30 バチカノ市国2
イタリ都市連合都市「ローマ」のなかにある「バチカノ市国」を訪れた俺様達はなぜか過去に別れた仲間たちと再会し、観光がてらサンピエトロ大聖堂の前で、冗談半分に「教皇をだせ!」していたら教皇の執務室に通された!?
「本物の立派な貴族様達の領域にきちまったぜ。」
「さすがの妾も緊張するのじゃ。」
すごい装飾のされた大層立派な扉を開けると、そこにはすごい偉い枢機卿らしき人達と、それはそれは立派な白いひげをたくわえた人の好さそうに見えるすごい教皇様らしき人がいた。
「教皇様の御前である!」
すごい偉そうなすごい枢機卿がすごい偉そうな事を言った。
「この世界の人々の暮らしを良くするために俺様が、」
「妾達が、」
「来てやったぜ!!」「きたのじゃ!!」
世界の命運を分ける会談が始まった。
法皇様を訪ねてきた客人を案内してきたスイースの傭兵は驚いた。
自分は長年名誉あるバチカノ市国の警備の任務に就いてきたけれど、このような破天荒な客人にはついぞ目にしたことがなかった。
しかし、この面様な客人達がヨーロピアの人々の暮らしを良くするかもしれないと、懐かしきアルプスの山々を思うのであった。
ちなみに彼はローマ市内出身である。
「ふむ、世界の人々の暮らしを良くするですか。」
白い立派な髭を貯えた偉い教皇様は、興味本位でよんではみたものの教皇らしくこの場を治める方法を必死に考えていた。だいたいの状況では勿体ぶって教皇らしいセリフを言えば周りが教皇らしい解釈をして教皇らしく収まるのだが、この相手にとっての教皇らしさが未知数であった。
「ふむ。あなた方は社会にとって責任のある立場にあるように見えませんが?」
とりあえず立ち位置の確認。これ大事。教皇はこの十字教社会で一番偉いのだから、立ち位置さえ明確になれば、あとはいつもの教皇マウントを決めれば議論終了。はい論破。ちなみに毎回「ふむ。」というのも大事。思慮深さの演出は教皇マウントの効果を高めるために欠かせない。
「俺様は俺様だ」「妾なのじゃ」
個人主義を前面に出されるのはよくない。立場を利用してあたかも偉くて正しい事を言ってるように誤認させる教皇マウントにとって、個人の資質を問う状況は鬼門。教皇の考える限り教皇にふさわしい人間なんていないのだから。それこそ、救世主さまですら教皇にふさわしいか疑問。
「ふむ。貴方達は船主と聞きました。安くて質のよい物を届ければ人々の暮らしを良くなるでしょう。」
相手の全容が見えない時は、相手の責任範囲をこちらから指定する。この後、船か交易関係のそれらしい事を言えば教皇マウントで試合終了。タイムは36.4くらい。頭の中で聖ヤコブの手紙の内容を思い出す。彼は漁師だったからちょうどよい逸話があるはずだ。
「それだけでは救えないと知ったのじゃ。」
「交易で稼いでもダメだった。」
「力がないと何もできなかったのじゃ。」
おっと、権力をご所望か。教皇マウントが一番利きやすい題材だ。教皇マウントこそが権力そのものなのだから。ここは貴族達への説法のように権力の使い方の話に方向転換。
「ふむ。大きな力が人々の暮らしを良くするとは限りません。」
この後に「愛」をうつ、そしてあやふやなものの話にしてゆき、丁度よい逸話を挟めば教皇マウントで試合終了。タイムは40.8くらい。
「大きな力が人々の暮らしを良くするとは限らないのじゃ。」
「たしかに、大きな力が人々の暮らしを良くするかわからんな。」
「愛」をうちにくい返しがきた。「そこで愛です。」と無理矢理にうってもいいが、少々弱い。「愛」は強力だが乱発していいものではない。
