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32.死闘

 フェールが馬車から降ろされた場所は、大きな川のほとりだった。付近は薄い霧が立ち込めて視界が悪く、川面はかろうじて確認できるものの、対岸はまったく見えない。冬がそこまで来ている季節にしては、空気が生暖かい。

 霧の中、目を凝らせば、河川敷には、いくつも張られたテントや、急ごしらえと思われる丸太小屋が見えた。訓練に励む兵たちの姿もある。河川敷の端は、大雨で増水した川水に洗われていたが、テントは撤去される様子はない。あそこまでは水が来ないと判断されているのかもしれない。


 フェールは心の中で手をたたいた。

 ――いい具合だ。ここはヌジャナフ近郊の河川敷に違いない。

 どうやら、当初の予定通りの場所にたどりつけたようだ。シャムアが砦攻撃のために国軍を待機させている場所。この場所から真東に、川を進んだところにある中州に、セヴォローンが建築した見張り砦がある。


 フェールは、十人以上が寝起きを共にしていると思われる狭いテントへ案内され、余分な私物はそこに置いておくように命じられた。荷物袋を覗かれたが、取り上げられたのは剣だけで、小さな箱に入った毒針と着火油の瓶は、とがめられることはなかった。

 テントの前の広場の隅では、大きな鍋が石造りの炉に吊るされ、数人が煮炊きに従事している。広場中央には大勢の兵士がいて、それぞれ二人一組になり、長棒で打ち合いの訓練をしていた。


 フェールが所属する隊の、直属の上官だと紹介された丸刈りの男は、それほど年季が入っていない感じがする。二十代後半から三十に入ったぐらいか。

「セヴォローン人の新入り、故国の愛国心を捨てて我が国のためにしっかり働け。さっそくいい仕事がある。あそこにいる男は料理当番でもないのに、料理に手を出そうとした愚か者だ。あの男と戦って殺してみろ。あいつはおまえと同じセヴォローン出身者でここへ来てから日が浅い」

 フェールが指された方向に目をやると、ひとりの男が後ろ手に縛られて泥だらけの地面に転がされていた。

 男の顔は向こうを向いており、フェールからは見えず、年齢などは全くわからなかった。

 いきなりの殺人の命令にうんざりするが、ここで怪しまれたら終わり。アンジェリンと再び会うため、どんなことでもやり抜く。

 ──人殺しはもう慣れただろう? 私はためらいなくこの男を殺せる。

 フェールは、そう自分に言い聞かせ、ころがされている男の横に立ち、上官に確認した。

「この男を殺せばいいのか?」

「そうだ。縛ったまま殺すだけでは面白くない。しっかりと戦って殺せ。おまえの戦い方を見せてもらう。だが、こいつはなかなか腕が立つ。殺されるのはおまえの方かもしれない。どちらかが死ぬまで戦え」


 上官は、ころがっている男のいましめをほどいた。縛られていた男は、小さなうめき声をあげつつもゆっくりと身を起こし、立ち上がった。

 フェールは男の顔を見て、叫びそうになる衝動をこらえた。

 白髪が混じったバサバサの髪、あまり大きくない体つきで猫背。伸びた前髪の下からわずかに覗くぎらつく両眼。

 ――ゾンデ!

 冷静を装うのが精いっぱいだった。

 それはまぎれもなく、シドがいつも連れていた猫背の従者、ゾンデだった。


 フェールは驚きで乱れかけた呼吸を必死で隠した。

 ――シドのやつめ。ゾンデがいないと思ったら、私の身を案じて彼を先に入隊させていたのか。いや、それともマニストゥの命令でこの男はここにいるのか。

 マニストゥは、シドとゾンデに剣術を教えていたことは間違いない。だが、ゾンデがマニストゥと同類の裏切り者かどうかはわからない。

 縄を解かれたゾンデは、フェールと目が合っても顔色ひとつ変えなかった。


「全員休憩。今からセヴォローン人同士が戦う。皆で見学だ」

 付近で打ち合い訓練をしていた兵たちは、動きを止め、フェールとゾンデを取り囲むように大きな円になって座り込んだ。


 フェールとゾンデには訓練用の先が丸く作ってある長棒が手渡された。

「始め!」

 ゾンデは棒を正面に構えて無言でフェールを見据えている。

 フェールは目を細めた。

 ――この男、敵か味方か? 

