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新たな敵

 ーージリーは残念そうな顔をしてこちらを見ていた。


 応援が来たと表現する割には、嬉しそうではない。応援に何か不満があるのか、はたまたジリーの背後に大きな力でもあるのか。どちらにせよ、アリアの敵には変わりないのだが。


 大きな炎は限りなく黒に違い不気味な青色をしており、自由に形を変えることができるらしい。炎は勝手に祭壇を取り囲むと柱に燃え移り始めた。そして柱が分解され三つの燃える大きな柱へと変化する。


 ーー祭壇が狙われていることに絶望する長老や村人の悲鳴が聞こえる。


(なんてことを! このままでは被害が拡大するかもしれない。)


 この様子を見たアリアは変身する決意。村人を安心させるべく声を掛ける。


「皆さんを守ります!そして作品は私が取り返します!」


 しかし、絶望的な顔をした長老が、懐疑的な目でアリアを見た。魔法少女であることを知らないので無理もない。


「どうやって……よそ者には無理だ」


 しかし、アリアの強さを知る者……ダイとネルが長老に駆け寄る。


「お姉ちゃんは強いんだ。僕のこと助けてくれたもん!」


 アリアが変身して自分達を助けたことを思い出したようだ。必死に訴えてくれている。その姿を見て感銘を受けたアリアは、少年達に続くように長老の所へ行くと、しゃがみ込む長老に目線を合わせた。……そして少年達のためにもある提案をした。


「もし、これで私が何とか出来たら、よそ者を認めてくださいますか?」


 ーーアリアは長老の目を真っ直ぐに見た。その目は優しくも自信にあふれていた。


 その目を見た長老はアリアの吸い寄せられそうな真っ直ぐな目と勢いに押され、本気を感じ取ったらしい。しばらく黙っていたが、ついに気迫に押されたのか、「あ、あぁ」と同意をした。


 ーー許可を得たアリア。ニコリと微笑むとアリアは勢いよく立ち上がる。


「大丈夫なのか?そんなお主のような娘が……」


 ざわつく村人達。村人達にニッと笑いかけるとアリアはこう言った。


「大丈夫、だって私は可愛い魔法少女だもん!」


 ーーそういうと炎の方向へ走って行った。


「ジュエル・プリティ・チェーンジ!」


 音と光がアリアを覆い、宝石のついた大きなリボンのあるワンピースが現れ、髪はツインテールに変化した。さらに、かわいらしい魔法のステッキがアリアの手に現れる。


「キラキラ輝くあなたの笑顔、魔法と可愛さでお守りします! 笑顔の天使、プリティピンク!」


 ーー渾身のかわいいポーズを決めた。


 すると、離れた場所からジリーがアイドルライブに来たようなノリで叫んだ。


「キャー! アリアちゃん可愛いー! マジで超イタイけどー!」


 アリアはプンプンと怒る。


「イタイは余計よーーーー!」


 もはやアリアとジリーのこの掛け合いが習慣化しそうである。

 するとアリアの変身を見届けたかのように、ジリーではなく炎を纏った柱がアリアに攻撃し始めた。アリアは高くジャンプし、柱をかわす。その間にジリーは祭壇の近くで、宝石を大事そうに守り始めた。


(今回も宝石を壊せば炎や倉庫を覆う赤黒い闇も消えてくれるかもしれない。)


 アリアは炎の攻撃を交わしながら、祭壇に近づこうと試みた。しかし、それを制するように炎を纏った柱がアリアの前に現れる。宝石を崩すには、目先にある炎をなんとかする必要がありそうだ。


 しばらく炎を纏った柱の攻撃を交わしていると、埒が明かないと判断したのか、炎は祭壇本体にも燃え移り始めた。


「こっちまで来てんじゃねえよ!」


 これには祭壇で宝石を守っていたジリーも炎を避け、祭壇から飛び出す。

 ジリーが離れた途端、木彫り細工の工芸品や宝石もろとも炎が祭壇を飲み込み始めた。すると、炎に勢いが生まれたのか、3つあった炎は合体し始めた。


 ーーなんと、宝石を取り込もうとしているらしい。

 徐々に宝石の魔力が吸い込まれているのか、宝石は少しずつ小さくなり炎の色も紫に代わり始めた。


(ダメ!そんなことしたら、宝石が崩せなくなっちゃう!)


