7話 英雄参戦
光が収まるのを待って、周囲の確認をする。
周りの貴族には被害は無し、宰相が守ったか?
陛下たちやクラスの奴らも無事、アイリスだけが傷ついているか。少しヤバイな…。勇者の俺は死んだと勘違いしていたが、今は仮死状態だ。
「クロノス、アイリスの時間を巻き戻せ。」
「了解です。マスター」
クロノスはアイリスに近づいて、魔法を発動させる。
アイリスが光に包まれて、傷がなくなっていく。
完全に治ったことを確認をして、次の指示を出す。
「シャル、アイリスを守ってくれ。念の為に結界も張っておく。」
「わかりました。レン様。御武運を」
「待たせたな。ラーク侯爵閣下、勇者では相手にならなかったみたいだが英雄ではどうかな?」
「これこれはレン公爵閣下にシャルル王女殿下、お揃いで如何なさいましたか?」
「ここにいる理由なんて分かりきったことを聞くなよ。王国の守護者、断罪者と呼ばれているのに見過ごす訳にはいかない。ここまでお膳立てしてもらう必要も無かったのにな…」
「レン様、どういうことですか?」
「シャル、周りにいる貴族たちを見れば分かるよ。」
そう言われてシャルは辺りを見回す。今、謁見の間に集められているのは表向きは不正や脱税等をしていないとされている者たちだが、裏では何をしているかどうかわからない奴らだ。
「今回の召喚は俺を呼び戻す為で、あとの奴らは巻き込まれただけだろ。しかも召喚理由が曖昧な為、簡単には送還できない。だからこそ、利用価値がある。そうですよね?宰相閣下。」
「さすがですね。しかし本当の理由はわかっていないですね。そこが「王国の闇だろ。」何故それを!」
「知っているさ。公爵に叙爵された時に調べた。このことを知っているのは、宰相閣下と俺だけだ。王室は知らないはずだ。それを対処するのが理由だろ。」
「完敗だな。さすがは勇者だ。あとのことは任せる。陛下やシャルル王女殿下、アイリス王女殿下、申し訳ありません。今回の件はこのようなことがあったからです。責任は私の首でお許しください。」
そう言って宰相は自害しようとする。俺はそれを止める。
「勝手なことをされたら困る。今回の処罰は俺の預かりになる。処罰は追って沙汰を下す。それでよろしいですね、陛下。」
「ああ。君に任せよう。レン公爵。」