 ゾンデがここにいるのは、いったい誰の命令なのだろう。

 

 フェールはゆっくりと回り込んだが、ゾンデもその動きに合わせて足を少しずつ動かしていく。

 ――誘ってみるか。

 フェールは両手で持った棒を頭上に高く掲げた。両脇が大きく空くが、それでもゾンデは踏み込んでこない。

 ゾンデの暗い色の瞳は、フェールの動きにぴたりと付いていく。ゾンデにはまったく隙がない。


 なかなか戦いにならないこう着状態に、周りが口々にはやし立てる。

「さっさと戦えー!」

 フェールは頭上にあげていた棒を下げ、正面で構え直した。シドとなら何度も手合せしているが、ゾンデはいつも黙って付き従っているだけの男で、本気になったゾンデがどの程度の腕なのかは知らない。


 フェールは自分の内にある怒りを高めた。

 ――ゾンデは、憎むべきマニストゥの弟子。最初からあの男の仲間だったに違いない。ゾンデは悪人だ。殺すしかない。


 フェールは、足運びを計算し、ゾンデとの距離を数歩だけ詰めた。ゾンデのように自分よりも背が低い相手の場合は、相手の身の方が軽く、こちらが足をすくわれやすい。

 フェールは集中力を高め、正面から飛びかかるように棒を思い切り振りおろした。ゾンデは軽く受け流した。

 カン、カン、と数回長棒がぶつかり、体の前で棒が合わさった状態で押し合いになった。ゾンデは小柄でも結構力があるらしく、フェールの力に押され負けすることもなく、一歩も後退しない。

 フェールは、全力でゾンデを押し倒してやろうとしたが、相手は思った以上に頑丈で、地面から生えた岩のように重かった。


 共に腕の筋肉が盛り上がり、にらみ合った顔が近づく。

 と、ゾンデが。

「殿下、お待ちしておりました」

 フェール以外、誰にも聞こえない声だった。

 気を散らされたフェールは、棒を押し戻され、突き放されて数歩よろめいたが、すぐに体制を立て直し、ゾンデの足を狙って棒を振ったが、彼はそれを見越して軽く飛び、フェールの攻撃は当たらなかった。

「棒が邪魔だ。私は素手で戦う」

 フェールは棒を後ろへ投げ捨てた。セヴォローンではこんな長い棒での訓練は受けていない。

 こんな棒を持っていては戦いにくいではないか。

 ゾンデが無言でフェールをまねて棒を投げ捨てると、周囲に歓声が広がった。

 

 フェールは勢いをつけてゾンデにつかみかかり、ゾンデが身をかわそうとする方向を予測して蹴りを入れた。フェールの蹴りはゾンデの腰に軽く当たったが、彼を倒すほど強く入らなかった。

 ゾンデは不敵にニヤリと笑った──と思った瞬間、フェールは横腹にゾンデの拳を受け、よろめいた瞬間に冷たい地面に組み伏せられていた。ゾンデがフェールの顔をねらって拳を振り上げる。

「くっ!」

 フェールはその手首をつかんで止め、全力で体の位置をひっくり返した。

 腕をつかみ合ったまま、ごろごろと転がる。

 周りがはやし立てる中、ゾンデがまた何か言った。

 聞こえない。耳にまで神経を集中できない。この男、すごい腕力だ。イガナンツ村で戦った海賊の男よりもずっと強い。

 息が上がり、顔から汗が流れ落ちる。

 ゾンデは転がりながらも自分の手をねじって、つかまっているフェールの手を振りほどき、再び拳を振りかざす。フェールの左頬にゾンデの拳が入ったが、フェールも足でゾンデのスネを蹴り、ひるんだゾンデの顎に拳を打ち込んだ。

