表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/40

街へ戻る道中〜SM編〜

 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 魔王城を出で、俺達は外に止めている車へと乗り込み、一旦ミーティアの街へ戻る事にした。

 ラックが開発した車という乗り物は八人乗れる仕組みとなっている。座る席は3列あり、一番前の列は車を操る席を含めて2席ある。2列目、3列目は三人ずつ座れる仕組みとなっている。

 ラック曰く、そんな車の仕様を''ワゴン''だとか言うらしい。

 ラックは操作する為に一番前の列に座っている。2列目にはメリッサとヨウラン、3列目には俺とミネルバが座っている。

 そんな帰りの道中、俺はミネルバからお仕置きを受けていた。


「……あのぉ~ミネルバさま?」


「あぁ?誰が勝手に喋ってよいと言った?」


「すいません……」


 俺は一番後ろの席で身ぐるみを剥がされパンツ一丁になり、ロープで亀の甲羅のように縛られて拘束されていた。

 おまけに目隠しもされて何も見えない。どうやら勝手に発言をする権利も失っているようだ。

 車が時折大きく揺れるたびに俺の体はビクッとなり、何も見えない事も相まって俺の心は恐怖に苛まれていた。


 あぁ、目隠しで拘束をされながら何処かに移動されるって、こんなに怖いんだ……


「勝手に喋った罰よ。これでも咥えておきなさい」


「ガフッ!」


 目が見えないので何を咥えさせられたか分からないが、何か丸いものを口に咥えさせられた。その丸いものにベルトを巻き、頭の後ろに固定されたようで、その丸いものを吐き出そうとしても吐き出す事ができない。

 口が開きっぱなしのせいで次第に顎が痛くなってきた。


 地味だけどなんて効果的な拷問方法なんだ……


「さぁ、泣いて喚きなさい」


 ジュゥ…


「むむむむむむむ!!!!」


 声にならない叫び声が車中に鳴り響く。味わった事もないような熱さが『ジュゥ…』と音をたてて俺の胸に襲いかかってきた。どうやら蝋燭ろうそくろうを胸に垂らされたようだ。


「ほ~ら、蝋燭の味はどうだい?私に教えてごらぁん?そしたら許してあげる」


 ジュゥ…ジュゥ…


「ムー!!ムー!!ムー!!」


「そうだった、今あんたは喋れないのだったわね。うっかりしてたわ!オーホッホッホッ!!」


 ジュゥ…


「ムゥゥゥゥゥ!!!!!」


 鬼だ悪魔だ……こいつは魔王よりよっぽど魔王してるよ……

 なんでこんな残虐ババアが勇者のパーティーに所属しているんだ?魔王軍にのしをつけてこいつを送りつけてやりたいぜ!魔族としてこいつなら立派にやっていけるよ!

 そんな光景を見かねてか、メリッサがミネルバを止めようとしてくれた。


「あのぉ~、ミネルバさん。もうそろそろ……勇者様も反省してますし……」


「甘いわ!メリーちゃん!メリーちゃんは優しくていい子だけど、こいつにそんな優しくしたってつけあがるだけよ!しっかりと罰を与えなきゃ!」


 ジュゥ…


「ムー!!!!!」


 しっかり反省してるからもう許してくれ!!蝋燭はもう嫌だ!

 喋る事が出来ない為、そんな俺の想いがミネルバに通じる訳は無く、蝋燭の蝋が俺の肌に『ジュゥ…ジュゥ…』と次々に襲いかかってくる。


「ねぇ、ミネルバ。ヨハンの反省はともかく、ラックの教育になんだか悪そうだし、そろそろそこらへんで止めておいたら?」


「僕の教育はどうでもいいんですが、そろそろ目障りなんで止めてほしいです」


 ヨウランとラックもミネルバにやめるよう促してくれた。さすがに三人に止められたらミネルバも言うことを聞かざるおえないようで、「わかったわよ」と言って蝋燭の蝋を垂らすのを止めてくれた。

 ついでに目隠しと口のボールを取り、ロープの拘束もほどいてくれた。体の自由がしばらくぶりに戻ってくる。


「はぁ……死ぬかと思った……」


「大袈裟ね。そんなに熱くならない蝋燭を使ってあげたのに。本当にヘタれなんだから」


「アレより熱いヤツがあるのかよ……」


 拷問の世界は奥が深い。先程の体験はその世界では上っ面の部分。氷山の一角でしかないという事だ。

 絶対に敵軍には捕まらないようにしよう……

 そんな事を考えていると、車を操っているラックがいつもの淡々とした口調で俺に質問をしてきた。


「ところでヨハンさん?宿を出る前に『デュランダル』を失くしたと言ってましたけど、宿がある『ミーティアの街』で失くした可能性は無いんですか?」


「いや、どうだろう……。実は宿で持ち物の確認をする前からアイテムボックスのカバーが空いていてな、もしかしたら何かの拍子でデュランダルが気付かずにアイテムボックスから飛び出てしまったのかもしれん」


「さすがに馬鹿のヨハンさんでも、あんなそこそこ大きさのある剣が、腰についてるアイテムボックスから飛び出して気付かないとは到底考えられませんけど……」


「オイ、馬鹿は関係ないだろ」


 ちくしょ~……自分が少し頭が良いからって人の事を馬鹿にしやがって……しかし、今は失態をおかしたばかりだ。ここは堪えねば……


「そうなると……本当に手がかりがありませんね……。一刻も早く他人の手に渡る前にデュランダルを見つけないといけないのに……」


「えっ、どうして?デュランダルって試練をクリアした俺以外に扱える奴はいないんだろ?デュランダルを悪用される心配もないし、そんなに焦らなくても……」


「はぁ!?何を言ってるんですか?『勇者』の資格を持っていたら誰だってデュランダルを扱えますよ!?」


「えっ、マジッすか!?」


 えっ、なんで?せっかく苦労して試練をクリアしたのに、他の人も扱えちゃうの?マジっすか?

 ラックの口から放たれた衝撃事実に、俺の頭は理解が追い付かずに混乱していた。

読んで頂きありがとうございます。


この作品が少しでも「面白かった」、もしくは「続きが気になる」と思って頂けましたら、ブックマークお願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