表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

真守 葉摘が微笑む時

黒い雨合羽とカラスのお告げ

作者: モモル24号

 私の名は進藤 慶一という。今日は仕事で人と会う約束をしていて、車を走らせある町までやって来た。天気予報では朝から雨。商談だというのに、これは荒れて商談失敗(振られる)かなと、強まる雨に不安を覚えた。


 大雨の中、時間になるまで車で待機していた時だった。雨がザアザア降りなのにおばちゃん達の声がする。車の後ろ側、コインパーキングの壁越しか。ミラーには映っていないから離れた距離からだ。この雨の中で、お喋りの声が届くのか。凄い地声の主達だ。


 なにも雨の中でまで立ち話しをしなくてもいいのに……私はそう思った。雨が降り続くなか、しばらくすると声は流石に止む。そうだよな、この雨の中いつまでも話し込んでいると冷えて風邪を引く。


 人の声と違って、雨音は気に障らない。騒ぐ声がようやく静かになったと思ったが、今度はバックミラー越しにウロウロする黒い頭が映る。エンジンかけてないので文句言われる筋合いはない。


 二往復はしただろうか。しつこいなと思い、目を凝らして顔を見てやろうと思った。


 黒いもの、動くものは……カラスだった。いや、それは伝聞として正確ではないな。カラスの剥製なのか、妙にリアルな黒い鳥を頭に乗せた帽子を被るおばちゃんだった。


 カラス自体珍しくはない。しかし、先程まで喋っていたと思われるおばちゃんの頭に何故あるのか。視界の悪い大雨の中、身震いする。奇妙なものと認識した原始的な恐怖だ。

 

 雨に濡れて妙に黒々した感じの増す、艶のある羽。帽子ならば造り物のはずだが、黒い目が一瞬チカチカと色が変わるように見えた。監視でもされているのか、そう思った。


 雨が強まると、カラスの帽子を被ったおばちゃんは消えた。雨と強風によって車体が揺れる。私は仕事のために待っていた事を忘れ、車を動かした。吹き込む雨風の中、びしょ濡れになりながら精算を行い、急いで駐車場を出た。


 その後、雨風は弱まったが私は取引先に断りを入れ帰る事にした。


 

 ……後でニュースで知った時に愕然とした。私が利用していた駐車場で、事件があった。私が車を動かして出ていった後、同じ場所に入庫した車の持ち主の女性が殺害されたからだ。


 駐車場の防犯カメラには、白いレインコートを着た人物の姿が確認されたという。あの時あの場所にとどまっていたのなら殺されたのは私だったのかもしれない。そう思うと再び震えが来た。


 ◇


「ニュースを見ただろう。あの日、おじさんは確かにカラスを頭に乗せた黒い雨合羽のおばちゃんを見たんだよ」


 怖い体験をしたといいながら嬉しそうに話すおじさん。


 俺は進藤 啓斗。この目の前に座る叔父、慶一からの連絡で大学近くの喫茶店で待ち合わせていた。おじさんと言っても、五つしか違わない。


 最近は慶一兄ちゃん呼ばわりを嫌がり、わざわざ自分で卑下するかのように、俺にはおじさんを強調してくる。まあ変わり者の慶一おじさんの性質はどうでもいいか。

 

「警察には言ったの?」


 ニュースになるくらいだ。利用していたのなら、聞き込みくらいあるのかと思った。


「まだだよ。目撃証言を求められていないのに、自分から犯人を見たって言うのかい。それこそ新たに疑われかねないだろう」


 慶一おじさんも常識人になったんだ。まだ変な性質はあるが、社会人になって大分まともにはなったようだ。


「それなら大人しく働いて、事件の事なんか忘れなよ」


 黒い雨合羽とかはともかくだ。カラスだとかおばちゃんだとか、尋ねられた時に答えるつもりがありそうだ。間違いなく、おじさんの精神状態を疑われそうな案件だよ。俺としては、無関係の事件でおじさんが職を失うような事にならないか心配なのだ。


