表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

2枚目、『今は最強の転生者』

 どうやら俺は、彼女を救えなかったようだ。だが、彼女が俺との再会を望んでいるなら。俺は!


「因みに、彼女の魂の強度は80です。おそらく、記憶的障害を負います。それも、数年単位の」


 記憶的障害……考えられるもので言ったら記憶喪失とかかな。つまり、俺が転生しても彼女は俺と付き合っていた記憶どころか、俺そのものを忘れている可能性も高い訳だ。


 それでもっ!


「行きます。俺を、転生させてください」


 もう一度彼女に会えるなら、転生でもなんでもしてやる。0からだって構わない。


「わかりました。転生を選択したら伝えて欲しいと伝言があるそうです。『絶対に忘れたくない。もし忘れても、必ず思い出す』だそうです」


 彼女は、リスクを知った上で俺ともう一度出会う道を選んでくれた。それがたまらなく嬉しい。


「ありがとうございました!」


「いえ、これが私の仕事なので」


 思えばこの白の女神様は終始無表情だった。そんな事を思っていると、強い眠気が襲ってきた。


「申し訳ありません! 一つ伝え忘れた事が! 転生した際に新しい名前が与えられまーー」


 目を見開いて女神様が叫んだ瞬間。俺は完全に眠りについた。





 ーーーーーーーーーーーー


「……くんっ! 神羅くん!」


 肩を揺すられて目が醒める。目の前には愛しの彼女、枝垂の顔がある。


「ーーッ!! 枝垂! ……よかったぁ」


 彼女を抱きしめて安堵の声を出す。

 そこで気づいた。彼女の異変に。


「ちょっと、神羅くん!? 離して」


「あ、ごめんl


「もう、どうして急に名前で……やっぱりこれは本当?」


 枝垂は形のいい顎に手を当て、小声で呟いている。これは枝垂が長考するときにやる癖だ。そんな彼女を見て、頭がスッキリした俺はようやく現状に気づいた。

 俺たちは付き合あってから互いを名前で呼び出した。だが今、彼女は俺を苗字で呼び、名前で呼んだ俺に違和感を感じている。


 ……つまり、彼女は記憶を失ってしまったようだ。俺と彼女の近さから見て恐らくは桔梗のストーカー行為について相談を受けていた前後だと思う。女神様は数年と言っていたが、数ヶ月で済んだようだ。

 それでも……俺との関係を忘れられるのは……こう……心にくるな……


「ねぇ、確認をしたいのだけど。私は新羅くんと付き合っていた?」


 彼女は少し照れた表情で俺にそう聞いてきた。


「ああ……はい。俺から告白をして、付き合っていました」


 関係が戻ったなら俺も敬語を使うべきだろう。


「そう。ちょっとこれを見て」


 そう言って彼女は普段胸ポケットにしまっているメモ帳を見せてきた。そう、彼女はメモ魔だった

 そこには。


 ーーーーーーーーーー

 私へ


 私はおそらく記憶を失っていると思います。


 神羅 隕成くん 私の彼氏。黒髪短髪で、私より背が少し高い。おそらく胸に穴の空いたスーツを着ている。

 どうか彼のことだけは思い出して!


私は新羅くんに会う為にこのせかーー


 ーーーーーーーーーーー


 丁寧な字で殴り書きされていた。どうやら時間がない中書いたようだ。最低限の事のみ書いてある上、文字は途中で終わっている。彼女いわく、このメモ帳はポケットに入っていたのではなく、目覚めた時に手に握りしめていたようだ。ペンは見当たらないらしい。


「これは私の字だし、私が首を切る、切られるして転生したという事は覚えているわ。でも、ごめんなさい。私あなたが恋人関係だったという記憶はないの」


「そう……ですか」


 やっぱりか。彼女の首には生々しい血の跡がある。でも、やはり傷跡はない。

 転生のことを覚えているって事は、その記憶は忘れ無いようにプロテクションでも施すのだろうか。


 彼女の現状を知った俺はようやく周りを認識することができた。俺たちがいるのは大きなホテルのフロント程度の広さの部屋だった。その部屋のいたるところに人がいる。既に起きてる人が8割、未だ眠っている人が2割くらいだろうか。


