6話 王都進軍
今回呼びかけに応じてくれた兵士は100人、数からしたら少ないが歴戦の勇士たちだ。
「今から部隊を分ける。第1部隊は謁見の間の制圧、第2部隊は悪徳貴族の拘束、第3部隊は王城の門の閉鎖だ。謁見の間は俺が指揮を執る。貴族の拘束はエリスに任せる。門の閉鎖はセバスに任せる。あとは第1部隊に10人、第2部隊に30人、第3部隊に60人配置する。どの部隊も危険が伴う。油断しないこと。」
俺が話を終わらせると、誰がどこの部隊になるのか、口々に言っている。時間がないのに元気な奴らだ。
「エリス、部隊の指揮を頼む。王城の方がヤバそうだから先に行く。シャル、一緒に行くぞ。」
「わかりました。お義兄様、お義姉様、いってらっしゃいませ。」
俺はエリスに送り出されて、王城に向かう。
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再び視点は王城に戻る。
俺の指示で兵士は拘束にかかる。陛下たちは大人しく拘束されるが、宰相やその手下が抵抗する。クラスの連中は呆然としている。
「レン殿、私を舐めてもらっては困りますな。こんな奴らでは相手にならない。貴殿が来ないとな。」
宰相はそう言いながら、火魔法 第2階梯 ファイアボール 30個をこちらに向かって放ってくる。
(数が多いな。流石だな。いい機会だ、勇者の一端を見せておこう。今後必要となるからな。)
『我が元に集いて、我を守る壁となれ。水壁』
俺の周りに水の壁を出し、次の詠唱に入る。
『我は汝の使い手、我が呼び出すのは不滅の刃、我の呼びかけに応じて顕現せよ。聖剣召喚 デュランダル』
詠唱が終わると目の前に一本の剣が現れる。かつてこの世界を救い、自分を英雄に導いた聖剣だ。
「宰相殿、覚悟はよろしいですね。」
「そうでないと困る。これから起きる全ての為に…」
宰相が意味深なことを言っているが、この騒動を収める為に気にしていられない。
(他の人に被害が出ては困るから、結界を張るか…)
『我が求めるのは全ての攻撃を防ぐもの。我のもとめに応えて現せ。聖結界 』
俺と宰相だけが結界の中に取り込まれて行く。
これでお互いに全力を出せる状態になった。
宰相が結界に入ったことを確認した直後、全方位からファイヤーボールが飛んでくる。俺はそれを斬りふせる。それを何回も繰り返す。平行線が続く。
「流石ですね、レン殿。ただあと一歩届かないですよ。」
宰相は話しかけてくるが、こちらには答える元気がない。化け物か?こいつはと思うぐらい、同じことを繰り返している。
「そろそろ終わりにしましょうか。レン殿、安らかに眠ってください。」
そう言うと宰相は詠唱に入る。
【我が放つのは灼熱の力、一切の防御も許さず、全てを焼き尽くす炎。第7階梯 灼熱地獄 インフェルノ】
(これはヤバイ!古代魔法の最高クラス、全方位型だから逃げれない。)
デュランダルを構えて死を覚悟をした時、何者かが結界に入ったことを気付いた。そして自分の前に立った。
「レン様は絶対に守ってみせます。お姉様の代わりに。」
そう言って笑いかけてくるのは、アイリスだった。
そして辺りは炎に包まれた。周りを見渡すと、結界が壊れており、目の前には傷だらけのアイリスが横たわっていた。俺は慌ててアイリスに駆け寄る
「嘘だろ…しっかりしろ、目を覚ましてくれ。アイリス。」
呼びかけに応えて、眼は開いているが虚ろとなっている。
「よかったです。最後にレン様を守れて…これで私の罪が消えるとは思いません。けど好きな人の腕の中で死ねるのだから私は満足です。レン様、お姉様のことをお願いします…」
そう言い終わるとアイリスは眼を閉じていく。俺は必死に回復魔法を使う。しかしアイリスの命の灯火は小さくなっていく。そして静かに消えた。
「アイリス…君は満足だったのか…そうではないだろ。俺はこの結末を認めない!」
「では貴方はどうしますか?レン殿。」
宰相が聞いてくる。彼はアイリスが死んだことに驚いていたが、すぐさま普段通りに話しかけてくる。
「決まっている。英雄の力を使うまでだ。勇者の力ではなく。」
俺はそう答えると詠唱に入る。宰相はそれを見ている
【我は汝の契約を結び者、汝は時と空間を支配する者。今契約を遂行する時、姿を現せ 時空の番人 クロノス】
「時間通りだ。勇者、あとは任せろ。」
「アイリスを助けてくれ。英雄。」
そう言い交わすとあたりが光に包まれる。