「そうも言ってられなくてね。啓斗、おまえ探偵みたいなのやっていただろう?」


 慶一おじさんは、事件後から悪夢に苛まれていると告げた。夜になるとカラスの影がチラつくらしい。俺がオカルト研究会の配信で、怪奇絡みの事件を解決しているのを知ってやって来たわけだ。


 百人に満たない視聴者の一人が慶一おじさんだったのか。わざわざ呼び出してまで会いたい理由は事件の解決ではなく、怪奇現象の解消だ。


「カラスがね、事件について私に何か伝えたいんじゃないかって思ってるんだ。だが、私には霊感などない。それを知ったとしても警察に伝えるのは、な」


 まだ憔悴した感じには見られない。ある意味おじさんが変人で、奇妙な事に耐性があってよかった。


「一度先輩と検討してみるよ。少しでも異変を感じた時は連絡してよ」


 慶一おじさんと別れた俺は大学へと戻る。先輩はまだ大学構内にいるはずだ。心配するなとは言うけれど、慶一おじさん……兄ちゃんには世話になったから、なんとかなるなら解消してやりたい。


 ◇ ◇


「へぇ、君の叔父さんはあの事故現場にいたのかね」


 研究室で怪しげな配信映像を見ながら女性が一人で寛いでいた。俺の一つ上の先輩、真守 葉摘だ。美人なのにオカルトおたくで変人とあって、一度話すとみんな離れていくボッチ気質のお嬢様でもある。


「正確には事件の前に、ですがね。仕事で人と会うために待ち合わせの時間まで待機中だったそうです」


 葉摘先輩はひとまず自分の眺めていた配信映像を止めて、ニュースの映像を改めて見た。


「何の変哲もない、よくあるコインパーキングだね。駐車場とビルの間に塀があって人が通れるくらいの隙間があったわけか」


 先輩にはもう一つ秘密がある。超能力者であり、霊的なものに対して強いのだ。


 映像からでもわかるらしいが、反応は薄い。慶一おじさんの杞憂になりそうだ。ただ、変人だけど嘘をつく人ではない。おじさんが見たというカラスは本当にいなかったのか、気になった。


