コロナ不満箱を歌舞伎町に設置しよう!
「小地知事のバカヤロー」
ペッと唾を吐いた。
「こっちは、生活が懸かってるんだ!」
「もう金ねぇ~」
「俺たちをイジメるな~」
男たちは言葉を吐き出した。
そして、最後にペッと唾を吐いた。
全員が皆、勢いよく。
彼らは、いわゆる『夜の街』で働く者だった。
ホスト、バーテンダー、店の関係者など。
新型コロナウイルス感染がいまだ収まっていないため、
都知事やメディアからやり玉に上げられていた。
でも、彼らの顔をスッキリしたかのようだった。
何もかも吐き出して。
「少しは不満を抑えられたかな」
太田は言った。
時期総理候補にも名を連ねる若手有望議員だ。
そう、これは政府が都に提案し、
新宿歌舞伎町に設置した『コロナ不満箱』だった。
「まあ、最初は面白がってやってくれるだろう」
提案を進言した自称名探偵の藤崎誠は応えた。
藤崎と太田は官僚時代の同期で親友だ。
「一石二鳥と言えるかな」
太田は藤崎に微笑む。
不満を吐き出す以外にも、この箱には目的があった。
それは市中、特に歌舞伎町でのコロナ感染率の調査だった。
それまでは下水道の糞尿により、市中の感染率を計測しようとしていた。
そんなことをするならと、藤崎が太田に呟いたことがキッカケになっていた。
もっとも警戒されている人たちの感染率を調査すればいいと。
しかも、彼らの不満を少しでも和らげることができると。
今日も誰かが叫ぶ。
「コロナなんかに負けね~」
「ぜったいNO1になってやる」
そして、彼らはペッと唾を吐いく。