「この広いホールで、神羅くんの隣で気絶していた事は幸いだったわ」


 たしかにそうだな。もしかしたらあの女神様が気を利かせてくれたのかもしれないな。


「あっ」


 彼女が声をあげた方を向くと40代後半くらいの男性がまだ眠っている制服姿の胸の大きな女性に触れようとしてた。それも、触れてはいけないところに。


「何やってるんですか!」


 俺や周りが寄って行くよりも早く、男の手を締め上げた好青年……大学生?は大きな声で中年男性を注意した。その声で目が覚めたらしい少女はキョロキョロ周りを確認し、何かを察したようで自分の体を抱きしめた。


「その、ありがとう……ございます」


 ここからでもわかるくらい頬を染めていた。あれは惚れたかもしれないな。青年は男の俺から見てもわかるくらい爽やかなイケメンだし。

 少し怖くなり、横にいる枝垂を見ると、目があった。


「どうしました?」


「いえ、なぜかあなた……神羅くんの反応が気になって」


 俺が口を開いた瞬間。先程の青年よりも大きな声がホールに響き渡った。


「願いに応えて頂き、感謝します! 転生者様!」


 そう言ってこちらに向かって頭を下げているのは、おそらく王族の、それも相当高い身分のものだと考えられる。大人数の護衛を連れているし、身なりもいい。俺の予想はそう遠くないはずだ。


 その後、王様(国王だった)から俺たちを読んだ理由、俺たちへの願いの説明を受けた。


 今から約一年前、この世界に突如五つのダンジョンが出現したようだ。ダンジョン自体は今までもあったが、そのダンジョンから出てくる魔物は特殊だった。通常の戦闘職の攻撃では、ダメージを与えられないのである。

 数々の犠牲を払った調査の結果、その五つのダンジョンから出現する魔物は『邪神の加護』というスキルを持っていたのだ。

 その加護を打ち破れるのは一部の者しか保有していない『神級武器』か、レアスキル『女神の加護』を保有した者とそのパーティーメンバーだけだった。

 ダンジョン内の魔物を間引かなければ魔物が溢れ、現世が地獄と化す。

 それを防ぐために俺たち転生者を召喚したようだ。

 俺たち転生者は全員『女神の加護』を保有していると神からお告げがあり、全人類の希望を召喚したらしい。


 因みに、俺たちの召喚と同時進行で、『邪神の加護』に対抗できる()()を世界中が協力して集めているらしい。


 俺たちの最終目標は、ダンジョンの奥に住まうダンジョンマスターを討伐し、この世界を救う事のようだ。

 ただ、ダンジョンマスターの存在は確認されておらず、他のダンジョンと同じならば存在するという事だ。



 閑話休題




 そんな説明を受けた俺たちは『ステータス』の確認をする事になった。

 先程まで国王が立っていた場所には甲冑を着た騎士が立っている。どうやら俺たちに説明をしてくれるようだ。


「それではステータスの表示方を説明します。皆さま利き腕の手のひらを上に向けて、『ステータス表示』と念じる。もしくは声に出してください」


 よしっ! 『ステータス表示』

 俺は無難に念じる事にした。横からは小さな声で『ステータス表示』と言っているのが聞こえた。


 △△△△△△△△△


 《名 》 シーラント 男 Lv1

 《種族》人族・転生者

 《ステータス状態》 不可視


 付与スキル

 ・『白女神の加護』

 ・『人語自動翻訳』


 固有スキル

 ・【能力本(カードデッキ)】〈戦闘職〉


 経験スキル

 ・ーー


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「これが……ステータス」


「各々ステータスは確認できたでしょうか。最初の設定では視認は自分しかできません。ステータス状態を長押しし、設定する事で他人へ公開することができます。同じく、所持しているスキルに関しても長押しする事でその詳細を調べることができます。今はまだ、ステータスは不可視状態でお願いします」