「ネタに使えなくて残念そうですね。容疑者……犯人は捕まってますがおじさんが見たのは白いレインコートを着た人ではなく、黒だったようですよ」


「ふむ、そのあたりは後にするとしよう」


 もちろん先輩にはカラスの事も伝えた。慶一おじさんは確かに見たと息巻いていた。狼狽していて、気味が悪くなって逃げ出したくらいだから間違いないだろう。


 乗り気ではない先輩に動いてもらうには、オカルト的な興味を持たせなくてはならない。


「まず犯人の動機だが……亡くなった被害者の車が迷惑行為をしていたそうだね」


 犯人の女性は駐車場の隣のビルに住んでいる住人だった。ビルといっても三階建ての小さなもの。ビルの壁は黒くて、窓のある列に、ちょうど被害者の車があった。


 駐車場とビルには150センチの高さの塀がある。被害者の車はおじさんのように、そこでよく車に乗ったまま待機している事が多かったようだ。車のエンジンはかけたまま。


「殺人のきっかけはアイドリングだったね。犯人は去年、旦那さんを病気で亡くしている。原因は排気ガスだと思い殺してやったそうだ」


 だいぶ取り調べが進んでいて、ニュースでも詳しく取り上げられていた。


「私が説明しなくても検証をやってくれているから、まずは見たまえよ」


 やる気のなさそうに先輩が別のニュースの映像に変えた。元警察官を交えて、解説まで行っていた。


「……犯人の女性の殺人に至る動機は、塀に排ガスがあたり、上がって来たガスのせいで旦那さんが亡くなったからだという思い込みからという事ですね……」


 アナウンサーがそう締めると、動機は自供したので、その現場の検証実験を行っていた。


 被害者の車はEV機能のついたハイブリッド車。アイドリング中、時折エンジンがガソリン仕様に切り替わるものの、排気ガスはそれほどないと思われた。


 排ガスは上昇しても、大気中に拡散していく。そのため窓を閉めていても吸気口などから入り込む可能性はあるにせよ、致死に至る毒性はないという結果だった。


「つまらない事件とまでは言わないが、犯人はだいぶ()()()()を溜めていたようだね」


 病気の旦那さんを亡くしてストレスが溜まっていた。亡くなった原因を事件の被害者にぶつけたかった、そんなところか。


 実際旦那さんが亡くなる前に何度か揉めていたようで、口論する姿が一年程前から目撃されていた。


「あれ……葉摘先輩、なんか気づいたんじゃありません?」


 犯人がストレスを感じでいた事に、先輩は含みを持たせていたような。


「おや、君も気づいたかね」


 俺がおかしいと感じたのは、随分前から揉めていたのに、被害者もしつこくやり続けたように思ったからだ。被害者が殺害された日に慶一おじさんが聞いたのは、ひょっとしたら犯人と被害者の声だったのかもしれない。


 被害者がいつも停めていた駐車位置に、おじさんの車がいたせいで、被害者は停められなかった。それなのに揉めていたのか?

 その後もわざわざ駐車場の定位置に車を停め直したのか。


「防犯カメラの様子から、駐車場には被害者本人が車を停めていたようだね」


 偽装のために、他の誰かが協力していたわけでもなさそうだ。いや、あくまで現場では……か。


「事件は既に解決しているが、君のおじさんの証言で真相が明るみに出る可能性があるね」


 コインパーキングとはいえ、迷惑駐車によるトラブルはよく耳にする。排気ガスや、アイドリングの音など近隣住人との駐車場トラブルの典型例だ。


「簡素ながら塀を設けて、排気ガスは対策している。音はまあ、少し難しいかね。ただおじさんが聞いた声が犯人と被害者のものならば、そこで殺害も出来たはずだろう」


 犯人はわざわざ防犯カメラが備わっているコインパーキングで殺害に至った事になる。なんのために?


「わからないかい?」


 ニヤニヤする先輩。事件についてはオカルトでも何でもなさそうなのはわかるんだが。


「今回はまったく調べていないから、確証はないが聞きたいのかね」


 慶一おじさんの事もあるので、俺は素直に頷く。


「この事件、私の見解では不倫による計画的な犯行だよ。ニュースでも少し取り上げていたね」


 犯人の殺害の動機は明らかにされていた。しかしトラブルを重ねてまで被害者が駐車場にやって来る理由は、あまり焦点が当てられていなかった。


「もう一度確認するよ。被害者の女性が嫌がらせを行うようになったのはいつからかね」


「犯人の女性の旦那さんが、亡くなる前あたりからですね」


「被害者がやって来ていた時間はどうかね」


「おじさんがいた時間あたり、昼から夕方の間ですね」


「そうだ。さて、この記事を見たまえ。奇遇と言うのか、黒幕の企みというべきか。犯人と被害者は同じような時間帯に働きに出ている」


 どこから引っ張って来たのか、先輩は事件の犯人と被害者の特定サイトから情報を探し出した。しょせんネットの記事なので信憑性に欠ける。痴情のもつれと結末と銘打って、半分茶化した記事だった。


 不倫カップルが会うために、被害者の働く時間が都合良かったのだろう。嫌がらせをしている相手がそこにはおらず、自分の夫と乳繰り合っているのだから悲しい。継続してやり続けているあたり、被害者も執念深い性格だったのだろうか。


「まあ直接会うような密会は、殆どしていないだろうね。真相を調べるのは我々ではないからね。警察なり保険会社が調べていた案件だろう」


「……えっ、ちょっと待って先輩。保険会社って」


「犯人の旦那さんは病死とはいえ保険金が入っているのだろう? そして恨みによる犯行で被害者はなくなった。被害者の夫が無関係ならば、保険金は手に入る可能性はある。今の所そう運んでいるね」


