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二人の青年

 ーー物語をとある場所に移行しよう。


 アリアが眠りについた真夜中のことだった。


 ーーここは門以外が白で統一された神殿のような空間である。


 空間には赤の門と青の門があり、中央には何かを飾っていたのだろう、白磁の器がある。

 この空間に、赤の門から機嫌の悪そうなジリーが入ってきた。


 「ちくしょう、どうなってるんだよ……」


 直後、丁度対極に設置されている青の門から別の人物が現れた。


 ーールークである。


 ルークもまた機嫌が悪そうである。ルークはジリーを見つけるや否やルークを睨んだ。


「彼女にちょっかいを出すのはやめてください」


 ジリーも負けじと睨み返す。


「それはこっちのセリフだ!」


 ジリーは吐き捨てるようにルークに言った。

 ただ、ルークとジリーは白磁の器を境に近寄ることはなく、お互い睨み合うのみ。

 しばらく静寂が続いた後、二人はそれぞれ入ってきた門へ引き返していく。


「余計なことはしないでください。」

「余計なことすんなよ」


 そんな捨てゼリフを互いに吐き、二人は空間を後にした。



◇◇◇◇◇◇



 早朝、長老や村人達の見送る中アリアとルーク、それにダイとネルの四人は村を出た。


 目的地は港町である。城下町にも近く、ある程度栄えているらしい。ダイとネルは港街ならば秘密の通路を知っているということで、途中まで道を案内してくれることになった。


「まぁ案内といっても、港町までは川沿いを下っていくだけなんだけどな」


 歩きながら、ダイは言った。


「ということは、川の下流域にある街がこれから行く港町なのですね。」


 ルークは地図を見て、街の位置を確認している。


「うん。始めは川沿いに森の中を歩くけど、しばらくしたらちゃんとした道に出られるから安心して!」


 少年達に続いてアリアとルークは森の中に入っていった。

確かに開拓されていないただの森を歩いたが、そこまで予想以上には険しくなかったためどんどん進むことができた。さらに、川沿いを歩いているのが分かる程度には、水の音がうっすらと聞こえている。方向も間違っていないようだ。


 ーーしばらく歩くと、少し舗装されているのだろう、柵の並ぶ道が現れた。


「あ、道が見えてきたよ!」


 ネルが教えてくれた。


「ここから先はこの道なりに進めば港町に着くことができると思う。どっかで荷車にでも乗せてってもらえたらいいね。」


 無事、港町に向かうであろう道にたどり着くことが出来た。あとはアリアとルークのみで歩いてそうだ。


ーーついに、ダイ、ネルの二人の少年との別れの時間がきてしまったらしい。それが分かると、つい悲しくなりアリアの目はウルウルとしてしまった。


「ダイ、ネル、本当にありがとう。」

「ううん。本当にお礼が言いたいのは僕達の方だよ。ね? ネル」

「僕達や街を救ってくれてありがとうございます。僕、お姉ちゃんがいなければ何も出来なかったよ……」


 ネルはアリア以上に悲しそうで、今にも泣き出しそうだ。

 そんなネルを見て、ダイは必死に泣くのを我慢している。


「僕達、もっと強くなるね!」


 アリアは二人を思いっきり抱きしめた。


「いいえ、あなた達は充分強いわ! だってまだ幼いのに村のこれからを考えたりしているし。私の小さい時なんか何にも考えてなかったわ。自信を持って!」


 抱きしめられ安心したのか、二人の少年は顔をうずめる。


「ありがとう。僕達、新しい商人に来てもらえるように頑張ろうと思うんだ」


 二人を抱きしめながらアリアはふと先ほどまでの道を思い出し良い方法を思いついた。


「そうだ……新しい道はもうできてるわ! 私をこんな大きな道に連れてきてくれたじゃない! この道を舗装すれば立派な道になって、商人を呼ぶことができるわ!」


 すると、ルークが思い出したかのように頷いた。


「確かに、そこまで荒れた所を通っていないので、やりようによっては舗装路が作れるかもしれません。それに、長老様も外部の方をお認めになられ始めているので、上手くいくかもしれませんね。」


 その発言にダイとネル、そしてアリアも目を輝かせる。


(ルーク、ナイスフォロー!)


 アリアはアイコンタクトでルークを褒めたのだった。

 二人の少年はみるみる元気になる。


「僕達、村に帰って皆んなに提案してみるよ!」

「きっと上手くいくと思うわ!」

「うん、ありがとう! 僕たち頑張るよ! ……じゃあ二人とも元気でね! ……お姉ちゃん馬鹿っぽいから悪い人に気を付けてねー!」


 そう言うとダイ、ネルの二人の少年は希望に満ちた表情で森の中に消えていった。


「馬鹿ってなによー!!」


 怒りながらも、アリアは少年達の姿が見えなくなるまで手を振っていた。


次回、可愛いだけじゃないもん! お楽しみに!

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