3枚目、『EXカード』
「最後にこれからについて説明をいたします。皆様は今後数日間この世界の事を学んだ後、世界を巡っていただきます。一人で旅をするのも良いですが、仲間をがいるというのは素晴らしいものだと私は思っています。
これにて私からの説明を終わります。是非この機会に転生者様同士の親睦を深めてください。共に世界を回るパーティーを結成するというのもいいと思います。
これからは騎士が皆様を回るので、質問があればそちらにお願いします」
そう述べて金色の鎧を着た騎士は国王の横についた。国王の近衛騎士なのだろうか。随分と偉い人に教えられたのかもな。
説明にひと段落ついたからか会話をしている人が多い。周りはほぼ他人だろうにすぐに会話している。情報交換や、相手の人間性を探っている。パーティーに関しての相談をしている人も一定数いるか。
ん? 国王が悲しそうな表情で指示を出している。国王ならもっとポーカーフェイスとか出来るもんじゃないのか? 誰かに気を使ってるとか? いや、考えすぎか?
あっ!
国王が指示を出した兵士を目で追っていると未だに目を覚ましていない転生者5人を抱き上げて連れて行った。転生者はぐったりしていて、顔が見えない現状では生きてるかの判断はできない。
あれはつまり……まぁ、そういう事なのだろう。思えばこの空間に40人はいないと思う。細かく数えてはいないが、おそらく25〜30人かな。思ったより多くの人が転生に失敗してるな。女神様はおそらく40人フルで送ると言っていたし、転生に完全に失敗すると体すら残らないということか。
少なくとも今は無事にこっちに来れた事に感謝しよう。
俺は枝垂と話そうと彼女の方を向く。また目があった。ちょうど同じタイミングでこっちを向いたようだ。
「ねぇ、神羅くん」
やっぱり少し距離を感じる。友達以上恋人未満といった感じだ。
「何ですか?」
「やっぱり私はあなたと恋人だった事を思い出せない」
しかないか……
「わかって……います」
「でも……あなたと何もなかったと思うと、心が締め付けられるように痛いの。私にはこの気持ちが恋なのかどうかわからない。だから、私はあなたと一緒に行きたい」
「はい」
「……ごめんなさい。私は記憶を絶対取り戻すとは言えないし、あなた以外の人を好きなるかもしれない。今私がすごい自分勝手な事を言っているってわかってるわ。それでも……こんな女でも、本当にいいの?」
彼女は記憶を失っている。なぜか死んで転生して、急に俺とは恋人関係にあったなんて言われて。戸惑わないという方が無理がある。俺との距離感も測りかねている筈だ。それでも、俺を気づかってくれる。
優しい。やっぱり彼女は彼女だ。
ダメでもともと、0から始めるつもりだったんだ。想定していた最悪よりもずっと良い。なら、俺の答えは考えるまでもない。
「うん。そんな枝垂がいいんだ」
あっ!つい名前で呼んでしまった。
「ああーうん。もう敬語はやめましょう。ここは会社でもないしね。それに私はもう桜木 枝垂じゃないわよ?」
「そうだな。これからよろしく」
俺は彼女に手を差し出した。これはーー
「わたしからもよろしく」
ーー俺と彼女の新しい一歩だ。
「じゃあ、ステータスの共有をしたほうがいいよね」
「そうね。今ステータスを観覧出来るようにするわ」
俺も自分のステータスを出現させ、不可視だった所を長押しする。二秒ほど押したところで他の状態を選択できるようになった。選択肢は二つ。一つ目は『可視化』。二つ目は「不可視」
俺は可視化発動させる。
しかしこれ、どうにかならないかな。少なくとも今の俺のステータスは出現させている限り誰でも見れるわけだ。距離があっても千里眼のようなスキルを持った人もいるだろうし。俺も遠視系のカードは持っている。やろうと思えば他人のものも除けてしまう。ただそれをやるのはどうかと思うし、今カードを使うのはもったいなからやらないけど。
「ん。できたよ」
「私も」
さて、彼女の新しい名前はなんだろな。
△△△△△△△△△
《名 》エクレール 女 Lv1
《種族》人族・転生者
《ステータス状態》 可視
AP 30/30
MP 30/30
付与スキル
・『青女神の加護』
・『人語自動翻訳』
固有スキル
・【騎士の煌めき】〈戦闘職〉
職業スキル
・【初級水属性魔法】
・【光属性魔法】Lv1
・【ストライク】
・【クロスライト】
経験スキル
・ーー
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「なんで初級水属性魔法にはレベルが無いのに、光属性魔法にはレベルがあるかわかる?」
「うん? しん……えと、シーラントには魔法がないみたいだね。レベルが無いのは初級止まりでこれ以上昇級しなくて、レベル付きはレベルが上がれば高位の呪文も使えるらしいわ」
エクレールの職は魔法剣士型なのか? 固有スキルの感じから光属性魔法は彼女の能力だと思う。だとしたら、初級水属性魔法は『青女神の加護』の効果か?ならなんで俺にはないんだ?
