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<34>

 店内に客は(まば)らで、三人は周囲に客がいない席へ腰を下ろした。しばらくして、ウエイトレスが水コップをトレーに乗せて現れた。各自が注文を済ますとウエイトレスはオーダー書きを確認した後、楚々と去った。

「今どき、ハンディで注文、取らないんですね、この店…」

「いいじゃないか、レトロで…」

 鴫田(しぎた)が訊ね、口橋(くちばし)が軽く返した。

「口さんが私に訊いた話なんですがね。情報は公安内部のある署員から聞いたんですよ、実は…」

「とある地へ埋葬されたって言ってましたよね。それは?」

「公安に迷惑がかかるかも知れませんので、今のところ、ドコソコとは話せませんが…」

「そうですか…。それと、例の祈祷師の婆さんが、署長に訊けば分かるって言ってたんですが、何のこってす?」

 奥多摩の山深い庵で暮らす祈祷師の老婆に乗り移った[憑依した]Й3番星から来た異星人が老婆に言わせた話である。口橋には皆目、見当もつかなかったが、署長に訊けば分かると言ったのだから訊ねたのである。一瞬、鳩村(はとむら)はギクッ! とした。というより、鳩村に乗り移った[憑依した]Й3番星から来た異星人がギクッ! としたと言った方がいいのかも知れない。

「ああ、そうでしたか。いやなに、私がお婆さんに少しお話したことですかね?」

「と、いいますと…」

「ははは…他愛もない話です…」

 鳩村に乗り移った[憑依した]Й3番星から来た異星人は内心で『つまらんことを言う奴だ…』と、自身の存在がバレる危うさに気づき、先遣者の異星人を愚痴った。

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