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47.忍び寄る王国の危機

 ザース王子が転落死した翌々日、クレイアは再びラングレ王に呼び出された。

 王の顔を見たクレイアは驚いた。王は急に歳をとってしまったように見えた。充血した目は落ち込み、心なしか、額や目じりのしわが深くなっている。

 ──あらあら。ずいぶんとやつれておられること。お気の毒に。でも、わたくしは同情なんかしませんわよ。どうせ陛下にも死んでもらわないといけませんもの。すぐにザース様の元へお送りしますわ。


「クレイア殿、よくぞ参られた。このような形で我が第二王子を失うとは、思いもせぬことであった。我が国とザンガクムの婚礼による同盟関係を見直さねばならぬ。我が国は婿として出せる王子はいなくなってしまった。よって、王太子とそなたの婚礼も白紙に戻すべきである」

「陛下……悲しいことをおっしゃらないでくださいませ。わたくしは、たくさんの国民に祝ってもらってここへ来たというのに、婚約破棄なんて、考えられません」

「しかし、ザースのことで当分の間、婚礼の儀はできぬし、キャムネイ殿も、我が王太子とそなたとの婚約はなかったことにするとおっしゃると思う」 

「父は、そのようなことは言わないと思いますわ。父は、わたくしが婚礼の衣装を身に着ける日を心待ちにしておりました。フェール様のお怪我で、式が延期になって、がっかりさせただけでも悲しいことですのに、結婚そのものまで帳消しになってしまったら、どれほど気落ちすることか……わたくしの婚礼式は延期でかまいません」

 ラングレ王はうつむいて考え込んだ。

「キャムネイ殿が残念がるか……自国の利益と娘の婚礼式を見たい気持ちがせめぎ合っておられるかもしれぬな。キャムネイ殿はすでに国を出られて、ここへ向かっておられるはずである。到着なさったら、そなたの意思を通せるよう話してみるが、キャムネイ殿が婚約破棄とおっしゃるなら、そなたは共に帰国するがよかろう」

 クレイアは青い目に涙を浮かべて懇願した。

「帰国は考えておりません。陛下はわたくしのお父様になられるお方。ずっとお仕えいたします。わたくしに何でも相談してくださいませ。わたくしは陛下の家族になりたいのです」

「家族……」

 ラングレは一瞬だけ、遠くを見ているような目をした。

 クレイアはそれを見逃さなかった。

 ――やっぱり王はさみしがっているのですわ。王妃様と仲が悪いから。

 この国の王と王妃が不仲なことは、クレイアでも知っていた。王妃は城内でも特に奥まった場所に建っている別棟に住み、王の部屋の隣にある王妃の部屋に姿を見せることはないことも調査済み。この王室の家族の心はバラバラだ。王は孤独。親身になって話せる相手などいないと踏んでいた。

 クレイアはさらに押した。

「陛下、お願いします。どうか、わたくしを娘として扱ってください」

 ──思った通りになってくれないと困りますわ。王がわたくしの言うとおりに動いてくれないと、殺す計画が予定通りに進まなくなりますもの。

 王は人形のように頷いた。

 クレイアはにやりと笑いたくなるのを堪えた。


 ◇


 クレイアの結婚式へ出席するキャムネイ王の行列は、すでに国境を通過してセヴォローン内に入っていた。行列は武装した軍隊を伴っていたが、これは王の娘のための婚礼の行列であり、帰りにはザース王子を連れて帰る、という口実もあったことから、この大軍を怪しむ者は誰もいなかった。

 行列がエンテグア城へ着く前に、ザース王子の訃報がもたらされたが、一行は予定を変更せず、葬儀に出席するという名目で、軍をそのまま進めた。


 大セヴォローンが三つの国に分かれて百年あまり。自由な結婚を推奨するシャムア教が原因で、国はセヴォローンとシャムアに分かれ、その数年後には、財産分与でもめたことから、セヴォローンからザンガクムが分離独立して現在に至る。