 フェールは急いで起き上がり、再び構えて隙をうかがった。

 共に唇から血が滴る姿に、周囲の興奮した歓声はさらに大きくなる。


 今度はゾンデの方から飛びかかってきた。フェールはゾンデを抱きこんで投げに持ち込もうとしたが、背中を何発も拳で殴られ、せっかく捕まえたゾンデを突き放すしかなくなった。咳込むフェールに、ゾンデは容赦なく拳を頬にめり込ませてきた。後ろへ殴り倒されたフェールは、必死でころがって次の攻撃から逃れ、身を立て直した。鼻血が首までしたたり、両頬は激しく痛む。首も違えてしまったようで、左首筋が痛い。

 フェールは忙しく打つ心臓を抱えつつ、冷静さを装った。殴られた衝撃で視界がかすんでいる。顔面の激しい痛みと軽い眩暈で、足元がふらつき必死で足に力を入れた。

 ゾンデは強すぎる。これでは勝てる気がしない。こめかみから首筋へ汗が伝い落ちてきた。

 ――アン、私は絶対に負けない。おまえを必ず迎えに行く。


 ゾンデがニヤリと笑い、挑発してくる。明らかに彼の方が優勢だった。ここで負けました、とフェールが両手を挙げても勝負は終わらせてもらえそうにない。相手が死ぬまで戦いは続くのだ。


 フェールは呼吸を整えると、勢いをつけてゾンデに殴りかかった。動きを予測していたゾンデはフェールの拳をさっと避け、回し蹴りをしようと──

 フェールは上げられたゾンデの片足を両腕で抱きかかえるようにつかみ、彼の勢いを使って思いきり投げ飛ばした。

 鈍い音と共にゾンデの体がぬかるんだ地面に転がる。フェールは全力で走り、転がったゾンデが起き上がらないうちに、あおむけになったその体に覆いかぶさって動きを押さえ、首を両手で締め上げた。

 フェールに完全に抑え込まれたゾンデは、顔を真っ赤にしながら首にかかったフェールの手を外そうとフェールの手の甲をひっかき、それでも手がはずれないと、フェールの手首を折れんばかりに強くつかんできた。

「負けるものか!」

 フェールは手首の痛みに耐え、ある限りの力をすべてかけてゾンデの首を絞め続けた。ゾンデの力がふっと抜けた。


 その時、上官の声が上がった。

「そこまで! 殺すな。勝負はついた。今日来たやつの勝ちだ。どちらも見事だった」

 周囲から拍手が沸き起こった。

 ――殺さなくてもよかったのか……。

 フェールはほっとしながらゾンデの首から手を外すと、力が一気に抜け、その場に倒れ込んでしばらく動けなかった。

 フェールが倒れたまま首を横に向けてゾンデに声をかけると、首を押さえられていたゾンデはヒュウと息を吸い込んだ後、ゴホゴホと激しく咳き込んだ。手足を力なく動かし、胸が大きく上下している。


 フェールはゾンデに手を貸してやろうと、ゆっくりと起き上がった。緊張が一気に解け、手足がガクガクするが、どうにかゾンデのそばにしゃがみ、その背中に手を回して抱き起した。

 フェールに抱えられたゾンデは、ぐったりとフェールの肩に身を預けている。

「大丈夫か?」

「殿下……いつでもご命令を。準備はできております」


 ゾンデはわざと起き上がれないふりをして、フェールと至近距離で話す機会を待っていたらしい。

 フェールは、これはマニストゥがしかけた罠かもしれない、という疑いを持ちつつも安堵が入った声を隠せなかった。

「おまえを殺していたらシドに後でなんと言われたことか」

「殿下はお強い。自分も本気で戦わないと危ないところでした。お怪我をさせてしまい、申し訳ありません」

 上官が近づいてきて、二人は口を閉じた。

「二人とも立派だった。これは他国人であるおまえたちが命令にどこまで従えるかを試す試験だった。今日は傷を癒すことを最優先し、訓練は休んでよし。救護班、二人を連れて行って手当てをしてやれ。他の者は訓練の続きを始めよ」