 俺は上から順にスキルの詳細を調べていく。


『白女神の加護』

 白の女神が授けた加護。邪神に対しての特攻を得る。また、自然治癒能力が上昇する。

 青の女神の加護と相性が良く、黒の女神の加護とは相性が悪い。

 加護に認められる事で一段階昇華できる。


『人語自動翻訳』

 種族名に人が入っており、言語を話す知能を持った者の言葉を理解できるようになる。また、こちらの言葉も相手は理解する。


 これが付与スキルか。おそらく担当した女神様の色がつき、全身が共通でもらえるスキル


 次は【能力本(カードデッキ)】か。


能力本(カードデッキ)

 スキル所有者・シーラントは100のカードを内包したバインダーを召喚することが出来る。

 尚、スキル所持者はAPやMPなどを得る事は出来ない。


「……これは」


 思わず声が出てしまった。でも周りの人達も同じようで俺の声を拾ったのは真横にる彼女だけだ。


 俺の固有能力【カードデッキ】は簡単に説明すると。

 100枚のカードを使える。使用したカードは消える。というものだ。

 例えば魔法ならーー

 ーーーーーーーーーーー

【属性魔法】ーー25枚


 種類は各属性5種。


 火属性魔法なら


 弱ーーリトルフレイム


 中ーーフレイム


 強ーーバーニングフレイム


 真ーーフレイムボルケイノ


 神ーーゴッドフレイム


 これが5属性分。


 火、水、風、地、光(聖)で各5枚。合計25枚。


 ーーーーーーーーーーーーー


 ーーという感じだ。他にも色々な種類があり、内訳はこうだ。


 ーーーーーーーーーー

 魔法ーー25種


 ブランクーー5枚


 ワイルドーー2枚


 jokerーー5種


 サモンーー5枚


 スキルーー35種


 チュートリアルーー5種


 ミラー&コピー ーー各1枚


 コンボカードーー15種


 EXカードーー1枚


 ーーーーーーーーーー


 このうちコンボカードのみ、それぞれの残り使用回数が書いてある。

 コンボカード以外は一回きりの使い捨てのようだ。今のところこのカードを入手する方法は記されていない。

 能力の説明的に、おそらくだがこのカードはもう手に入らないような気がする。少なくとも、入手法が記されていないから、簡単には入手出来ないと思う。慎重に使わなければ。

 俺は、100枚ある持ち札のみを使ってこの世界で生き抜けという事らしい。

 その上気になる一言がついている。AP、MPを得られない? どういう事だ?


「皆さま、ステータスにMPと書かれたらんがあるとおもいます。また、MP以外にAPと書かれている方もいると思います。

それは『技能スキル』の発動の際に消費するものです。魔法職の方は主にMPのみが表示されます。魔法剣士系統の方には両方が表示されている筈です。近接職の方は現在APしか表示されていないかもしれませんが、『生活魔法』というものを習得した際に、入手することが出来ますのでご安心を。

 余談ですが、別の職業にはまた別のポイントが表示されます。まぁ、転生者の皆様は漏れなく戦闘職だとお告げあったので説明は省きますね」


 ……ない。何にもない。戦闘職どころか生産職用のも。俺のスキルは使い捨てだが、ポイントの消費などを無視して発動できる。だからAPもMPも持っていない。使えない。というより、使う必要が無いから。

 他の転生者は強い技能スキルというのを持ってはいても、AP、MPの制約があるため上限までしか撃てない。なら、近接職でも使えるっていう生活魔法はどうなるんだ? まさかそれも回数制限ありか?

ちょっとこれ、ハードすぎなんじゃね。


「すいませーん! 俺、バーニングフレイム? ってところまで覚えてるっぽいんすけど、MPが足りないっす。これって発動できるようになるんすか?」


 敬語崩れの少年が騎士に向かって質問している。


「おお! 流石転生者様! バーニングフレイムをレベル1で習得しているとは。安心してください。レベルが上がればMPの総量も増えるので、使えるようになります」


「ありがとうございまーす」


 ふーん、なるほど。バーニングフレイムねー。俺も打てるよ……一回だけ。



 結論。()の俺は転生者の中で最強かもしれない!ただ……最終的には最弱になると思う。





明日からは毎日1話投稿となります。

読んでいただき本当にありがとうございました。

誤字脱字、矛盾点等ございましたらご指摘していただけると幸いです。

よろしければ次回もご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