 農業を推進する東のザンガクム、商業と軍事を重んじる中央のセヴォローン、宗教に傾いた西のシャムア。三つの国はそれぞれの道を歩んできたが、セヴォローンとザンガクムの間には大きな川もなく、出入国は自由にできた。

 ザンガクムとセヴォローンを結ぶ本街道の国境には、セヴォローン側に、国境を監視する兵の駐留所があるものの、特別に怪しい者以外は呼び止められることもなかった。


 王都エンテグアの人々が、ザース王子の訃報に衝撃を受けていたちょうどそのころ、この国境の駐留所は予想していなかった悲劇に見舞われた。突然侵攻してきたザンガクム軍にいきなり襲われて全滅したのである。


 命からがら逃げ延びた駐留所の兵から報告を受けたシド・ヘロンガルは、悪態をついた。

「ザンガクムは同盟国の仮面をかぶっていたわけか。フェールの予想が当たってしまったな。我々が川中の砦のことで西のシャムアに気を取られているうちに侵攻してきたに決まっている」

 シドは、フェールと別れてからは、国境の駐留所から北へ進んだ山中に潜み、ザンガクムの監視を密かに続けていた。フェールが重体で帰国したことは、ここを訪ねてきたゾンデから聞いてすでに知っていたが、フェールとの連絡はまだついておらず、この時点ではザースが亡くなったことも把握していなかった。

 ここはセヴォローンの東の果て。山を下ればすぐそこはザンガクム領。はるか西にある川中の砦のことも、王都が今、どういう状況になっているのかは全くわからない。


 報告の兵の話では、駐留所を襲ったザンガクムの兵団は、エンテグアへまっすぐ延びる本街道には進まず、シドたちがいるこの山道へ向かってゆっくり進んできているという。

 シドは不快感をあらわにし、剣を取って立ちあがった。

「腐ったやり口だ。目立たないように兵の一部を山周りでエンテグアに向かわせ、キャムネイ王の本隊と合流するつもりか。これではエンテグアが危ない」

 西のシャムアも、この機を逃さず、別の場所から進行してくる可能性がある。今ここを通ろうとしているザンガクムの兵団と、キャムネイ王が連れて行った軍が結集し、さらに西からシャムアが王城を襲う、という恐ろしい構図が見えてきた。

 エンテグア城の守備隊も、エンテグアの港の兵も、今は川中の砦の方とキャムネイ王の歓迎警備の両方に人を取られていて通常より少ない状態にある。

「これでは城は容易に陥落するぞ。くそっ」


 シドは小隊長たちを招集し、てきぱきと指示を出した。

 皆が戦いの準備でバタバタと動き出す中、ゾンデが心配そうにシドに声をかけた。

「シド様……戦うのですか?」

「当然だ。敵の侵攻をこのまま見過ごすわけにはいかない。そのためにこんな場所で野営していたのだ」

「しかし、いくらなんでもこの人数では。ここには五十人しかほどしかいないのに、敵兵は三百から五百もいるようです」

「負け戦とわかっていても、できる限りのことをやってみるさ。少しでも敵の人数を削いでやる」

「自分もできる限り闘います」

「いや、ゾンデには俺の警護よりも頼みたいことがある」

「はい」

「おまえは至急でエンテグアへ戻り、陛下にこのことを報告してくれ。どうせ、この事態を誰も把握していないだろうから。運よく陛下に会えたら、ここへの援軍を要請しろ。陛下もフェールもすでに殺されたかもしれないけど」

「自分が陛下にお会いできない、あるいは、城までたどりつけない可能性もあります。その場合はいかがいたしましょうか」

「エンテグアまで行けても王城へ入れぬ場合、城を外から見張り、クレイア王女が逃げ出したらすぐに殺せ。キャムネイ王の軍事行為が始まったら、王女は必ず城から脱出するはずだ」