それにこれは相手の発言を反芻することで、あたかも何か意見を言ったかのように見せかけて何も言っていないテクニック。それも二重で。一筋縄ではではいかない相手かもしれない。効果を高める「たしかに、」も使っている。
ここで、考えられる次手は3つ。
「愛」は上記の理由で×。
「ふむ。」からの沈黙は思慮深さの演出には使えるが、積極性に欠けるのでこのシーンでは×。
「相手に何かしらの利益を提示する」は、相手の全容が見えていないので△。相手の求めるものを聞き出すべきか。そもそも相手の目的を聞いていないのではないか。
「ふむ。あなた方は何を求めてこの法皇の間へきたのですか?」
相手に発言をさせる事と会話の主導権を握り続ける事を両立させるのは難しい。けれど、教皇ともなれば教皇マウントでどうとでもなる。ちなみに「法皇の間」はこの場所の名称だけど、偉そうに聞こえるのでこれも一種の教皇マウント。
「妾様達は、この世界の人々の暮らしを良くするために、妾が、」
「俺様が」
「きたのじゃ!!」「来てやったぜ!!」
教皇はふたりから強敵の気配を感じとり、予定タイムを未定とした。
「へへっ、あっしが思うにこのままだと話が進みませんぜ」
「っ!?闇商人、いたのか。」
「へへっ、ここいらで一つ話を初めから整理してみやせんか?」
「ふむ。とは言っても見る人によって見えるものは違うものです。」
「へへっ、その見え方がどう見えてるかも聞いてみやしょうぜ。」
「のじゃ。何処かの星で作られた原子が超新星爆発によって宇宙空間に飛び散ったのじゃ。それらが、お互いの引き合う力によって集合したり、衝突の衝撃で飛び散ったりしながら一つの星になったのじゃ。46億年前じゃな。」
「ん?」「??」「?」
「??」「な?」
「ふむ。はじめに神は天と地をつくられた。闇におおわれていたので「光あれ」と言われると光ができたのでヨシとした。光を昼。闇を夜と名付けた。」
「のじゃ。」
「へへっ、あっしが思うに、もうちょっと最近の、ある夫婦の結婚がうまくいかなかったとこくらいからでお願いしやす。」
「のじゃ?その話しらないのじゃ。」
「ふむ。ある男に妻がいたのですが、別の女を好きになったのでそちらと結婚すると言い出したのです。」
「褒められたものではないのじゃ。去勢が適切じゃな。」
「、、、ふむ、、我らの教義では「離婚」というものを認めていません。」
「のじゃ!?変なのじゃ。結婚生活がうまくいかない事もあるのじゃ。」
「ふむ。なので、そもそも結婚していなかった事にするのです。」
「やっぱり変なのじゃ。ただの言葉遊びなのじゃ。」
「ふむ。「離婚」は善いことですか?」
「のじゃ?善いこととは言えんの。仕方のないことじゃ。」
「善か悪かで言えばどちらですか?」
「どちらかと言うと悪じゃの。」
「ふむ。私達ははその悪い離婚を出来る限り少なくし、仕方なかった場合には本人たちと周囲に出来るだけ面倒がおこらないように調整しているのです。」
「それは善いことなのじゃ。」
「ふむ。先ほど話にでた男は私たちの調整を受け入れないばかりか、話をする事すら拒否しているのです。」
「それは悪いことなのじゃ。」
「とは言え、それはもう過去の事。いま話し合われているのは、その男にはそれぞれの妻との間に娘がおりまして、、、」
「あー。あー。もういいのじゃ。」
「ふむ。」
「妾達には、全く、一切、かかわりのない事なのじゃ。」
「はい。全く、一切、その通りなのですが。お仲間さん達はそうでもないようです。」
「俺様は関係ないぞ」
話が長くなってきたので一度切ることにした。
もちろん、教皇や枢機卿を切るという意味ではない。




