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九話 素晴らしき頭脳的な修行

遅くなりお待たせしました。

令和一発目に間に合って良かったです。

今話も楽しんで読んでくれると嬉しいです。

さて、さっそく始めましょう。

まずは刀の基本の振り方をマスターしなければなりません。何でも刀には正しい振り方があり、そうでないと余分な力を抜いた状態で最高な切り方はできないのだとか。

本当に良くできた切り方は切った後も相手が気づかないのが最高らしい。

その練習方でまず、空中を舞う木の葉を真っ二つに切るというものがある。

これをマスターしよう。



私は一人、こっそりと部屋を出て来るときに見掛けた小さな森の中で修行することにした。

刀を両手で持ち、自身の目の前で真っ直ぐに構える。

それから息を吸い、吐きながら体から余分な力を抜き木の葉が近くに落ちて来た瞬間に切る!


が、初めてではうまく行かない。当然だ。


落ちた木の葉を見るが刃が当たった痕すらなかった。


タイミングが会わなかったようだ。

木の葉が落ちるのは遅いが風によってどこに落ちるかなんて変わるだろう。



先程と同じように力を抜き構え、その状態で葉をよく見る。

そういえば先程の振り方は力任せに早くしたのがいけなかったのかもしれない。

落ちてきた葉を緩やかにそれでいて早く、自然に降る。


次はどうだろうか。

確認すると僅かにだが木の葉の端が切れたあとがある。






あれから護身術特訓もとい武術の修行、『木の葉を切る』をはじめて一週間。

以前より進歩したがまだまだ目標に届かない。

というよりもあれから全然全くと言っていいほど進展しないのである。

仕方ない、私は新たなる進歩のために助言を求

めることにした。

と言うか隠れて修行していたのだがカルトにバレてしまったので開き直って何かいい方法がないのかアイディアを聞くことにしたのだ。



最初は私が武術を修めるのにいい顔をしなかったカルトも護衛のためだといったら認めてくれた。

まあ、珍しく私がしつこく力説したせいで諦めたのもあるかもしれないが認めてもらえたのは事実だ。


「落ちてくる木の葉を切りたい、ですか?」


「それが練習方法らしいから。何かいいアイディアない?」


そう聞くと、う~んしばらく悩んだようだか。

ヒントになりそうなことを教えてくれた。


「目で見えるものは葉だけです。ですが葉を動かす風は目には見えません。目だけでなく五感すべてを使ってみるのはどうでしょうか」


たしかに。それは考え付かなかった。


「ありがとう。すごくいい考えだと思う」


それから私はカルトにバレてしまったので堂々と修行に明け暮れることにした。


カルトは最近、私が生き生きしてるのを見て私の修行を手助けしてくれるようになった。

アイディアをくれたり、ダメ出しをしてくれるときもある。


全くもって出来た執事である。

毒されてきている?そんなわけないだろう。

そうだ。最近カルトは専属従者から専属の執事になった。

素晴らしいさすがは私の執事だ。


そういえば先程も言ったが他の人にも護衛のためといえば通じる。

それは何故か。この世界には魔術がある。

すれば当然のように魔物もいるのだ。

町には魔物が入れないような壁があるのだが、田舎になればなるほど手が足らなくなり魔物も侵入してくる。それに魔術を扱う犯罪者も少なくはないのだ。

前回も含めこの世界では死にやすい。

ならば危険はできる限り減らしておくべきだろう。

それに私は魔術を扱えないのだ。

体を鍛えるしかあるまい。

護衛を雇っても裏切られる可能性、一人の時が必ずある。

それに前回はこんなにひとつのものに打ち込んだことがなかったので楽しく感じてきているのだ。

この道を極めれば何にたどり着けるのか。それにとても興味があるのだ。なにもなし得なかった自分が何かで一番になれるかもしれない。そう考えると頑張ろうとも思えたのだ。


前回は貴族としての振る舞いなどの練習が忙しかったが今はすべてできるのでその時間をすべて鍛練、修行に当てることができる。


自分の自由にできる時間が存在する今世には感謝しかないだろう。



そして木の葉を切る修行をはじめて一ヶ月、家族との交流を一切せずに一ヶ月が経った頃。


私はとうとう宙を舞う木の葉を真っ二つに切ることに成功したのであった。

実はその三日ほど前からまれにできていたのだが百発百中ではなかったので出来たとはとてもではないが言えなかったのだ。

だが、今日は一度も失敗することなくきれいに真っ二つに切ることが出来たのだ。


お陰で力をいれずに斬るとしても令嬢にあるまじき手になってしまった。

だが、これは私の努力の結晶だ。

誇ることはあれど、恥じることなど存在しなかった。


カルトも成功した暁には共に喜んだものだ。

この成功は私一人ではできなかった。カルトがいたからこそ成功したようなものだ。


今世は私のためだけに生きようといまでも思っている。

だが、カルトがいなくなってしまえばきっと私が生きていけても私は後悔し、その後の人生を楽しく生きてはいけないだろう。


だから言い訳かもしれないが私の後悔しない人生のためにカルトと共に生きていけるようにさらに精進することにした。



ちなみにここまでの修行はとても辛かった。

何が大変だったか。それは同じ動作の繰返しなところだ。如何に修行といえど飽きる。

楽しくとも私は飽きてしまうのだ。

だが、休憩時間の度にカルトが作った菓子を食べると自然とやる気が沸いてきたのだ。

以前は貴族としての威厳のために体型などに気を使わなくてはいけなかったのだが、今では修行によって太ることもないので私は自分が勝手にやっている修行ではあるものの、カルトの作る菓子をご褒美として頑張ってきたのだった。

やはり、私はカルトがいないとダメだったのだろう。カルトには感謝しかない。

あと、これからももっと美味しいお菓子を作ってください。


楽しみにしてます。



「カルト、このお菓子本当に美味しいわ!」


「お嬢様が気に入って美味しそうにたくさん食べてくださるので私もやる気がわきます」


本当に今世は幸せである。



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