46 ヨハネスブルク
ズール国首都「ウルンディ」
若くして近隣の部族をまとめ上げた偉大なる王が築いた都。ズール族の言葉で「高い場所」の意味を持つ。
「偉大な王宮についてからずっとやっておるのじゃ。」
「かれこれ2時間近くたちますね、」
俺様と偉大な王は出会った瞬間に相撲をはじめ、勝負のつくことなく永遠と相撲をしていた。
「始めはちゃんと見たのじゃ。もう飽きたのじゃ。」
「神聖なお立合いですよ。」
「自分はためになるっす。ずっと見ていたいっす。」
俺様以外は偉大な王の何番目かの妃の接待を受けていた。
「ここ最近、偉大な王は難しい顔ばかりしていたので、あんなに楽しそうなのは久しぶりです。」
「あれが楽しそうなのじゃ?」
「自分は楽しいっす。ワクワクするっす。」
「確かに、なかなかの強者なのじゃ。」
「お連れ様もなかなかですよ。」
俺様の戦いは始まったばかりだった。
「さぁ二人はほっといて、お食事にしましょう。」
「おぉ、かたじけないのじゃ。」
「地元でとれた食材です。たんとお召し上がりください。」
「ほぉ、トウモロコシが多いようじゃの。」
「はい。私たちの畑では主にトウモロコシを育ててます。」
「トウモロコシは新大陸が発見され、南米から渡ってきたのじゃ。その前は何を食べておったのじゃ?」
「はて、私の産まれた時からトウモロコシを食べておりましたので、、」
「トウモロコシは美味しいのじゃ。妾は大好きなのじゃ。」
「。。。私たちの伝統なんてものはないのかもしれません。」
「あるのじゃ。腰ミノと、大きな盾と、変な踊りがあるのじゃ。」
「この地に住まうものは、そんなものよりもパンとワインを求めているのです。」
「伝統は大事なのじゃ。人の心の拠り所になるのじゃ。」
「貴方達は古十字教の布教の為にきたのでしょ?」
「少し違うが、大まかに言うとそうかもしれないのじゃ。」
「古十字教に私たちの伝統を壊されないために、伝統的な食事などをだして気をひこうしたのですが、私の浅はかな考えなど、簡単に踏みつぶされてしまいましたね。」
「のじゃ!変な腰ミノもわるくないのじゃ。トウモロコシもおいしいのじゃ。」
「古十字教の宣教師どもも問題ではあるが、もっと大きな問題がある。」
そこに、一戦終えて満足げに帰ってきた偉大な王がやってきた。
「大きな問題とはなんじゃ?」
「少し、場所を移そう。」
偉大な王について外に出た。王宮をぬけ、ウルンディの街をぬけ、山を越え、野を駆け、いくつもの街を通り過ぎ、川を何度もわたり、三週間位移動してたどり着いた。
「ここを見ろ。」
「やっとついたのじゃ。」
「少しとは、、、」
そこには、それはそれは大きなすごいスラムが広がっていたのです。
「こ、ここは、、」
「わ、妾達の旅の、、目的地、、」
「海を渡り、」「陸を越え」
「孤児たちに食料と笑顔を届けるために」
「俺様が」
「妾様が」
「来てやったぜ!」「来たのじゃ!!」
南アフリカ多国籍管理地区「ヨハネスブルグ」
南アフリカのなんでもない田舎だったが、金鉱が発見されたことによりアフリカはもとより世界中から金を求めるものが集まった。名前の由来は金鉱を測量した人物の名からと言われている。
「ついに、それはそれはすごい大きなスラムについたのじゃ。」
「感無量だな。」
「さっそく食料を配りたいのじゃが、おほほに預けたままなのじゃ。」
「北欧まで取りに行くか?」
「ここはリスボンから航路がつながっておるのじゃ。いつでも運べるのじゃ。」
「モザンビークで手続きするか。」
「施しか。」
「のじゃ!偉大な王は宮廷で腹いっぱい食えるからわからんのじゃ!!」
「ほぅ。」
「孤児たちは飯を食べれば笑顔になるのじゃ。」
「それで?」
「笑顔になれば、頑張って仕事ができるのじゃ。」
「そして、給金で飯を食って笑顔になるのさ。」
「種を撒くか。」
「そうなのじゃ。善いことなのじゃ。」
偉大なる王はそれはそれは大きなすごいスラムを指さす。
「あれはなんだと思う?」
「あれはそれはそれはすごい大きなスラムなのじゃ。」
「人々はあそこで何をしていると思う?」
「金が採れるから、金を採っておるのじゃ。」
「金を採っているのは西洋人の管理する鉱山に入れる一部の者だけだ。」
「では、仕事にありつこうとしておるか、川で砂金でもとっておるのじゃ。」
「どれも違う。あそこは強欲な外国人どもの奴隷市場だ。」
「のじゃ!?」
「誤解無きよう言っておくが、余は奴隷が悪いことだとは思っていない。余も奴隷を使っている。」
「奴隷は善くはないことじゃが、社会情勢に鑑み仕方のないことかもしれないのじゃ。」
「まさか、奴隷を扇動して暴動をおこすつもりか?」
「それは悪なのじゃ。」
「いや、そんな気はない。重ねて言うが奴隷売買を悪いことだとは思っていない。」
「ならば、俺様には何も問題がないように聞こえるが?」
「あんなにもたくさんの奴隷をどうやって集めたのじゃ?」
「、、、あそこの奴隷は、奴隷になるために自分の意志でアフリカ中から集まってきている。」
「っ!?」
「強欲な西洋人に騙されておるのか?」
「アフリカでは牛を狩るより、トウモロコシを育てるより、木彫りの工芸品をつくるより、奴隷になった方が豊かな暮らしができるのだ。」
「そんな馬鹿な話はないのじゃ。」
「孤児に食料を届けると言っていたな。」
「そのために来たのじゃ。」
「来てやったぜ。」
「ここでは両親が揃っている子供たちが、たくさん餓死している。」
「、、、」「、、、」
「余はズールの威光を示さねばならないと考えている。」
「む?」「のじゃ?」
「そのために、ポルトガ国の強引な布教はちょうどよい。」
「何を言っているのじゃ?」
「今回のナタールでのイザコザは武力をつかって解決する。」
「のじゃ!今回の件は戦争をする必要ないのじゃ!ポルトガ国の上層部もおぬしらの立場をよくわかっているのじゃ。必ず双方によい落としどころを作れるのじゃ。」
「そなたに何が見えているのかはわからんが、こちらには武力を使う必要がある。」
「それが威光なのかや?くだらないのじゃ。」
「光がないから、自ら奴隷になるような愚か者どもがいる。」
「別の形でも光は示せるのじゃ。」
「ここまでのようだな。」
偉大なる王は踵を返した。
「みーちゃんが教えてくれたのじゃ。」
「む?」
「タンザニヤの貧しい農家の小さな女の子が「アフリカ大陸にも雪はある」とおしえてくれたのじゃ!!」
「ふ、余の知る限り、熱帯地方に雪は降らんよ」
この後、ズール国はポルトガ国や西洋の国々と戦っていくことになる。
俺様達は三週間かけて船に戻ることになったのだが、偉大な王と帰りの経路がほぼ同じだったため少し気まずかった。




