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散財しすぎじゃね?

  澪をレィティに預け、ミルフィを伴い王都へと向かう準備をしようと町中へと二人で出る。

  王都より離れているらしいのだが、それなりの賑わいを見せている市を覗きながら。


「ここから王都までどの位離れているんだ?」

「徒歩だと二か月弱、馬車だと数週間ってところでしょうね」

「徒歩はきつい、だけど馬車だと御者も雇わないとな」


 何が有るのかは分からない。何かが分かる確証があるでもない。

 だけど、人生をやり直すと決めて此方の世界に来たヤツだっている筈なんだ。


「はぁ……」

 

 そんな事を考えながら、俺自身何がしたくてこちらに来たのかも見失っていた。


「と言うより、お前に強制的に連れてこられた気もするんだがな」

「何が、と言うですか…タカツグ様話の前後を抜いて話しかけられてもこまります」


 むすっと、少し上目遣いで見上げてくるミルフィに苦笑いで返し。


「で、お前の成長…俺に関連してるって言ってたな」

「流石にあの出張所ギルドでは確たる原因は分からないらしいのですが。このままでも埒は明かないし、どうせなら中央で調べた方が良いかなと」

「それお前一人じゃダメな訳?」

「いたいけな少女を一人王都まで旅をしろと!?」

「いや、お前天使だろうが」


 俺の場合分かりづらいのだが、成長が原因ならミルフィの身体つきがこう曲線を帯びていたと言うのも納得出来る。

 だが前例が無いらしいのだ。天界とやらでも成長する天使はいるらしい。

 だけど、それは功績を上げ天使としての格が上がる場合のみ。


「ま、支障がある訳でもないし…いいんだけどさ」

「ありますよぉ、今まで着ていた服全部買い直しですもん、勿論必要経費で落とせますよねコレ」

「必要経費?ギルドが出してくれるのか」

「日常品は魔導士マント以外はギルド対象ではありません、私はタカツグ様と運命共同体ですからね。勿論タカツグ様のお財布から出させて頂きました」

「おいこら待て」

「前回の夜盗退治でかなり稼いだでしょう」

「そりゃそうだけど、前もって言えやそういう事は」

「話そうとしてましたけど、タカツグ様はミオ様の事ばかり頭ん中いっぱいでしたし、その他は鍛錬をなさってましたしー」

「もしかして、構ってもらえなくて拗ねてるのか」

「犬猫みたいに言わないでください」

「…でも現に……っ」

「あれ、こないだの魔導士様方々じゃないですか」


 2人であーだこーだと言い合っていると、後ろから声を掛けられ振り向くと。


「あ、節約して夜盗に捕まりかけた商人さん」

「そこまで説明してくださらなくとも」


 ちょっとしょんぼりしているのが哀愁を誘う。


「…まぁ、それはそれとお買い物ですか」

「ちょっと長旅に出るので、その準備をしようかと」

「長旅?」


 少し蓄えたちょび髭をちょいちょいと触り、商人が尋ねてくる。


「王都まで行こうかと」

「それはいつ出発なさるので?」

「早ければ早い程良いんだが、徒歩で行くか馬車で行くか決めかねていてね」

「あ、それでしたら私らも王都に戻るので、宜しかったらご同行されませんか?」

「……絶対ついでに護衛費浮かせようとしているだろうコレ」

「いやだなぁ、恩返しですよ恩返し…あのままだと命すら危なかったんですから」

「あいつら、殺すつもりは無かったみたいだぞ」

「夜盗を信用など出来ません」

「んー、聞いた話だとちょい訳ありなようだったんだがな」

「……そりゃ聞いてますよ魔導士様。でも盗人は盗人です。荷や金を奪われれば私らは生活出来ません。身代金とも言ってましたし魔導士様もお聞きになっていらっしゃったでしょう?」

