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可愛さ以外も

 ーーしばらくすると、一台の荷車がゆっくりと近づいてきた。


「もしかしたら乗せてってくれるかも!」


 アリアは思いっきり手を振った。アリア達の姿に気づいたのだろうか、荷車は目の前で止まる。中には夫婦が乗っているようだった。


ーーそこでアリアは渾身のぶりっ子を決めて夫婦にお願いをしてみた。


「港町に行きたいんですが、あまりに遠くて疲れちゃってぇ……乗せてってもらえませんか?」


 ここぞとばかりに可愛いポーズを連発する。


(見てなさい、可愛い私にかかれば誰でもメロメロなんだからっ)


 ーーしかし、アリアの訴えは届かず。


「あーダメダメ。急いでるんだから。」


 ーーいとも簡単に断られてしまった。


(この可愛さが効かないなんて……)


 アリアはショックを受けた。ショックを受けるポイントが違う気もするが。


 ーーアリアがしょぼくれていると、横からルークがスッと顔を出す。そしてアリアに代わってお願いをし始めた。


「どうか、乗せてくれはしませんでしょうか? 長旅で疲れていまして……お礼にこちらの宝石もおつけしますし」


 丁寧な言葉遣い且つ、麗しい(麗しいとしか表現できない)表情で夫婦を見た。……主に婦人を。何度も言うが、婦人を。

 すると、横に乗っていた婦人はルークの顔を凝視。そしてなんと態度をコロッと変え始めた。


「あらぁ、イイ男。あんた、そんな厳しいこと言わないで乗せてってあげましょうよ」

「え……」


 旦那さんは困惑。しかし奥さんの勢いに負けたらしい。


「ほ、宝石もくれるって言うしな。今回は乗せてってやるか」


 いとも簡単に承諾したのであった。


 ーー美貌は得である。


 アリアの可愛さはルークの美貌には劣るようだ。それを知って少しライバル視をし始めたのか、アリアはルークを睨む。だが、そんなアリアを気にする様子もなく、ルークはにこやかにお礼を言うと、荷車に乗り込んだのだった。



◇◇◇◇◇



 荷台で揺られているルークとアリア。


 ーーアリアはご機嫌斜めである。


 さっきの自分の可愛さがルークの美貌に負けてしまったのを引きずっていた。

 プリプリと頬を膨らませているアリアを見て、ルークは仕方なく声を掛ける。


「アリア、荷台に乗れてよかったじゃないですか。何をそんなに怒っているのですか?」


 ルークはアリアが怒っている理由に気付いていない。いや普通は分からないと思うし、はっきり言って大したことではない。しかし優しいルーク。心配そうにアリアを見ている。

 そんなルークにアリアはひねくれたように答えた。


「顔の美しい人はいいですねー。荷台にも乗せてもらえるし。」


 ルークは驚いた顔をしたが、すぐに事情を察し笑い始める。

 そりゃそうだ。心配して損したといったところだろう。


 ーーすると、ルークはアリアの横にストンと座ると、自分の方に顔が向くようにそっとアリアの頬を手で包み、顔を覗き込んだ。そしてこう言った。


「何を言うのですか。アリアは可愛いではありませんか」


 ーーさも当然のようにルークは言ってのける。


「こんな可愛らしい方の魅力が分からないなんて」


 その顔に迷いはない。ストレートに可愛いと言われて戸惑うアリアは、ただルークを見つめることしか出来ない。そんなアリアを気にする様子もなく、ルークはさらに少し考えたような表情をすると口を開いた。


「あっでも。可愛いのに気付かなくてよかったかもしれませんね」


 と言うと片方の手でアリアの顎に触れた。

 さらに顔が近づき、ルークは少しいじわるそうな顔をした。


「だって可愛いアリアを見れるのは私の特権なんですから」


 アリアの胸はドキドキと高鳴った。

 美青年との距離の近さもあるが、歯が開きそうな言葉を平然と言う人に始めて出会ったため。こういうことに免疫がない。


 可愛いとは自分で分かっていても、いざ人に真面目に言われると困ってしまうアリアだった。


「わ、分かりました。も、もう大丈夫です!!」


 想定していなかった展開にアリアは思わず顔を真っ赤にしてルークに背を向けてしまった。そんな様子のアリアをルークは不思議そうに見るのだった。


 ーーしばらくして、ルークが話しかける。


「そういえば、昨日はいろいろときつい事を言って傷つけたのではないかと思ったのですが……」

ルークは気にしていたらしい。申し訳なさそうにアリアを見る。

「大丈夫ですよ!」


 慌てて、アリアは全力で否定した。悪いことをしたのは自分なのだ。ルークが誤る必要はない。


「なら良かった。」


 ホッとしたルーク。しかし色々とルークなりに思うことがあるらしく話し出した。


「あれから考えたのですが、アリアは後先考えない所がありますよね」


 ルークの言葉がアリアの胸にグサっと刺さる。あぁ、結構痛そうだ。


「でも、自分にすごく真っ直ぐな方なんだなと知りました。実際この前の魔法ではハラハラしましたが、少年達を猛獣から守ったり、村をジリーから救ったり、そして先程のような少年への対応を見て暖かい方なのだなと。また、これらが幸いしてここまで旅が短縮もできたのであながち間違いではないなと思えました」


 どうやらルークはアリアに対して怒っているわけではなさそうだ。


「見直しました。少し不安もありましたが、その真っ直ぐさは誇るべきところでもあると思います。それに、あなたが自信を持って放つ言葉にはなぜか安心感があります。それもあなたの良いところなんでしょう。あなたは見た目を意識されてるようですが、中身も素晴らしい方だと思いますよ」


 ルークはしっかりと背筋を伸ばして座り直すと、アリアの前に手をだしてこう言った。とても真剣な表情にアリアはドキッとする。


「いろいろと失礼を申しましたが、私はやはりあなたと旅がしたい。これからも一緒にいてくださいますか?」


 拒む理由はない。アリアはもちろんと答え、出された手に握手をした。

 同時にここまで自分のことを分かってくれる人に出会えて嬉しく思うアリアなのだった。

次回、港町って怖い! お楽しみに!


(閲覧ありがとうございます!

森編はここまでです。これからはさらに話が進み始める予定です。)

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