 警察も保険会社も当然関係性を疑ったはずだ。何も報道で触れていないと言う事は、関連性はゼロだったのだろう。


「捜査のプロが調べて関係性を示す証拠が出て来ないのなら、やっぱり犯人の情緒不安定さによるんじゃ……」


 何より犯人は既に旦那をなくし、ビルを始めとする財産や保険金を手に入れている。それなのに犯罪を侵すなんてリスクしかない。


「だからさ。これは犯人と被害者の夫の共犯だよ。邪魔者を始末して、それぞれが大金を手に入れるためのね」


 先輩が力説するが、俺にはさっぱりわからないよ。


「常識的に考えるからわからないのだよ。彼らの理想の結末を先に考えてみるといい」


 不倫関係にあるかはどうかは一度除外する。保険金目当てならば、最終的には得られる限界まで大金を手にすれば勝ちだ。犯人はすでに財産を得ている。殺人を侵すメリットがないと思いがちなのが鍵になる。今回の事件を、感情的な殺人と思わせられるからだ。


「だからこそ、亡き旦那の為にリスクを冒してまで殺害に及んだ……? 金銭的な余裕と精神状態を鑑みて情状酌量の余地があるから」


 殺害に至る動機が愛する旦那の為の復讐ならば、不倫関係への疑いも薄まる。何より犯人のリスクが高いというのが、感情的な殺人と疑わせる武器になる。


「人の憎愛は測りかねるものだね。普通に考えてみると騙される。すでに生活に困らないお金があるならば、リスクは避けると考えるから。そしてそう思わせるのが彼らの計画だ」


 コインパーキングを利用して嫌がらせに来る被害者が、どうやって唆されたのかはわからない。強い嫉妬心を利用されたのかもしれない。すでに被害者は亡くなっていて、本当の事はわからない。


「彼らの計画は当然被害者を殺す事が前提にある。それも疑いなく、わざわざ見つかるようにね」


 あくまでも葉摘先輩の推察。保険金目当ての殺害は数あれど、隠さない事を前提として計画が成り立つ殺人事件。犯人の女性は罪を犯した所で、叩かれるどころか、美談に思われるくらいだ。


「勝手な推測だが確証を得るのならば、君のおじさんには警察で見たままを話すよう伝えるんだね。それと、事件の被害者が暮らす近隣の産婦人科で彼女の診察の有無をね」


「産婦人科ですか」


「そうだ。練られた計画に狂いが出た理由が、産婦人科の診察履歴にあるかもしれない」


「日をずらせない事と、産婦人科に関係があるのですか?」


「大有りだよ。被害者の女性の気持ちで考えてみたまえ。愛する夫の子がお腹にいるかもしれないとわかれば、嫌がらせの為に時間など割いていられないだろう?」


 犯行日を大荒れの天気の日にした理由が被害者の妊娠にあるのではと、先輩は考えた。犯行を隠そうとしない事が真相を曇らせる計画であるのに、決行日に矛盾があるからだ。


 犯人が犯人として認識させるために利用していた被害者が、妊娠してやって来なくなる可能性への焦り。そして不倫相手の妻への嫉妬が、犯人の殺意を高めて計画を狂わせたのかもしれない。


「私には殺すつもりの相手と偽装のために子づくりに励む気持ちはわからない。ただ犯人達の心中は穏やかではないだろうね」


 ◇ ◇ ◇ 


 俺は慶一おじさんに連絡して、先輩は警察に連絡をしてくれた。防犯カメラの映像から、おじさんの証言は有用だと判断された。


 慶一おじさんは先輩のアドバイス通りに、見たまま聞いたままを証言した。また先輩の情報を元に、警察と保険会社の調査員が動いていた。


「産婦人科への調査で、被害者が妊娠していた事がわかったそうだよ。君のおじさんの証言も漠然とだが、妊娠に関する言い争いと取れる内容だったみたいだね」


 俺には聞いた内容を話してくれなかったが、慶一おじさんは雨の中でもしっかり話し声と内容を聞いていた。


 駐車場トラブルからの殺害のはずが、おじさん一人の証言で不倫関係の痴情のもつれとなると、犯行の動機自体も揺らぐ。


 殺害の証拠自体は確実。犯人も犯行を自供している以上、殺人の罪は変わらない。犯人達が目論んだ情状酌量を狙った殺人罪の減刑と、執行猶予は破綻する事になるだろう。


「皮肉なものだね。証拠をあえて強調したおかげで、夫婦愛と嫉妬に路線を変更出来ないのだから」


 被害者の夫は一貫して知らなかったを通せば共犯からは逃れられる。ただし、それには実行犯である犯人の女性の心情に掛かって来るだろう。


「自分も利用されていたかもしれないと、考えたのなら不倫関係を告白して関係性を示す証拠を出すだろうね」


 怖い怖いとケラケラ笑う先輩こそ怖いが、俺は黙っておく。実際に犯人が殺意に囚われたのは口論になった被害者が、わざわざ戻って来て駐車場に車を停めたからだ。その瞬間の被害者の心理と犯人の心理は、当人達しかわからないだろう。


