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<13>

 やはり、この前の婆さんだ…と、口橋はひと目見て分かった。

「少しお()きしたいことがありましてな。今日、寄せていただいたんですが、今、ご都合よろしいですかな?」

「さようで…。私ゃ、ちっとも構いよりましぇん。いつも(ひま)を持て余しておりましてのう…」

「そうですか、それはよかった!」

 口橋(くちばし)は、何がいいのか分からないまま、老婆に返していた。相変わらず弥生時代の装束に身を(やつ)し、勾玉の首輪を首にかけている。警察へ訪ねて来たときと違うのは。老木の根で作ったとみられる一本の杖を右手に握っていたことだった。

「まあ、中へお入り下せぇ~まし。(むさ)いところではごぜぇ~ますが…。ドクダミ茶の一杯でも差し上げましょうほどに…」

 口橋は、ドクダミ茶はいらねぇ~が…とは思ったが、そうとも言えず、小さく(わら)って頷いた。^^

 庵の中にチョロチョロと(たきぎ)で燃える囲炉裏があった。その上に吊るされた薬缶から老婆は茶を汲み取り、欠けた湯飲みに注ぐと二人に振舞った。

「この茶、身体に滅法、よろしゅうごぜぇ~ましゅだ。私ゃ今まで、(やまい)などしたこともござりましぇん…」

「そうですか…」「なるほど…」

 そう返すのがやっとの口橋と鴫田(しぎた)だった。苦い茶であることは飲む前から分かっていたが、捜査を進める以上は、無碍(むげ)に断れないのが辛いところだ。^^

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