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5枚目、グレイス・ハント

 受け取った装備を着た俺は強い非現実感を感じて居た。

 鉄の胸当てと左腰につけたショートソード、下半身はジャージよりも着心地の悪い動きやすいズボン。靴はそこの厚いブーツだ。スニーカーの方が動きやすいが、多少の厚さが無ければ危険らしい。左太ももには長細いポケットが付いており、全長20センチほどの大きさのナイフを収納している。

 腰回りのベルトには小さなポーチが付随し、中身は止血剤となる軟膏と包帯、低級に認定される毒を中和出来るポーションが入って居た。ポーションはガラスの試験管に入っているため、割れないようにポーチ内で仕切りが作られている。


 自分の体を見下ろし、腰のショートソードのbグリップを握る。鞘から少し出そうとすると感じる重さは、薄れていた現実感を取り戻す。装備の重さを感じて、鉄の鈍色の光を見て、ようやく実感する。自分はこの先この世界の為に、命の奪い合いをする事を。



 ◇◇◇


 俺とエクレールが合流したタイミングでシャードもこっちへ来た。そのまま俺とシャードの賭けの話を説明している。当然ストーカーの事に関しては言っていない

 シャードはまだ装備を着てない。俺に情報を与えるつもりがないのか、まだ職を決めていないのか。

 俺はチュートリアルカードで剣士職のことが書かれて居たから剣士の装備を貰った。この世界にはステータスに職業が刻まれることはない。だから自分にむいている職業は自分で探し出さなければいけないと言っていた。むいてる職業とそうでない職業とではスキルの習得難易度が全然違うらしい。剣士として数年やったが、習得したしたスキルが少なく、弓兵に転身したらすぐに名のある冒険者になった。このような話は珍しくないらしい。俺も数ヶ月、数年後には全く別の職をやっているかもしれない。


 シャードの説明に気になる点はなく、特に問題も起こらず奴は去って行った。


「こっちで色々決めちゃってごめん」


「別にいいよ。でもなんでシーラントはシャードを警戒しているの?」


「エクレールから俺はストーカー被害についての相談をされてたよね」


「うん。してたけど……まさか!」


 エクレールは答えにたどり着き、声をあげた。


「うん、そう。あいつは君をストーキングして、最終的に殺した」


 俺はそれを肯定、説明する。


「えっ……嘘……」


 流石に自分を殺したのが奴だというところまでは考えていなかったようだ。


「勿論『信じろ!』なんて言わない。俺と君の間には大きな差がある。君からしたら俺は未来人だ。その上、俺が言ってることは俺に都合が良すぎる。俺は君の彼女だと伝え、俺たちのパーテーに参加したいと言っている男は君のストーカー。嘘くさく感じるのは当然だよ」


「私は……あなたを信じるわ」


「そう言ってくれるのは嬉しい。けど……」


 本心も混じってはいる。でも、信じきれてはないと感じる。


「ゆっくりでいい。俺は君との関係をゆっくり進みたい」


 ちょうど騎士に名前を呼ばれた。どうやら戦闘訓練1組目が俺たちのようだ。聞いた感じ完全に実戦なんだが。


「いきます」


 彼女の答えを聞かずに背を向け、戦場へ向かう。俺たちは戦闘をする所は長方形の箱の中だった。薄く緑がかった透明の壁は結界のように見える。


「あの結界内では痛みを半分ほど半減します。また、あの中で死んでしまった場合結界の外にある円の中で蘇る事が出来ます。しかし、一度蘇ると再使用に2日かかりますのでなるべく控えていただけると嬉しいです」


「わかりました」


 すごい技術だ。痛みを軽減し、死んでも蘇らせることができるなんて……神が関わっているのか? 俺のカードのように。

 これが肉体の時を戻し復活するなら俺のカードもあの中でならうち放題かもしれない。


「この中で例えば右手を失ったとして、外に出た時には再生しているんですか? 時が戻ったみたいに」


「この中で負った傷であれば出た時点で再生しますね。時を戻しているのではなく体を再生させるています。なので、中でスキルに覚醒した場合しっかり外に引き継がれます。ただ、1日に決まった時間しか入れません。規定の時間を過ぎたものは強制的に外へ転移させられます。我々はこの結界を『神の慈悲』と呼んで居ます」


 時は戻らないか。惜しいな。カードの無駄打ちができるなら。全てのカードを確認し、連携やコンボを考えられたのに。まぁ、そんなうまい話はないか。

 しかし、神によってもたらされたという事はどこの国も持っているような物では無いだろう。ならこの国の兵士は他の国よりも強いかもしれない。俺が知らないという事はこの結界は常識では無いし。おそらく城を出る時になんらかの契約を結び情報漏洩を避けるだろうな。


 俺は結界付近の地面に書かれている白い魔法陣の中に入る。転移者を集めるまで待っててくれとの事だ。

 今の内にカードの厳選とあの能力を試しておこう。


 それから十数分後。ようやく全ての転移者が集まり、説明が開始される。


「では、戦闘訓練を始めます。本来は基礎訓練として素振りや立ち回りを行う予定でしたが、実戦形式で戦いたい方や人の能力をよく知りたい方、適正職がわからない方などは最初に実戦形式の訓練を受けることも可能です」