青女神が特別だったのか? それとも彼女のみ? あーソースが少ないからわかんない。
俺の能力、カードの中で気になるのは『EXカード』か。
「それで、シーラントの能力のカードデッキ? ってどういったものなの?」
ちょうどいい。今確認しよう。俺はカードデッキ出現と念じる。すると、俺の目の前に浮遊する本が出現した。
「これがカードデッキ。この中にカードが100枚入っていて、俺はこれで戦う事になるらしい」
俺はさっき確認したカードデッキの仕様を彼女に説明しながら、EXカードを手に取り、その能力を確認してみる。
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EXカード 【リザレクション】
条件 『発動対象が死後二十四時間以内である事』
効果 『死んだ物を蘇生する』
備考
私はあなたに説明すべき事を失念していました。これは『公平』の体現者である女神にあってはならないことです。私はあなたにお詫びしなければなりません。
私たちは自分の転生させたものに加護と初級属性魔法を授けています。
私はこれを独自判断で変更する事にしました。本来光属性初級魔法を授けるところを、あなたの保有する6枚のブランクカード一枚に神の奇跡であるリザレクションを封印しました。このカードによって、あなたは一度だけ神の奇跡を発動する事ができます。
しかし、初球魔法は授けられません。あなたにこれ以上授けてしまうと公平ではなくなってしまうので。
ただ私は、あなたがその世界を救ってくれる事を願います。
ーー白の女神
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俺は別に名前なんて気にしていない。それなのに随分と気にかけてもらった。ただ。ただ一つ言いたいことがあるとすれば。『女神様は割と自分勝手なところがある』という事だ。
リザレクションはとんでもないカードだ。人だけでなく、生命の死を無効にできるのだから。他のカードと組み合わせれば自分自身に使う方法もあるかもしれない。
ただ……初級魔法を与えない事とか、ブランクカードを勝手に使うなど、割と自由にしているようだ。
いや、本当に感謝していますよ?
……本当ですよ?
閑話休題
「なるほど。そういう能力なのね」
「うん。ただ、エクレールのステータスを見ると本当にきつそうだ」
「確かに使えば使うほど手数が無くなりそうな能力だけど、そんなにまずいの?」
「何がまずいって俺はAPもMPもないんだ。職業スキルを打つにはどの強さでも必ず一枚消費する。そうだな……例えば、強さを五段階で評価したとして、敵は三段階の強さの技を使えるとする。俺はそれを打ち消すには三段階目を使わないといけないが、敵はAP/MPのある限り何発でも打つことができる。しかし、俺は一回しか使えない。一度目は凌げても次は当然別のカードを使う事になる。俺は継続戦闘能力が極めて低いといえるし、魔法カードは既に封印されている決まった種類の魔法しか打てない」
俺の能力は使えば使うほど進化するようなものじゃない。だんだんと失っていくものだ。小さなミスが、今日のちょっとした能力の使いすぎが、明日や数週間後、数ヶ月後の俺を殺す。
「確かに、これは難しいわね。でも、能力の多様性がとても広い。カードの使いどきさえ見極める事が出来ればこの力はきっとあなたを助けてくれる」
「ああ。こんな俺だが、本当いいのか。」
「ええ。むしろ私がお願いしているんだから」
ピィィィーー
っと笛の音が鳴り響いた。
「もうすぐ日が落ちます。これより食事の時間となるので私についてきてください」
先程の金色騎士に先導され俺たちは食堂に行き、夕食をとった。
その後は確実割り振られた部屋に行くという事だった。因みに男女は分かれていて。男性陣は西、女性陣は東の部屋だ。
俺たちが泊まる部屋の内装は簡素だった。城内ということもあって派手で豪華ではあるが、家具はテーブルと椅子、シングルベッド。それにクローゼットがあり、壁には鏡がかかっていた。ベッドの前には窓が付いている。
俺はベッドに腰掛け、カードデッキを顕現する。
今のうちにチュートリアルカードを使用しておこう。
俺はカードを5枚引き抜いた。
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