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 そのとき、一人の刑事が挙手をしながらスクッ! と立ち上がった。

「ちょっと、質問がありますっ!」

「はいっ!」

「本部の解散はいいんですが、それなら我々は今まで何を捜査していたのか、ということになりますが…」

「いや、捜査本部を置いたときは事件性があったということです…」

 手羽崎(てばさき)管理官は流暢(りゅうちょう)に弁明した。

「他には…」

 庭取(にわとり)副署長が同じ刑事の追加質問を止め、手羽崎をフォローした。刑事達は口橋(くちばし)鴫田(しぎた)を一喝した庭取だったから、それ以上は質問せず、口を(つぐ)んだ。

「無いようでしたら、これで解散します…」

 鳩村(はとむら)が、やれやれこれで…と安息の息を吐いた。

「あの…分化本部の方も、ですか?」

 口橋が挙手せず立ち上がるや、やや大きめの声で訊ねた。鳩村はホッ! とした矢先だったからギクリ! としながら口橋を見据えた。口橋と鴫田が座る席はいつも後方だったから、鳩村は目を細めながら口橋の姿を確認した。それを察したのか、手羽崎が口を開いた。

「当然、そうなります。ただ、公安からの申し出が署長にあったそうですので、署長から状況説明があると思いますが…」

 手羽崎が答弁を催促するように鳩村の顔を窺った。

「ああ、はい…。霊安室から消えたミイラという考えられない疑問と、消える前のミイラから発見されたウイルス性の物質の二点から、公安は継続捜査をするということのようです」

「こちらは解散なんですね?」

「ええ、まあ…」

 覇気つかぬ顔で鳩村が小声で返した。

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