじゃ。」
「そのうち生えてくるさ。」
「でも、大丈夫なのじゃ。ハリケーンで滅茶苦茶になったとしても、残るものがあるのじゃ。」
「そ、それは!?」
「「土地」なのじゃ。砂糖畑を売ればいいのじゃ」
「一安心っすね。」
「仕事がなくなるぞ。」
「強欲な西洋人の農場主に雇ってもらえばいいのじゃ。」
「一安心っす?」
「このようにして、シチリアやモーリシャスのような状況ができるのじゃ。」
「それで?」
「のじゃ。それでとは?」
「西洋列強による植民地支配が悪いことだからやめろとでもいうのか?」
「いや、善いことなのじゃ。」
「む。」
「人が集まり、物が集まり、競い合ってより善き社会を作る努力をしていくのは善いことなのじゃ。」
「自分はよくわからないっす。」
「妾も未来の子供たちにとっての良いことが何かはわらかんのじゃ。」
「む?」
「腹いっぱいに飯を食べて笑顔になったら、あとは未来の子供が大人になった時に自分で考ればいいのじゃ。」
「無責任だな。」
「船乗りは風まかせなのじゃ。」