「クレイア王女を殺してもよろしいのですね?」

「許可する。王女がフェールとの政略結婚を簡単に受け入れたのは、自国の軍隊を堂々と我が国に招き入れるためだったに違いない。もちろん、王女殺しは可能ならば、でいい。おまえの身が危険ならば無理をするな。それからもうひとつ」

 シドは言葉の勢いを沈め、声を小さくした。

「父上の動きに注意しろ。兵の応援要請の件を父上に言うな。この場所も伝えないでくれ。俺は『家業』を継ぐつもりはない。あと、マニストゥ先生を信用するなよ。おまえの話から、父上が先生を使って怪しいことを企んでいるらしいことはなんとなくわかったから」

「……承知いたしました」

 ゾンデは強く頷いたが、すぐには動き出さなかった。

「どうした、わかったなら早く行け。時間がない。大きな街道は避けろよ。伝令だと思われると殺される」

「それは心得ております。シド様、どうかご無事で。必ず生きてお会いしましょう」

「俺は死なない。フェールに文句を言うまではな。おまえも死ぬな。最悪の場合、俺は父上と殺し合いになるかもしれない。どう考えても、この件には父上が絡んでいる気がして仕方がないのだ」

「シド様……」

 シドは、心配そうな顔になっているゾンデの、猫背の肩をポンと軽くたたいた。

「おまえが父につくか、俺につくかは自由だ。好きにすればいい。俺としてはおまえに味方してほしいけど」

「自分はシド様の従者です。旦那様ともめるならば、仲裁に入ります」

「それは無理だと思う。父上は自分の思い通りにするためならば、どんなことでもやる。俺とは根本的に考え方が違う。わかり合えることはない。まあ、それはそれで仕方ない。とりあえず、俺はフェールを殺したくはないのさ。あいつがまだ生きている可能性にかけて、王都を守るために精一杯の戦いをやってみるだけだ。さ、早く行け。すぐにザンガクム軍がここへやって来る。おまえは戦わなくていいから、うまく隠れてかわしてくれ」

「はっ、では、行ってまいります」

 ゾンデは頭を下げ、肉親を見るようなやさしい微笑を見せるとすぐに林の中に消えて行った。


 シドは部隊を率いて山中を大急ぎで移動し、狭い谷道を戦場に選び、谷の上からザンガクムの兵たちが通過するのを待ち構えた。

「我々は人が少ない。弓矢の数も限られている。短時間でどれだけ多くの敵を倒せるかが勝敗を決める。敵が崖を登ってくる前に優勢に持ち込むのだ」

 こういう場合に備えて、作戦は以前から練ってある。弓、油、火、投石器など、各自、担当と決められた道具を握りしめ、身を伏せ、衣擦れの音さえ殺す。冬を迎える冷たい風の音が山中を駆け抜けていく。


 やがて、シドは、ザンガクム軍が遠目に見え始めたのを確認した。

 馬車一台分の幅しかない道を進むザンガクム軍はの兵たちは、ほとんどが徒歩でゆっくりとした速度で進んでいた。行列の中央には、馬にひかれている小型の荷車は、兵の食糧や武器などを積んでいると思われた。

「皆、準備はいいか? 明日も笑って生きるために戦え。死ぬために戦うのではない。最悪の場合、王国としてのセヴォローンは消滅してしまうかもしれないけれど、国がなくなっても人は生きていける。皆、どんなことがあっても生き残れ。大勢の敵が崖を上がってきてどうしようもなくなったら、命令がなくても各自の判断で山中へ散開、逃走しろ。その後、北の滝の横にある洞窟に再集結。行くぞ」

 シドはそうささやき、掲げていた右手を勢いよく振り下ろした。

 合図と同時に、谷を通過するザンガクムの兵たちの頭上に着火油を入れた紙包みがいくつも放り投げられ、すかさず炎の弓の雨が降りそそいだ。奇襲を受けたザンガクム兵たちはたちまち炎に包まれて悲鳴をあげ、その上に投石器から飛んだ石が、彼らを容赦なく襲った。


