やや左側に偏った作品レビュー
『いつからだろう。レッドブルを飲んでも、左からしか翼が生えなくなったのは。』
これは、『夜更かしの革命』の書き出しの一節です。当局の要望を達成するために、国有の工場で武器を作る青年が、眠気を誤魔化すために、レッドブルを飲むことで、革命に目覚める。と言った話です。
社会主義の国に生まれた青年が、資本主義のエナジーを体に入れても、主人公の魂は、左に寄っていたことを一瞬で伝える素晴らしい文章だと思いました。
また、物語が進むにつれて、主人公の逆らえない運命と同志達が死んでいく現実の間で、葛藤する心理描写は圧巻でした。そして、同志達の血で赤く染まった左の翼で、天国へと飛び立つラストシーンには、涙が止まりませんでした。
『ゴルバチョ●の頭の痣を付けたのは、私のおばあちゃんだった。』
次の書き出しは、『ペレストロイカおばあちゃん』の一節です。この衝撃的な書き出しには、誰もが目を疑ったことでしょう。
しかし、この書き出しはまだ序の口で、酔ったおばあちゃんは、指導者の髪の毛をむしることが癖で、指導者にハゲが多いと言う事実は興味深かったです。
傍若無人なおばあちゃんの昔話を聞いていると、夜が遅くなりました。そして、おばあちゃんは明日また、話の続きをしようと言いました。しかし、昨日まで元気だったおばあちゃんが急死を遂げるラストには疑問が残りました。
『吾輩は次男である。名前はまだない。』
三つ目は、国が変わるのですが、『俺の名は。』という作品です。有名な作品のパロディのような書き出しで、コメディーであるかのようですが、これは国家の検閲を逃れるための工夫であり、それだけでも伝わるものがあります。
そして、次男として生まれた主人公が戸籍をもらえず、家族からも見放され、迫害を受けながら生きていく姿に、生きる勇気をもらいました。
そして、主人公が臓器売買のために、解体されるラストは、自分の心の中でどうしようもなさが膨らみ、生きるためには誰かの犠牲がつきものであることを暗示するこの作品は、読者の心を大きく揺さぶります。
『プッチンプリンがこの国で買えないのはなぜだろう?』
四つ目は、『プッチンプリンは世界で売れない』という経済の本の書き出しです。小説の書き出しではないですが、今回のテーマに合致するので、紹介することにします。
プッチンプリンがある国で売れない理由を、言語学の観点から展開していき、そこから世界政治、世界経済の現状を説明していき、思わぬ着眼点から世界の仕組みが見えていくこの本の構成は、面白かったです。
そして、最終章では、プッチンプリンを楽しむ国では、領土問題が解決しない理由を明確に示しており、私はその国の国民がこの事実を知らないことに恐怖を覚えました。
『彼女の私への態度はシベリ●のように冷たく、もう少しで核を使ってしまう所だった。』
次は、趣向を変えて、ラブコメのラノベ『敵対国のツンデレ指導者と恋がしたい!』の書き出しです。大統領である主人公は、敵対国の女指導者に恋をするというラブコメ作品。この作品は”敵ツン”と略され、大ヒットとなりました。
この作品の書き出しは、不謹慎であるという理由から、この本の発行停止処分を受けましたが、最高裁判所にて、その処分は表現の自由から考えて、違憲であるという”敵ツン判例”は、法学の講義ではよく取り上げられる話題である。
なお、私は負けヒロインのチェバちゃんが好きです。
『子供のころの記憶は夢の様に儚い。私はそのほとんどを忘れている。
ただ、一つだけ、街中を走る戦車だけはくっきりと覚えている。
しかし、その確かな記憶は、皆に夢だと否定される。』
最後の作品は、『天に、安心し、門松。』です。この書き出しから分かる通り、主人公は職場の友達や故郷の友達、自分の親でさえ知らない記憶があった。主人公がその記憶を誰かに話すと、「知らない。」と即座に返答が帰ってくる。
主人公がこの存在しないはずの記憶を段々と風化させていき、まるで、夢のようになっていく描写は巧みでした。そして、主人公はその記憶を完全に忘れ、幸せに生きていく姿には、少し違和感を感じ、もやもやする作品でした。
もう一つ、もやもやする点として、題名にある門松が作中に一度も出てきていないことがあります。私は何度もこの作品を読み直すのですが、やはり、門松の意味がよく分かりません。ただ、読者の中で、自分なりの門松を探すことがこの作品の魅力なのかもしれません。
他にも、『デモクラシーキラー』の『民主主義の人間の血も赤いんだな。』や『ゴールテープは皆のもの』の『我が国のアスリートがオリンピックで競い合うのって、おかしくないか!?』も紹介したかったのですが、今回は厳選した上記の6作品をレビューしました。
皆さんもこれらの作品を読んで、我が同志になりましょう。皆で歩幅を合わせ、手をつなぎ、平等な社会を作るのです。
※この作品は全てフィクションであり、実際の国、団体、思想、歴史的事実とは関係ありません。
しかし、作者や作品が消される可能性がありますので、作品の取り扱いは気を付けてください。