 そこからはさっき聞いたのとそう変わらない結界の説明だった。結界は大きく、広々と立ち回れそうだ。


「以上です。質問は常時受けて居ますので、遠慮せずお聞きください。それでは、転移!」


 騎士の言葉によって魔法陣が発動。白い光に包まれ。視界が開けた時には俺は結界内にいた。

 集めた事からわかっていたが、周りを見回してみると俺たちの戦闘を転移者全員が見るらしい。

 全員の顔も人数もわからないので本当に全員かはわからないが。ほとんどの人が注目しているとは断言できる。


「双方戦闘の内容は公開してよろしいですか?」


 ここで確認を取るのか? 普通もっと前だろ。まぁ、あっち側も転移者の実力や性格、戦い方なんかを知っておきたいだろうからな。断り難い状況で聞くか。


「わかった」 「ああ」


「実戦訓練ーー開始っ!!」


 開始の合図と共にハルバードを持ったシャードが走ってくる。俺との距離は目測で30メートル。すぐに射程圏内へ入る事になる。


「カード()()()()


 俺は小声でスキル名を呟く。現れるのはカードを収納した本ーーではなく。剣を携えた腰とは反対、右腰に長方形の薄い箱が現れる。これは能力本(カードデッキ)の能力の一つ。設定した10枚までのカードをしまえるケースで、わざわざ本からカードを選ばなくていい。その上、カードの名前を呼べばそのカードのみが触れるという優れものだ。


 俺はショートソードを引き抜き、応戦態勢に入る。


「らぁぁっ!!」


 シャードは斧頭を振りかぶり、叩き落としてくる。


 ショートソードの腹で斧の刃を防ぎ、左手でカードを引き抜く。


「リトルフレイム!」


 カードホルダーの中には一枚音声認識は発動したようだ、念じただけでは意味がないってのは少し不便だな。


 俺の声に警戒したシャードは飛び退くが何も起こらない。


「ハッタリか?」


 俺は首をひねっているシャードに駆け出す。槍は懐に入られると弱い。素人考えだが、失敗を恐れていたら何もできない。

 焦って俺に俺に突き出された槍先を右に飛んで回避。しかし、そのままハルバードをなぎ払う。

 斧頭での一撃に切り替えたようだ。

 俺は再び剣の腹で斧の刃を受け止める。左腕も使い、完全に抑え込めた。


 一瞬の膠着状態。これを待っていた。俺の強み。それはノーモーションからの能力行使だ。

 俺は右膝をシャードへ向ける。


 既にこのカードの発動キーは暗記している! 俺は人生初の攻撃カードを使用する。


 ーーーーーーーーーー

 属性魔法カード 【リトルフレイム】

 発動キー「リリース」


 条件 『ーー』

 効果 『使用者の前方に直径30センチほどの火球を生成、射出する。』


 備考 出現場所は使用者の任意の部位の前方

 ーーーーーーーーーー


「リリース!」


 俺の右膝前方に火球が出現。射出し、シャードへと向かう。


「なぁっ! っちぃ!」


 突如出現した火球を胸にモロにくらったシャードは後ろへ吹き飛ばされる。奴の服装は俺と同じものだ。鉄を溶かせるとは思えないし、直接的なダメージは少ないかもしれない。

 煙と共に立ち上がったシャードは息を荒くし、槍を手放してしまっていた。鉄に守られていない部分は燃えてしまっている。


「まだだっ!」


 下級でこの威力とか、30センチって意外とデカイとか、考えたい事は沢山ある。

 それでも!この隙を逃さない!


 俺がポーチに入れたカードは3枚。1枚目は『リトルフレイム』。残りは同時に使う。名前を呼ぶ必要はない。


 ーーーーーーーーーー

 コンボカード 【急流(トレント)

 発動キー「リリース」


 条件 『ーー』

 効果 『急激な水の流れを生む』


 備考

 使用回数 5回

 ーーーーーーーーーー


 ーーーーーーーーーー

 コンボカード 【氷河(グレイシャー)

 発動キー「リリース」


 条件 『ーー』

 効果 『全てを凍らす冷気を付与する』


 備考

 使用回数 5回

 ーーーーーーーーーー


「リリース!」


 二枚のカードが手から消え、剣にエネルギーが流れるのを感じる。

グレイス・ハント(氷河の侵食)

 脳内に声が流れる。これがこのコンボの技名らしい。

 剣の柄から水が吹き出す。その長さは刀身を超え、ロングソード刀身と同じくらいだ。

 その急流を氷が侵食し、巨大な刃とする。俺は両手で剣を上段に構え、斜めに振り下ろした!


「グレイス・ハント!」


 シャードは固有能力だろうか、手放していたハルバードを出現させた。それを横向きに構え刃を止めた。


「うおぉぉぉぉ!」


 力任せに叩きつけられた氷は砕け、再び水が吹き出す。ハルバードに引っかかっていたのは氷の刃のみ。

 ストッパーが無くなった剣はハルバードを通り過ぎーー


 ーー刃を阻むものは無くなった!


「グレイス・ハントッ!」


 吹き出してた水は再び凍り、槍の下を通った刃はシャードの首の右側を薄く切り裂いた。


「そこまで!」


 騎士の声がかかる。


 ふぅ、終わったようだ。

 足元に魔法陣が現れ、再び視界が真っ白になった。

残りカード枚数−94枚





読んでいただき本当にありがとうございました。

誤字脱字、矛盾点等ございましたらご指摘していただけると幸いです。また、感想を頂けるととても喜びます!

よろしければ次回もご覧ください。

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