 ◇


 そのころ、エンテグアの王城では、ザンガクム軍の別働隊が東の山間部でシドの小隊と戦いになっていることはまだ知らず、ザース王子の葬儀の準備が進められていた。

 怪我で動けなかったフェールは、帰国後十日ほど経過した現在、ようやく命の危機は脱し、少しずつ起き上がれるようになっていた。下腹部の傷はまだ熱を持ち、時に激しく痛むがそれでも日に日に癒えて、腹をかばいながらもゆっくりと歩けるほど回復してきていた。


「王太子殿下のご準備は整いましたでしょうか? すでに皆様お揃いになっておられます。少々お急ぎくださいとのことです」

「はい、もうすぐお支度は整います」

 侍女長のマリラが返事と同時に、フェールの周りにいる侍女たちをせかす。

 複数の侍女たちが、フェールの髪を何度も濡らしては拭き取り、濃く染めた髪色をどうにかしようと頑張っていた。

「もうよいぞ。このまま行く」

「ですが、殿下、髪のお色がまだらになってしまいました。どのような染料を使ったのかがわかれば、もう少しきれいにできたのですが」

「かまわぬ」

 フェールはゆっくりと立ち上がり、差し出された黒い礼装用の帽子をかぶり、礼服に袖を通した。今から弟の葬儀が始まる。体はまだ熱っぽいが、さすがに寝ているわけにはいかない。


 フェールは何日ぶりかで自室を出て、弟の遺体の元へたどり着いた。安置所には、王と王妃の他には、エフネート・ヘロンガルをはじめとする多くの親戚がそろっていた。

 椅子に腰かけている王の隣には、クレイア王女が、まるで実の娘のように王の手を握って付き添って立っている。

 クレイアはフェールに向かって愛想よく会釈したが、フェールは声掛けせず、ちらっと見ただけで通り過ぎた。


 先日、母のマナリエナが泣きながら告げたことは、フェールの胸に深く刻まれている。ザースの死を告げた母。

 あの時、フェールはしばらくの間言葉が出なかった。マナリエナは口を押えて泣いていた。母としての愛をほとんど示さなかったこの女性の反応に、フェールは怒りすら覚え、皮肉めいた言葉を投げつけてしまった。

『母上がそのようにお嘆きになるとは驚きです。母上はザースをザンガクムへ出したがっていたと伺いましたが』

『わたくしは、ザースは、城内で役職をもたせて自由を奪うより、外へ出して密偵をやらせるほうが向いていると思っていました。本人もザンガクムへ行くことには乗り気だったことですし……ですが、このようなことになって……』

『確かにザースは密偵をやらせてもうまくできたかもしれないが……』

 フェールは現実として受け止められず、悲しみは湧いてこなかった。ザースの死因がどうにも気にかかる。

『母上は、クレイア王女がザースを殺した、とは思わないのですか?』

『もちろん、その可能性はあります。ですが、証拠もなく証人もいません。どうしてクレイア王女がザースの部屋にいたのかもまだ明かされていません。ザースの方から呼び出された、と王女は言っていますが』

『ザースが呼び出した? 本当だろうか。理由はどうあれ、これで、私とクレイア王女との結婚はなくなったわけだ』

『いいえ、クレイア王女は結婚するつもりのようです。わたくしは賛成できませんが。陛下はお心が弱っておられて、誰かそばにいる者が欲しいのでしょう。王女をずっとそばに置いておられます。残念ながら、わたくしでは陛下をお慰めすることはできないので、どうしようもありません』

 マナリエナは涙をぬぐった。

『フェール、クレイア王女が罪を犯したかどうかは、わたくしが必ず内密に調べ上げてみせます。怪しいとはいえ、いやしくも隣国の王女。安易に疑いを向けてはザンガクムを刺激してしまいますから』