 宝石を崩さなければ、倉庫を包む闇も炎に包まれた祭壇も取り戻せなくなってしまう。このままではまずいと思い、アリアはジリーを見た。


 しかし、ジリーもこれは想定外だったようで、腕組みをして厳しい表情でこの光景を眺めている。どうやら応援で現れた炎が宝石を守ってくれるのは良いが、宝石が吸収されるのは問題らしい。


(仲間同士なのに、目的が違うのかしら。)


 アリアはちょっとした違和感を感じた。しかし、今はその違和感よりも目先の炎の対処が先である。どうすればすべて救うことができるのか、アリアは一生懸命考えた。


 ダイやネルが心配そうにこちらを見ている。

 しかし、その姿を見て、二人との出会いを思い出したアリア。そして、ハッと何かを思いついたのだった。


 ーーアリアはステッキを炎に向け叫んだ。


「ピンク ウォーター!」


 ステッキから水が噴き出す。アリアはそのまま炎に向けて大量の水を放出した。


「炎なら、消火してあげればいいじゃない!」


 アリアがそう言うと、祭壇に燃え移った炎を大量の水で消していった。

 ダイ、ネルを見て、二人の少年と出会った時に水の魔法を使ったことを思い出したようだ。

 そして、消火したのを見計らって、アリアは一気に祭壇に向かった。


(よかった、まだ宝石は残ってる!)


 祭壇に駆け寄ると、アリアは宝石目掛けて思いっきりステッキを振り上げた。

 ジリーが後ろから止めようと走るが間に合わない。

 アリアのステッキは宝石に命中。ものすごい音を立てて宝石は崩れ、消えていった。

 一足遅かったジリー。消える宝石を見届けると、残念そうにアリアに声を掛けた。


「せっかくアリアちゃんと遊ぼうと思ったのに。今回は応援が入って邪魔されちゃった。ざーんねん。」


 ジリーをキッと睨みつけるアリア。

 しかしその姿を見てなぜかジリーは満足げだ。それに残念と言う割には楽しそうである。


「またねアリアちゃん、今度こそ僕と遊んでねっ」


 嬉しそうにアリアにウインクすると、赤い光とともに颯爽と去っていった。


 ジリーが去ると、倉庫を覆っていた闇は徐々に消え、祭壇も元の形に戻った。燃えた柱など木彫り細工の作品たちも、燃える前の状態に。

 まるで魔法少女アニメの補正がかかっているのではないかと勘違いしそうだ。村中からは人々の安堵の声が聞こえた。


 急に力が抜けたアリア。フラっとよろけ、倒れそうになる。


 ーーしかし、倒れずにふわっと体が浮いた。


「アリア、大丈夫ですか?」


 ルークが倒れかけたアリアを抱き上げたのだ。


「ル、ルーク?!」


 お姫様抱っこをされている状態になり、驚いて硬直するアリア。

 そんなアリアを気にする様子もなくルークは謝り始めた。走って来たのかやや息が荒い。


「すみません、先ほどの炎でこちらに向かえず……ピンチの際にお助けできず、心苦しい限りです……」


 とても申し訳なさそうな表情をした。


「いやいや、ルークが無事で何よりです!」


 ルークの気遣いは有り難いが、危険な状況に巻き込まれていなくてアリアとしては安心した。しかし、美しい顔が近いため、ドキドキとしてしまいこれ以上言葉が出てこなかった。

 さすがにお姫様抱っこをされている状態が続くのは気まずくなり、すぐにおろしてもらったのだが。


 すると、村の長老がこちらに近づいてきた。アリアとルークは緊張した面持ちに変わる。アリアがこの村に来なければ、ジリーのような存在がそもそも村に近づくことはなかっただろう。やはり、よそ者はよそ者らしく早く村を出た方がいいかもしれない。罵声を浴びせられる覚悟をして長老を見た。……しかし、長老から発された言葉は違った。


「村を救ってくれてありがとう。よそ者と言って、村を追い出すようなことをしてすまなかった」


 長老はそう言うと、深々と頭を下げた。その顔は不甲斐ないといった表情をしている。

 アリアは思わず長老に頭を上げるよう促した。

 すると、長老は顔を上げるとまっすぐにアリアを見つめ言った。


「さっきのお主との約束だが……外の者を認めよう。」


 もう、長老は懐疑的な目では見ていない。アリアとルークは勝ち誇ったと言わんばかりの笑顔で顔を見合わせると、後ろでダイとネルが自分のことのように背後でピョンピョンと喜び跳ねていた。

 その夜は、盛大に夕食会が開かれ、アリアとルークはダイとネルの家に泊めてもらったのだった。

次回、二人の青年 お楽しみに!


(そろそろ少女漫画感出していこうかと思います)

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