 フェールとゾンデはよろめきながら他の兵に支えられ、小屋の一つに収容された。小屋の中には、扉ほどの大きさの板がいくつも並べられ、その上に毛布がおかれただけの簡易寝台が十ほど並んでいた。幸い、寝ている病人はいない。薬のつんとした臭いが室内に充満している。頬を腫らした二人は冷たい布で顔を冷やされ、並んだ簡易寝台に横になった。

 救護班の兵が仕事を終えて小屋から出ていき、二人きりになると、ゾンデは小さな声で説明してくれた。

「味方があと二人、この軍の中に潜入しております」

「シドの配下か」

 ゾンデは頷いた。


 フェールは、ゾンデとこの基地の破壊と脱出を急いで話し合った。二人きりで話せるのは今しかない。他の兵が様子を見に小屋に入ってくると、ゾンデはすぐに黙って寝入ってしまった。

 フェールはゾンデの寝顔を遠目に眺めた。そういえば、この猫背男は縛られて罰を受けていたのだった。食事に毒を入れることができるかどうか、探ろうとしたところを咎められたらしい。縛られて手足の血行が悪くなっていたはずだが、とてつもなく強かった。ただならぬ体力と腕力。シドの従者は飾りではなく、最強の護衛兵だったというわけだ。


 ──それにしてもシドのやつは。

 ゾンデ他二名を先行させ、フェールのためだけに準備された作戦に、苦い思いがこみ上げる。ここでも予定外。自分の甘さを痛感する。やはり、自分は王城とその付近しか知らないなまぬるい案を練っているだけのなさけない男にすぎないのだ。誰かの手を借りないと何もできない。

 ──シドは私を案じてくれたのだろうが……しかし。

 仲間が思いかげず先に入隊してくれていて、しかも同じ場所に配属された幸運を手放しで喜ぶことはできない。マニストゥの薄笑いが頭をよぎる。ゾンデを信じるのは危険かもしれない。

 それでも、ゾンデが敵かもしれないという考えは、今は横に置いて、ゾンデの協力の元、ここを破壊する作戦を実行に移し、帰国の道筋を考えることに決めた。ここでゾンデを信じず、完全に無視することもできるが、一般の兵隊たちだけでなく、ゾンデの目まで盗んで一人で行動を起こすことは困難を極める。

 ──私は、今は、この男を信じるしかないわけだ。

  問題は、アンジェリンがいるイガナンツ村が中途半端な位置にあり、そして彼女が傷を負っていること。

 自分はゾンデたちと共に先に帰国し、アンジェリンを後で誰かに迎えに行かせる、という考えが一番現実的な気がした。しかし、それでは、彼女を迎えに行くまでに時間がかかる。それまで彼女は無事で待っていてくれるだろうか。

 フェールは目を閉じてアンジェリンの笑顔を思い浮かべた。

 ――できれば共に帰国したい。


   ◇


 アンジェリンは、イガナンツ村のささやき亭でフェールのことを待ち続けていた。フェールからの便りは未だ届かない。

「今日で十日目。やっと……」

 彼が支払った宿代は十日分。きっと今日にでも彼は戻って来てくれる。

 アンジェリンの傷の状態はよくはなく、完治と言うには程遠かったが、それでも日に日に治ってきていると自覚できるようになってきていた。体調がよく動ける日は、馬の手入れだけでなく、できるだけ宿の手伝いをして、食費や宿代を免除してもらいながら過ごしてきた。何かしていないとさみしさで涙がこぼれてしまう。働いている方が気が紛れて心が楽だった。


