<8>
「変わった婆さんでしたね…」
立ったまま二人の話を聞いていた鴫田が、立ち疲れたのか椅子へドタリ! と座り込み、口を開いた。
「ああ…」
口橋は空返事をした。
「署長は継続捜査の意向のようですが、どう捜査すりゃいいんでしょうね?」
「馬鹿野郎! それが分かりゃ、苦労はしないさ…」
「ですよね…」
「まあ、いい。今の婆さんの住処へ、とにかく行ってみよう」
「庵ですか?」
「婆さんは、そう言ってたがな。そんないいもんじゃないだろう…」
口橋は意を決したのか、そう言うと奥多摩を目指し署から出て行った。当然、鴫田も小判鮫のように口橋に付き従った。
覆面パトに飛び乗ったまではいいが、婆さんの庵が山中のどこにあるのか? を聞き逃した口橋は、車を始動したまではよかったが、そのまましばらく氷になった。
「口さん、どうしました?」
「んっ? 鴫田、お前、婆さんの住処知ってるか?」
「ええっ!? 口さん、訊いてないんですか?」
「ああ、まあな…」
「まあ、とにかく行きましょうよ…」
「ああ…」
二人を乗せた覆面パトは行き先も分からないまま、東京都の山岳地帯、奥多摩を目指し動き始めた。^^