「さて、駐車場トラブルの悲劇はいずれにせよ結果がわかるまでは放って置くしかない。我々の本題はそこじゃないからね」


 先輩が急に話しを変えた。何のことだろうか。


「君はここを何処だと思っている。それに、おじさんが悪夢に苛まれている事を忘れたのかね」


 事件は解決したので、俺はもう安心だと思っていた。調査には赴かなかったが、先輩はこの事件、いや慶一おじさんにオカルト要素を感じていたらしい。


「まず、おじさんの症状についてだが、視覚に関する異常があるかもしれない。おじさんには病院で精密検査を受ける事と、車に乗るなと伝えてあるね?」


 慶一おじさんから相談された後に、先輩から車の運転は控えるように伝えていた。検査結果の連絡は、おじさんからまだ届いていない。


「まあ、よろしい。最初に気になったのは、おじさんの見えている世界だ。彼は塀を壁と認識していたね」


 確かにそうだ。壁と言っていたが、ニュースなどの現場映像を見ると壁というより、高さのあるフェンスに簡素なプラスチック性の目隠しを貼ったものだった。


「それに黒い雨合羽とカラスについてだが、犯人は白いレインコートを着ていた。これは我々も映像で確認している通りだ」


 おじさんは嘘をついていない。しかし、実際の映像と齟齬があった。


「犯人のレインコートには防水スプレーがかけられていたそうだ犯人の身長は155センチ、靴はスニーカーだね」


 塀の高さが150センチ。頭がカラスと見間違うには小さいし、そもそも色が違う。


「視界が悪いなどの条件があるかもしれない。ビルの壁が黒いとなると、おじさんの目には当日、白黒逆転して映っていた可能性はある。防水スプレーの影響でレインコートがカラスのように見えたのだろう」


 光の加減で目の錯覚を起こす話しは聞いた事がある、事件当日、おじさんは取引先との商談を止めるほどストレス状態になっていた。


 犯人がうろついていた時、頭は見えたはず。カラスとして見るには小さいかもしれないが、事前に聞いていた会話と合わせて、錯覚するには十分脅威だろう。


「それじゃあリラックスした状態で検査をしても、白黒逆転して見える事はないかもしれないですね」


 ストレス以外にも、車の中とか雨とか、視界の良くない状態も加味される。


「私が言いたいのは、そこじゃないさ。どうしておじさんは黒い雨合羽だと断言したのかね」


 そう言えばそうだ。頭だけ見て全身黒いと判断したのだろうか。カラスを頭に乗せたおばちゃんと言っていなかったか?


「少なくともあの事件の日、君のおじさんの目は、カラスの目のように見えていたのかもしれないわけだよ。塀の目隠しは薄いようだからね」


 ────後日、慶一おじさんから連絡が来た。視覚には特に異常が見当たらないものの、夜になると普通の人と見え方をしている可能性があるとわかったそうだ。


 検査の結果を聞いた葉摘先輩がニンマリと微笑む。この人はどこまで知っていたのか、相変わらずオカルト狂いなのは間違いなかった。


 余談だが、慶一おじさんがおじさん呼びを強要するのは、先輩の事を知ったせいだ。先輩から「慶一お兄ちゃん」と呼ばれたくて、俺には禁止した。変人だが別の意味でも変人なのは確かだったようだ。


 

 お読みいただきありがとうございます。公式企画 春の推理メッセージ 5作品目の投稿となりました。


 雨の日のカラスを見て思いついた作品です。メッセージ要素であり、タイトルのカラスのお告げの部分が少々薄いかもしれません。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