2091年6月 Part4 魔法について調べてみた
退院してから数日が経ち、いつも通りの忙しい日々が戻ってきた。今は次の予定までに少し時間があるから家で魔法について調べている。もちろんネットで。
“魔法は魔臓に蓄えられた魔素を消費することによって発動が出来る。魔法が使える人達は総じて胃の魔臓への変異が見られ、食欲の変化はほぼないが魔素の定期的な摂取が必要である。魔素量の大小は魔臓の大きさと組織内密度が関係する。多種多様な魔法が存在するが人によって違う魔法が行使できる理由は未だ不明。”
ウィ〇ペディアにはこう書かれていた。魔臓については宮地さんも似たことを言ってたなぁ。確かになんで人によって適性が変わってくるのかは知りたい。学園に入学したら訊いてみよう。
自分の使える魔法についても少し調べてまとめてみた。
《闇魔法》
光魔法の対となる魔法。この魔法の上級魔法はかなり強力
魔素量小→デバフ
魔素量大→デバフ+元素魔法の打ち消し+影の利用等々
《空間魔法》
術師の周りの空間を自由に操れる魔法。有用性はあまりない。
魔素量小→異空間収納庫
魔素量大→不明
*魔素量の大きい空間魔法使いについての情報が全くない
《創造魔法》
術師の想像した事物を具現化させその操作を可能とする魔法
魔素量小→無し
魔素量大→色々
*魔装の上級魔法。魔素量の少ない人は第一この魔法は使えない。
ふむふむ、なるほどなるほど。初めはなんかパッとしない魔法ばかりだなぁと思っていたが中々面白い魔法ばかりだ。
闇魔法使いは元素魔法使いの天敵ってネットに書かれる理由がよくわかる。切り札の攻撃魔法がすべて打ち消せるんだ、元素魔法使いにとっては堪ったもんじゃない。
次に創造魔法、これは色々と動画に上がっていたがどれもCGに見えてしまうのは科学発展の弊害だろうか?火を噴く龍やスター〇ォ―ズで見るような光剣を使ってる映像ばかりだから科学だけのせいじゃないと思う。まぁそういうことでYou〇ubeとかに載ってる動画のような魔法であるなら結構使える魔法だと思う。
最後に空間魔法。ネットでは外れ魔法と書かれていた。異空間収納は魔素の消費が激しく魔道具で再現出来てかつ、収納量も俄然多いのだと。これだけを見れば確かに外れな魔法かもしれないが実を言うと俺が一番注目してる魔法がこの魔法なのだ。ほぼすべての空間魔法使いは魔素量が少ないらしいが自分はかなり多い。しかも外れ外れとは言われているが異空間収納は科学だけでは一生再現できない現象だ。ポテンシャルはかなりあるはずだ。
「繋様」
俺が色々と空間魔法の出来そうなことを予想してる後ろから加藤が俺の書斎に入ってきた。
「ん?」
「孝彦様がご帰宅なされました。それと繋様をお呼びです。」
なんだろう?父さんが平日の真昼間に家に帰ってこれるなんてほぼない。余程大事なことを俺に伝えたいんだろう。
「分かったすぐに行く」
気持ちを引き締めて父さんの書斎に向かった。
父さんの書斎のドアの前で息を整えてノックした。
「父さん?」
って言った途端ドアがバンって開き、父さんが涙を流しながら俺に抱き着いてきた。
「繋~助けて~!!!悪魔、悪魔が!!!」
「誰が悪魔ですって?」
ドアの前で仁王立ちしてこめかみに青筋を立てながら父さんに笑顔を向けるのは父さんの天敵、鍋島さんである。普通はお淑やかな出来る秘書そのものだが今の鍋島さんは凄まじいオーラを持っている。
「ヒッ!!!」
父さんは鍋島さんの鋭い視線から逃げようと繋の後ろに隠れた。
親が息子を盾にするなんて普通有り得ないがそこは俺の父だ
「こんにちは鍋島さん」
「こんにちは繋君。ごめんだけどそこにいる君のお父さんを私に渡してくれるかな」
「繋、だめだ!悪魔の声に耳を傾けるな!俺の生死が関わる!」
父さんが俺の後ろから必死に声を上げた。
「あん?」
「ヒッ!!!」
父さんが俺の後ろで怯えきった悲鳴を上げた。
やべぇ~鍋島さんがポキポキと指を鳴らしながら近づいてくる。纏ってるオーラが般若そのものだ。
父よ、許せ。俺はまだ死にたくない。
「どうぞ」
俺は素早く後ろにいた父を差し出した
「な!」
「あら、いつもありがとうね。少しここで待っててね」
鍋島さんが俺にニコッと笑うと逃げようとする父さんの首根っこを掴んで書斎の中に引きずっていった
「おい!繋裏切ったな!繋!かける~!」
懸命な抵抗も虚しく鍋島さんによって連行される父さん。
父さんの悲痛な叫びが閉まるドアによってかき消されたのを見届けた俺は手を合わせた。
南無。