 フェールは思わずきつい声になっていた。

『王女だからと言って、ザースが殺されたのにその現場にいた者を放置して、父上のそばに置いておくのですか』

『残念ですが、そこにいた、というだけで隣国の王女を殺人者扱いして捕まえることなどできません。エフネートが言うには、ザースの方が毒蜘蛛を用意していたのではないかと……ですから陛下も王女を厳しく問い詰めることはできずにいるのです』

『……それは……ザースの方がクレイア王女を殺そうとしていた、ということですか?』

『エフネートからの調査報告では、ザースは毒蜘蛛の扱いを誤り、うっかり自分をかませてしまって、王女暗殺を仕損じたのではないかと……それで毒が回って転落してしまった……』

『ザースがそんなへまをするわけがない』

『わたくしもそう思います。ですが、警務総官であるエフネートにはっきりと言われてしまうと、王女を罪びと扱いにできるわけがありません』

 フェールは言葉に詰まった。

『……では、どうしたら』

『そなたがクレイア王女と親密になって王女の本心をさぐるしかありません。そのうちにしっぽを出す可能性はあります。でも気を付けるのですよ、次に狙われるのはそなたかもしれません。そなたにはしばらくの間、わたくしの護衛兵ピツハナンデをつけます』

 ピツハナンデはここ数年王妃の専属護衛として仕えている大男で、王妃が公の場に出るときには、必ずこの男が護衛に付いていた。


 今年二十四歳になったピツハナンデは、平民出身ではあるが、王室主催の格闘大会で複数回の優勝経験があり、彼は城内最強の戦士として名が通っていた。フェールよりもシドよりもさらに大きな体で、見上げるばかりの背丈。しかも強面で怪力。たくましい兵士が多くいる城内でも、特別に目立つ赤銅色の髪をしたこの男の顔と名を知らぬものはほとんどいない。


『よろしいのですか? ピツハナンデをお借りしたら母上の安全が疎かになる』

『かまいません。今は、わたくしよりもそなたの方が狙われる確率は高いでしょう。それに、そなたは、まだすみやかに移動できないのですから、急いで移動するときは、ピツハナンデに運んでもらえばいいのです』

『わかりました。彼をお借りします』

『それから……もうひとつ、注意すべきことがあります。人ばらいを望まれても、絶対にクレイア王女と二人きりになってはいけませんよ。特に、王女の侍女、黒髪短髪の女性、サラヤには気を付けなさい。あの子どものような顔をした侍女は様子がおかしいと、ザースから警告があったばかりでした。あの侍女をここへ近づけてはなりません』


 ザースの棺へ向かうフェールは、クレイアの前を過ぎた時、件の侍女の姿を認めた。クレイアの後ろの方に、黒髪短髪の小柄な女性が控えている。この侍女は、クレイアが見舞いに来た時にもいたと思うが、しっかりと顔を見たことはなかった。

 サラヤはまだ子供かと思うほど背が低く、顔にしわひとつない若い女だった。実年齢はわからないが、見た目だけなら十三歳前後に見える。

 ──あれが問題の侍女、サラヤか。あの者がザース暗殺に絡んでいるとしたら。

 フェールは乱れる思いを隠して人々の中をゆっくり進み、弟の遺体と対面した。

 木の棺の中で花に埋もれて眠るザースは白い顔で眠っていた。頭全体と顔の一部には白い布が巻かれて怪我が隠されている。

「ザース……」

 遺体に声をかけてもどこからも返答はない。聡明な弟はすでに物になってしまっていた。悲劇がようやく現実として認識できたフェールは、こみ上げる感情を抑え込んだ。


 悲しみに淀む室内に、伝令が入って来た。

「ザンガクム国よりお越しの、キャムネイ三世陛下の御一行が間もなくご到着でございます」

 腰かけていた国王ラングレは立ち上がった。

「城門を開き、皆、広間に整列せよ。失礼のないようにお向かえするのだ」




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