405号室 続き2
俺は、白い扉が消えた場所に立ち今まで見えなかったところをまじまじと見て目に焼き付けた。顔は見えないが、ここの入院者である女の黒い髪が真っ白な病室に強い印象を与えた。
「入らないんですか。」
女の人は、こちらを見ず独り言のようにポツリと言った。声は聞こえていたが、自分の目はさっきからずっと窓から吹く風に揺れる黒い髪から離せなくて、足は勝手に前へと進んで行く......。もう、脳にあるものはすべて止まっている。
あれ、ここってこんなにも広かったけか......。
進んでも進んでも前進している感じがしない。まぁ、それは思考していない自分の脳の話であって実際にはもう目標地点にはついていた。
「あの~......」
少し幼く聞こえる声を源としてまた自分の脳が動き始めた。すると視野もぼやけていたのか目の前には小学生のような幼くかわいらしい顔と目が合った。黒髪に負けない澄んだ瞳。
「あなたって、あれですよね!学生が非行に走るとなる......あれですよ、あれ。」
「ヤンキー?」
彼女は嬉しそうにうなずいた。
「そうです!それそれ!ヤンキーさん。」
「違います......」
彼女は幼く見える顔立ちもあってとても分かりやすく悔しがっていた。俺は、一瞬にして感動に近いものがなくなった。