「そりゃ、まぁな」

食うに困る、か。

「庇うつもりはねぇよ、罪は罪だ。だけど理由が理由…いまではちゃんと罪を償うために働いている…なら立ち直る機会ぐらいあってもいいだろう」

「…まぁ、命の恩人の貴方様が仰るなら」

「その話はまぁ、置いといて…送ってくれるって言うのなら、護衛位やるぜ」

「助かります。幸い魔導士様のおかげで荷は無事でしたので無事商談も終え、そろそろ王都に戻ろうかと準備しておりました所でしたので」

「いつ出発だ?あと王都まではどの位かかる?」

「早ければ、三日後ですね…王都まで日数的には何もなければ二週間位ですね」

「分かった、それまでに此方も食料などを買い込んでおくのでこちらを出る前日にでも、また声を掛けてくれるか?」

「魔導士ギルドの方でよろしいので?」

「そうだな、そうしてくれると助かる」


 利害一致。これで足は出来た。


「タカツグ様タカツグ様、荷物とかかさばるのでマジックアイテム購入しませんか?」


 商人のおっさんと分かれ、再びミルフィと市を見て回ると魔導士アイテムの店があるのに気付く。


「マジックアイテムか」

「入ってみましょうよ」


 ぐいぐい引っ張っていくミルフィの胸に腕が当たり、存外悪い気分でもない。

 何度でも言うが、俺はこう曲線のある女性が…っと。


「タカツグ様のエッチ」

「お前俺の心読んだのか?!それとも何か魔法で」

「顔に書いてあります」


 どうやら鼻の下を伸ばしていたらしく、すんとした目で睨まれ


「仕方ないだろう、俺だって男なんだし」

「襲われたらいくらタカツグ様と言えど容赦は致しませんので」

「やらねぇよ、阿呆」


 そう言いつつも、最近大人びて来たミルフィに

すこしだけムネキュンしてるのは内緒である。

 ドアを開けると古い鐘の音がして。

 

「いらっしゃい、ゆっくり見てっておくれ」

 

 と奥の方から少ししゃがれた声がする。

 見渡すと、どれもファンタジー小説で見た事のあるようなものばかり。


「何かようやくファンタジーっぽくなってきたな」

「天使が居るでしょうか、私がっ!」

「雰囲気の問題だよ…ってこれなんだ?」


 妙に引かれる袋。現代で言うリュックみたいな物。ばあさんが奥から声を掛けてくる。


「ああ、そいつは空間を捻じ曲げて見た目以上のものが詰め込めるアイテムだよ」

「空間?」

「そいつだと、食料1、2週間分位は入れられるね。時間もある程度歪めてあるから、腐る心配も無い。あといくらでも水が湧いて出る革袋もあるよ」


 値段を尋ねると、まぁ払えない金額でもない。


「水と食料問題は片付いたな。じゃ、あとは日用品だけか」

「タカツグ様、コレどうです」


 珍しくミルフィが手にしたものは手甲で、防御魔法特化型のミルフィに必要か?と首を傾げる。


「タカツグ様用ですよ、ご自分への魔法を跳ね返す物らしいです」

「ふぇ、お嬢ちゃん。良いものに目を付けたね…ただそいつは持ち主を選ぶ。気に入らない相手には単なる防具に過ぎない。ダンナが気に入られるかどうかだね」


 そう言われ、モノは試しと右手に装着してみる。


「…うん、分からねぇ」

「ちょっと火傷するかもしれないが、試してみるかね」

「いや、火傷はちょっと…って婆さんっ!いきなり火を出すな」


 ぼ、と言う音と共に小さめの火の玉が飛んでくる。右手で跳ねのけると、しゅんと消えたが。


「ほほぉ、気に入られたねダンナ……」


 目を見開いた婆さんの口元がにやりと歪む。


「そいつはある意味呪いのアイテムだ、良くも悪くもね」

「そんなん置いてんじゃねぇーっ」

 

 だが、外そうにもがんとして外れない。


「強制お買い上げかよ」

「毎度―」


 腹立つなおい、と婆さんを睨んでも後の祭り。代金を支払い、店の外に出る。


「高くついたな」

「でも今のタカツグ様には必要な物かと」

「ユニーク魔法使う度に自分にも降りかかってちゃ意味ねぇもんな」


 そう、言って手甲を装着した右手を夕日に染まっていく空へと翳してみた。


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