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少年たちのラグナロク  作者: 佐々木 律
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研究、ミョルニルと弓と

鈴獰は昨日の続きと称し、一階から順にルイを連れ歩き、施設内の案内をした。


基本的に一階は窓口のようなもので、何か特別な部屋があるわけではないらしい。


二階から五階は、病院と研究施設が整っていた。その階で働いている者たちは、殆ど全員が鈴獰のような膝下までの長い白衣を着ている。


六階は食堂になっていた。神も人間も関係なく、ユグドラシルに勤めている者であれば誰でも利用可能とのことだ。


先程までいた七階を抜けた八階から十階までは、訓練場という名が付けられており、一部が吹き抜けになっている大きな一つの部屋になっていた。

鈴獰曰く、ここを吹き抜けにするのは大分労力を使ったと文献に記されているらしい。


十階から十四階までは、鈴獰やライアスも含めた、神以外の者たちの生活区域となっている。


十五階と十六階は図書庫とされており、十七階は基本的に出入りができないようになっていると、要か不要か鈴獰に念押しされた。


十八階は倉庫の階らしく、それぞれの階層に割り当てられた部屋があった。特に研究施設が密集している五階の倉庫は、開けると碌なことが無いと、何故か鈴獰は眉間に皺を寄せる。


十九階は温泉だそうだ。時間外らしいが中を見せてもらうと、外に作られた露天風呂から、アースガルズ居住地区を見下ろせるようになっていた。混浴で無いことを、ライアスは未だに不服に感じているという。


そして二十階の庭園へと到着した。


「まぁざっと適当に歩いてきたけど、なんとなく地形は掴めたかい?」


「だいたいは、分かった。」


さすがだ。鈴獰は二度頷いた。感心する際の、彼の癖なのだろう。


「さて、上まで戻ってきて悪いが、今から四階の私の研究室に来てもらえるかな。」


「寝不足の理由?」


「ご名答。これが終わったら君も私も休めるからね、早く行こうか。」


急く鈴獰に付いて四階の研究施設に降り立つ。


ルイの中でのイメージとして、研究を行う場所というのだから、コンクリートの壁に少ない窓、そして最低限の明かりのみの廊下という印象が強くあった。


しかしそこは予想を完全に裏切り、明るく清潔感のある廊下に、植物さえ飾られていた。


そして、皆が皆鈴獰のように目の下を黒くしているわけでもない。


四階の大分奥の部屋に通されたルイは、リビングと同じように整理整頓がされた鈴獰の研究室を色々見渡してみた。


何かを起こさないように薬品棚や実験器具からある程度の距離を保ちつつ見ていると、いつの間に部屋の奥から戻ってきていたのか、鈴獰に正面からぶつかった。


「ごめん。」


「平気だよ。それより、こっちの広い方に来てもらえるかな。」



鈴獰が先程向かった部屋の奥とは反対側の奥に案内されると、そこは言わば応接室のようだった。


鈴獰らしい一人がけのソファに腰掛けると、彼もまたその向かいの同じものに座る。


そして間のテーブルに置かれたのは、昨日彼に預けた二点だった。


「神器製造を全て担っている、ドワーフという種族がいる。彼らの殆どが鍛冶屋を営んでいてね、住処であるニタヴェリールから出張で来ることもあるんだ。そこで、君の望みを叶えられるように、この鎚を作ったドワーフ達に頼んでみたんだ。ミョルニルの因子をこの弓矢に移植できないかどうかをね。」


「結果は?」


「もう気づいているだろう。」


確認は不要ということか。鈴獰の言うとおり、ルイは弓矢を目にした途端、変化には気がついていた。


憎くて仕方のない鎚と同じ気を感じたのだ。


「まったく、大変だったよドワーフ達を納得させるのに。彼らは自分の作った神器を使って欲しいんだから。」


「どうやって納得させたんだ?」


「それは企業秘密だな。」


あの。ルイは昨日から思っていた疑問をぶつけてみた。


「どうして、僕にここまでしてくれる?」


鈴獰はまた、困ったように笑った。


答えづらい質問ではないと思っていた分、ルイの方が眉間に皺を寄せる。


「僕は昨日初めて鈴獰に会った。それはおそらく鈴獰も同じ。ということは、僕は鈴獰に何もしてないんだ。何も返ってこないのに、何かをする人間はいないでしょ。」


鈴獰は困った顔のまま、声を上げて笑った。


「いやぁ、まさかここまでとは。有り得ないと思っていたのに、こうまで似るか。」


眉を下げてみたり腹を抱えてみたり、なんとも忙しい人だ。見覚えがあるとは思いつつも、鈴獰の行動は、ルイの顔をさらに怪訝なものにさせた。


「君が昨日〈いい〉と言ったから明確な答えをあげることは難しいんだが、そうだな…。私がしたくてやっていることだから、気にしないでもらえると助かる。今はこれで満足してはもらえないだろうか。」


自分の母親との関係を彼が話そうとした時、確かにそれを断ったのは自分だということを思い出し、ルイは溜息をつきながら三回頷いた。


「納得してくれたなら良かったよ。この神器はもう君のものだ。扱い方はどの代でも個性が出るが、まずは心を通わせてみなさい。そうしないと何の力も発揮しないからね。まぁそんな小難しいことを今から話すより、今の環境に慣れる方が大事だ。さぁ、私は今から仮眠を取るから、もう自由に過ごしてもらって構わないよ。今後用事があるときは、私から君を尋ねることにしよう。」


根は面倒くさがりなのだろう。そう感じたルイは目の前の二つの道具を手に取り、そそくさとその場を後にした。


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