405号室
初めての投稿なので、前置き的なところまで書きました。ゆっくりですが話を進めていくつもりです
暑く熱い思い出の中で、俺の愛する人は姿を消した......
「残念ですが......」
それは去年の夏、7月7日に起きた出来事だった。もとから病弱だったアイツはとうとう息を引き取った。その死に顔はきれいで、ただ眠っているようにしか見えなくて何度も声をかけたのを覚えている。
あれから一年、アイツが長年お世話になった病院に俺は今でも通っている。アイツが消えた病室まで行きそこで昔の思い出にひたっている。そんな俺を見て周りの人間たちは、「かわいそうに」、「誰か止めてやれよ」と好き勝手に言っては、俺へと同情の目で見てきた。だが、こういう時は大丈夫などと抵抗はせず相手の望む態度をとるのが一番楽で、一番一人でいるための効率がいい。でも、自分からは弱音を吐くことはしない。それが、自分が保つためのルールだった。
小さいころからアイツの見舞いに行ってた俺は看護師の人たちに覚えられ、よく話しかけてくれる。だが、いつも適当に話を流しているせいか長年いる看護師以外の名前は全然憶えられていない。そんな優しい人たちも時には、俺の話をしては可哀想だと同情をする。優しい人ほど被害妄想がひどくめんどくさい。まぁ、それが今では平凡な毎日の一つになっている。そんな毎日が今崩れ落ちた......
「もう半日が終わっちゃたよ。」
「そうですねぇ。」
誰もいないはずのアイツがいた405号室から聞こえるはずのない声がした。今日の受付の人は病室に来る人の話なんてされなかった。