 ささやき亭の亭主、アンジェリン、グフィワエネの少年マロロス、この三人はいずれも負傷しており、それぞれいたわり支え合って暮らすことで、家族のようになりつつあった。マロロスは、上腕を負傷している亭主のために水運びや酒瓶の移動などの力仕事を、アンジェリンは侍女であった経験を生かして客室の掃除などを手伝った。


 アンジェリンは、馬の手入れをマロロスに教えてもらいながら、グフィワエたちの生活のことを聞いて、夜に自室に入ると、そのことをノートに細かく書きとめた。海賊の暮らし、本拠地のことなど、内部にいた者しか知らない貴重な情報は、きっといつかフェールの役に立つことだろう。酒場で仕入れたうわさ話も真偽に関係なくひとつ残らず書きつける。

 うわさ話の中には、フェールがザンガクムの王女と婚約したという情報もあった。

 それでもアンジェリンは、フェールが勝手にひとりで帰国して王女と婚約した、とは思わなかった。

 ――あの人は予定通りシャムア軍に潜入したはず。必ず戻って来てくれるわ。 

 彼が値切って買ってくれたガラス玉の首飾りに触れ、それでも心が落ち着かないときは、荷物袋の底に入れてある祝福の札を取り出し、ぎゅっと握りしめる。

 ――どうか、御無事で。


 さみしさの中で、ふと思い出す父ロイエンニ。あのやさしい養父はどうしているだろう。レクト宛てに出した手紙が届いているなら、レクトが『アンジェ』から連絡があったと、密かに伝えてくれたかもしれない。

 自分で勝手に国を出てしまったが、心配をかけ続けていることはつらい。

 セヴォローンの人々に想いを巡らせても、今はただここでフェールを待つことしかできない。

 

 結局、フェール失踪から十日目を迎えたその日も、フェールは戻らなかった。


  ◇ 


 アンジェリンが出した手紙は、無事にレクトの元に届いていた。

 手紙は、住み込みの兵士たちの専用の届け物箱に、無造作に放り込まれていた。

 レクトは、普通に手に取ったが、送り主の名を見るなり、すぐにポケットの中にしまい込んだ。幸い、周囲には誰もおらず、レクトが『アンジェ』からの手紙を受け取ったことを知っている者は、手紙を仕分けした者ぐらいだろう。


 レクトは、夜、寝台の中で一人きりになると、日中隠し持っていた手紙を開封した。

「アンジェ……」

 手紙は思った通り、アンジェリン・ヴェーノからで、王太子と一緒にいることが書かれていた。アンジェリンからの手紙に包まれるようにして、フェールからの分厚い手紙が入れられていた。そちらの差出人はフェールで、宛名はレクトになっている。

「俺は、こんな手紙なんか読まないからな! 好きな女の子が、王太子殿下と仲良く旅している話を知らされただけでもおもしろくないのに」

 恋敵からの押しつけがましい手紙など見たくもない。

「どうせ、殿下は、アンジェは俺の物になったって、言いたいだけだろう? 勝手に彼女を連れ去っておいて、こんな長そうな手紙を送りつけられたって困る」

 レクトは、手紙を暖炉の火にくべた。


 フェールの手紙──レクト宛てになっている封筒──の内容は、レクトが想像したものと全く異なり、さらに内封されている手紙を、国王ラングレに内密に届けるように命じたものだった。

 レクトが、フェールの手紙を開封すれば、その中に入っている国王宛ての手紙を発見でき、フェールの報告は王に届いたはずだった。


 その後『アンジェ』からの手紙は、数日おいて二通が届いたが、レクトは読まずに燃やした。

「嫌がらせは一通で充分だろうに。殿下もひどいお方だ」


 手紙には、大切な情報がたくさん入っていたが、何一つセヴォローン王には伝えられなかった。

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