プロローグ
初投稿です
「小暮警部補、お疲れ様です」
巡査はそう言って敬礼する。
ピシッとしたスーツに白いレースの入った黒い帽子のまるでドラマに出てくるような格好で入ってきたこの男、小暮次郎は捜査一課の警部補である。
そしてここはもちろん事件現場。
とある公園、遊具はない。
散歩道のような少しうねうねした道と木々が育っている穏やかな公園。
そして、そんな公園とは似つかない、殺人現場でもある。
「小暮警部補、あちらです」
案内された先にあったのは見るも無惨な姿になった遺体だった。
その光景は異質そのもの。
刃物で刺されたあとや、首を締められた形跡もなくただ、まるで内側から食い破られたような穴、それも複数、いや、無数に空いていた。
「死亡推定時刻は?」
「死亡推定時刻は今からおおよそ2時間から6時間前、だいたい深夜2時頃から早朝にかけてですね」
「なぜそんなに広いんだ」
「はぁ、それがですね...」
この遺体には、無数の穴の他にもうひとつ不可解な点、いや、常識の外れたことが起こっていた。
それは、この遺体から血液が一切採取されなかったのである。
さらに、周りに血が飛散していることもなく、この場から被害者の血液が一滴も採取出来なかった。
そのため、しっかりとした推定時刻を割出せなかったのである。
「血を見ないで済むのは好都合か、いや、そんなことはないか」
「なんにしても、この特徴的な殺し方は2年前のあの事件に酷似している。 その前は4年前、だいたい2年の周期でこの事件が起こっているにもかかわらず、犯人を捕まえるどころか、手がかりすらない」
2年前と4年前の事件
これらの事件はあの特徴的な殺害方法以外何も接点がない。
被害者にも共通点はなく、殺害場所、時間もバラバラ
そして、指紋も足跡も、もちろん血痕なども見つからず、2つとも迷宮入りしていた。
「今回の被害者は高校生か…
秋野奈緒、部活は無加入…くらいか、所持品で分かるのは
「今回も共通点なし、4年前は30代のサラリーマン、2年前は20代主婦、場所は…どう結んでも何も出てこないな…」
まただ、また迷宮入りだ。
凶器もない、共通点もない、血もない。
我々にはどうすることもできない。
「うわぁ、すごいな、これ」
突然声が響いた。
全員が声の方向へ目線を向けた。
そこには2人の男がいた。
「誰だ、君たちは」
咄嗟に小暮は右のポケットに手をかける。
彼のポケットには拳銃が入っていた。
「申し訳ない、怪しいものではない、警戒を解いてくれ」
そう言われ、ほかの刑事たちと顔を見合わせ、全員が警戒を解いた。
小暮は両手をポケットにいれ、右手でしっかりと拳銃を握った。
「いや。失礼、私は竜野という、以後よろしく」
竜野と名乗った男はよく見る初老の男性だった。
ただあまり見ないようなデザインの服を、少なくとも初老の男性が着るものでは無い服を一式で着ていた。
もう1人の方もだ、それはまるで、ヒーローのユニフォームのようなものだった。
竜野は話す隙を与えないかのように続けて話し始めた。
「捜査が難航しそうな君たちに、いい知らせと悪い知らせがある」
竜野は人差し指をたてて、自信満々に言った。
「悪い知らせから聞こう」
小暮が言う。
その場の全員が、なぜか急に現れた謎の男の話し出すことを固唾を飲んで見守っていた。
「悪い知らせは___君たちはこの事件を解決出来ない__ということだ」
場にいた警察官全員、目を見開き、どういうことだと竜野に食ってかかろうとした。
「いい知らせ、とやらを聞こう」
小暮のこの一言に場に緊張感がはしった。
「いい知らせは…この事件を我々が請け負ってやる」
竜野が言ったすぐだった。
キィィィィという音、いや言葉では表現できないような音が脳に響き、警察官たちに激しい頭痛が襲った。
「よし、任務完了だ、警察諸君引き上げたまえ、調査班頼んだよ」
竜野の言葉には落ち着きがあった。
すると、その場にいた警察官たちが一斉に立ち去る、その際には、「私は何をしていたんだ」などと口々にいっていた。
が、
「い、一体何をした…」
「まさか耐えたのか、あんた何者だ?」
そこにいたのはフラフラとおぼつかない足取りで竜野に近づいていく小暮だった。